第一幕(3)

文字数 774文字

翌朝。僕は、アーゲイヴェン十五世に謁見するため、王宮の控えの間で待たされていた。

とにかく寒くて、じっとしていられずに歩きまわっていた僕は、ラジオでエストラヴェンの名前が何度もくりかえされるのに気がついて、足を止めた。

(ラジオの声)本布告によって、セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェンは、エストレ領主の称号およびカーハイド国議院の議席を剥奪され、カーハイドの全領地からの立ち退きを命ぜられるものとする。

三日のうちに立ち去らぬ場合、もしくは今後立ち戻った場合には、詮議無用にて即刻、死罪。

(ラジオの声)カーハイド臣民はなんびとたりともハース・レム・イル・エストラヴェンに接触してはならない。かの者をかくまった者、また、かの者に金銭・物品を貸与した者は、財産没収の上、禁固刑に処す。

(ラジオの声)カーハイドの全臣民に布告する、ハース・レム・イル・エストラヴェンは追放、その罪名は、叛逆罪である。
叛逆罪?!

(ラジオの声)かの者は議会および宮廷において煽動した、「カーハイド君主はその統治権を放棄し、さる惑星同盟における劣位の属国となるべし」と。しかしながら、この惑星同盟なるものは実在せず――

実在する!
(ラジオの声)同盟の使節と名のる者はスパイであり――
僕はスパイじゃない!
(ラジオの声)わが国を撹乱し、国力を衰退させんがための――
ちがう! 何度言ったらわかるんだ、あなたがたは。惑星同盟エキュメンは実在します、加盟するかしないかは、あなたがたの自由意思にゆだねられているのです。太古の昔、母なる星ハインから巣立った人類は、地球をはじめとするさまざまな惑星に植民していった。あなたがたゲセン人も僕らと同じ、ハインの子なのです!
体じゅうの血が逆流するような思いのなかで、僕は正面の扉が開き、自分の名前が呼ばれるのを聞いた。
(廷臣の声)ゲンリー・アイ!
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登場人物紹介

ゲンリー・アイ

地球出身。惑星同盟《エキュメン》の特使。惑星《冬》ことゲセンに単身降り立ち、カーハイド帝国の皇帝に開国をうながす。長身。性格は誠実で直情的。推定される容貌はアフリカ系。男性。

セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェン


ゲセン出身。帝国カーハイドにおける《王の耳》(宰相に相当する最高実力者)。ゲンリーの使命の重要性をただ一人理解する。やや小柄(ゲセン人の平均的体躯)。性格は慎重かつ大胆。推定される容貌はアジアあるいはエスキモー系。中性(両性具有)。

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