第3話 キース・バークマン ②

文字数 1,314文字

「ムカつくぜ・・・。」
俺はハイウェイを時速200キロで激走していた。1週間前のレースに負けて以来、すっかり自暴自棄になってしまい、枯れ草の様に廃れていたのだ。今まで7年間無敵だったこの俺様がお嬢様みたいな顔の若造に負けてしまうなんて・・・。俺は溜息を漏らしながら、途方もなく長い距離をひたすら風任せに走るのだったー。
気が付くと、すっかり街並みは違っていた。優しいメルヘン調の街からスタイリッシュなモダンな街へ変貌していた。しかし、俺の中の腹の虫は大分和らいでいったのだった。
すると、後ろから重苦しく異様な寒気を感じ、振り向いた。30メートル後方から鎌を持った黒いトレンチコートを着たVXがこちらに向かってきた。ガスマスクのような面をつけており、クビにはボロボロのスカーフを巻いている。

ーチェイサーだ・・・。ー

市街地では、ファルコン専用レーンと一般道に分かれている。ファルコン専用レーンはあくまでレースや仕事の為にあるものであり、プライベートの時では一般道に出ないといけない。その為、事故を未然に防ぐ為に、非番の時は常に時速200以下に制限されているのだ。こうして事故を未然に防ぐ為にファルコン専用レーンでは、パトロール用VX《チェイサー》が監視しているのだ。
メーターを確認すると、10キロオーバーしていた。
奴は鎌を振りかざすと、鎌が喋り出した。
「対象者発見。」
鎌の眼の様な部分が赤くチカチカ点滅していた。
チェイサーはカチカチ音を立てながら右を向き、軽く頷いた。
「了解。」
しかし、何処かがおかしいー。確かに速度オーバーはしているものの、その程度なら鎌を構える様な事はなかった。『厳重注意 』 と、スピーカーが流れて来る筈なのだ。

「コレヨリ、刑ヲ執行スルー」

俺は電磁場の強い場所を探し走った。無闇に《スキル》を使いたくはない。奴ら自動人形(オートマドール)は、電流と磁石に弱い。俺はひたすら電磁場の強い所を探した。俺の(スキル)は電気を集め放出する事である。
「ビートに乗るぜ!!!」
俺はありったけの電流をかき集め、そして花火の如く放出した。VX《チェイサー》は、一瞬たじろぎカチカチ硬直した。しかし、戦闘能力の高い奴らにとってこれはは蚊に刺される程度だろう。
俺は徐々にスピードを上げて走った。
しばらく走ると道が切れているのが見えたが。俺はそのまま加速し、10メートル向こう岸までクルリとダイブした。
奴との距離は稼げた。
「フー、撒いたか・・・」
俺は安堵すると共にアクセルを緩めた。例えジェネシスでも、一対一で奴ら《VX》と戦うのは自殺行為であった。屈強なジェネシス4、5人程度で倒せるかどうかのレベルである。
「刑ヲ執行スルー」
振り返ると、遥か上空から奴がダイブしてきた。いつの間に居たのだろうかー?まるで忍の様だ。奴はそのまま鎌を振りかざすと、俺目掛けて襲いかかる。
「うわぁぁぁぁぁぁー」
俺は咄嗟にアクセル全回にし、遥か向こう岸までダイブしたのだった。

それから先の記憶はないー。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

キース・バークマン


主人公。アイルランド系のアメリカ人であり、角刈りで長身瘦躯の男。ワイルドな性格をしており酒癖と女癖が悪い。しかし、幼少の頃からジェネシスとしての過酷な訓練を受けており、武器の扱いに長け身体能力がが同胞の中でも遥かに高い。また、最高時速600キロを誇る、世界一危険で過酷なレース『ギャラクシー・レース』のトッププレイヤーでもある。大鳥に対してはレースにおいて自身のファンを取られた事を好ましく思ってない反面、戦いの時はしばしば暴走する彼に突っ込みや助言をするなどしている。昔、自身の親友や恋人が無残な死に方をした経験から、組織に猜疑心を持っており復讐の機会を狙っている。




