世の時間が早まっている

文字数 719文字


夜7時近くにスーパーへ行く。
もう何年もそうしてきたのだけれど、ここのところこれでは用事が足りないことが増えてきた。

昨晩は、豚ひき肉が欲しかった。冷蔵庫の中をザーッと見まわし、マーボー系の夕食にしたいと思った。
でもスーパーの棚には豚ひき肉がなかった。空っぽのスペースの横には合びき肉が並んでいる。
エッと思ってよく確認すると、そこにあったのであろう豚ひき肉について、「広告の品 100g99円」と書かれた商品POPが。
つまりは売り切れているのである。
このあいだは、いつもの食パンが、お米が、ブロッコリーが、豆乳が買えなかった。
意識して店内を見回せば、空っぽになった棚があちこちにあり、品切れも頻発している。まだ夜7時近くだというのに。

まだ夜7時近く。そういう時間だけれど、そういえば、住宅地はずいぶんとひっそりしている。家の中にいたら自分が発した独り言の大きさに身体がビクッと反応するくらいだ。そんなに小さくはない通りに、車の走る音もしない。
みんな帰宅して、静かな時間を過ごしているのだろうか。

まだ朝の7時なのに。そう思うことも増えた。在宅勤務を始めるとつぶやいている人が、もう仕事しているからとオフィスからメールしてくる人がいる。
通勤時間をスキップして仕事に入れる人の中には、業務時間を前倒している人が多いのかもしれない。
朝活するくらいだもの、朝はやめに仕事を始めるのは快適なのだろう。効率よく仕事が進み、早めに切り上げられるのかもしれない。労働時間に縛りがあるところは早く始めたぶん早く終わるだろうし。
ああ、だから夜7時近くには売り切れるのか。

私の時間はかわらないから気づくのに遅れてしまったけれど、どうやら世の時間が早まっているようだ。
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