(三)-3

文字数 284文字

「クソっ!」
 滝沢はしぶきを上げて湖面に入った。そして水の中で私の方を見て「温子、結婚してくれ」と震える声で言った。
「もっと大きな声で言って」
「温子! 結婚してくれ!」
 滝沢は声を振り絞っているようだった。言い終えると寒さで歯がガチガチ鳴っているのが聞こえた。
「一度頭まで水に浸からなきゃダメよ。一回潜って、それから言って」
 私はバッグに手を入れた。そしてこっそり中に入れてきた金槌の柄を握った。
 その間に滝沢は水に潜った。次の瞬間、私は金槌をバッグから取り出し、振りかぶった。滝沢が水面に顔を出した瞬間に振り下ろすのだ。寒いので、男性はすぐに顔を出すはずだ。

(続く)
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