大鳥 カケル


もう一人の主人公。長身で中世的な顔立ちをしている美青年のジェネシス。子供の頃、エンジニアである大鳥レイジの影響からメカや自動人形《オートマドール》に精通しており、各個体の性質や能力に詳しく戦い方も心得ている。時折、無鉄砲で命知らずな行動に出ることもあるが、それは被害を最小限に抑えるという自身の配慮でもある。普段は他人に柔和で時折笑顔を振りまいているが、それは本来の性格ではない。本来は冷静沈着であり、女嫌いな一面を持つ。人間《ノーマル》である母親とジェネシスである父親のハーフというイレギュラーな存在である。ハーフで実の両親の記憶も無く、子供の頃は時折疎外感を感じていた。組織に仲間や養父を虐殺された経験から、彼もまた復讐の機会を狙っている。

日比谷 ミライ


本作の最重要人物。オッドアイで左利き。右目が淡い緑色をしているが、普段はカラーコンタクトをしている。左頬に星形の痣がある。物静かで穏やかな性格をしており、丁寧口調で話す。とある重大な事件による過度なストレスにより、記憶の殆どを失っているジェネシス。実は大鳥からマークされている最重要人物であり、戦闘能力も桁違いである。

細身だが、身体能力は並みの人間を凌駕しており古めのvxなら一人で楽々倒すスキルを有している。本来の性格は冷徹で同胞や人の命に関心がなく、場合によっては平気で切り捨てるらしい。

大鳥 レイジ


カケルの養父であるジェネシス。身長193センチの長身で右ほほに大きな十字型の傷がある。非常に優秀なエンジニアであり、カケルにロボット工学のノウハウを授けた。かつては組織におけるナンバー2のポジションであった。自動人形《オートマドール》の開発や管理をしていたが仲間の陰謀により失脚し、自身の制作したvxに殺害されてしまった。

青木博士


穏やかで中年太りの大男である発明家。カケルの義手のメンテナンスをしている。マッドサイエンティストであり、研究に爆発や異臭を伴いしばしばご近所トラブルを起こしている。また、カケルが心を許す数少ない友人である。かつては組織に属していたが離反し、現在命を狙われている立場にある。組織内の情報や自動人形《オートマドール》に詳しく、また秘密の経路でしばしばカケルに情報を流している協力者でもある。

リゲル・ロード


大鳥レイジとウリ二つの顔をした、謎の美青年。身体全体を液体の様に自由自在に変形する能力を有している。常に無表情で冷淡な性格をしている。何らかの理由で日比谷の命を狙っている。かつてはジェネシスであったが、とある事件で化け物《ビースト》化してしまった-。

   何故かカケルに執着している。

シリウス・ベクター


組織の幹部。長身の優男。幼少期のカケルとは顔見知りであり、彼の両親を知る唯一の人物。大鳥レイジの死の真相も熟知している。また、リゲルに日比谷を捕らえる様に指示した。何かを企んでおり、日比谷の記憶が戻るのを心待ちにしている。

戦闘能力は未知数。謎のスキルがあるらしく、彼に攻撃しようにも弾きかえされてしまい、倍以上のダメージを喰らってしまう。

カケルや彼の両親についての秘密をにぎっている。

    彼の正体は並行世界の住人で、元は孤独で不器用な好青年だった。しかし、そちら側の日々谷をマシンに殺されてから、歪んだ性格になってしまった。やがて世界を憎み破滅へ導くようになる。

ヒューゴ.ブル


イギリス風の男。女好きで軽快な性格をしている。自身でラッパーを名乗っており、レース時は大音量で鳴らして走っている。大鳥が台頭する迄は、常に3位をキープしていた。ロック派のキースとはウマが合わなく、しばしば喧嘩をしている。

また、ことごとくトラブルに見舞われる体質の持ち主である。真っ先に日比谷やシリウス、リゲル等に遭遇したり、最新のVXに追われれる等している。

トリスタン. ボロン


フランス風の男。クールで毒舌家。タレ目で癖毛が特徴的である。落ち着いた静かな曲を好み、キースやヒューゴを煙たがっている。眠たそうな顔をしており、暇さえあればいつも昼寝をしている。レースでは大鳥が台頭するまでは、キースに次いで常に二位をキープしていた。

    かつては組織に属していたエンジニアであり、情報通でもある。

   組織やマシンに対し、激しい憎悪があり、時にはもて遊ぶ残酷な一面も持ち合わせている。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み