第44話

文字数 1,098文字

 給食の時間は、机を島型に並べ替える。四人か五人になるように組むのだが、龍太のところは五人組。四十一人の学級だから、一つの島だけが五人になる。ここに龍太、泰史、井崎さん、小島さん、土井さん。女子の方が多いクラスなので、そうなってしまう。小島さんと土井さんは、鈴原さんの取り巻きではなく、どちらかというと大人しいグループ。少女漫画の話をしていることが多い。つまりこの島は一体感に欠けていた。

 だから龍太が泰史と話をするのは、自然な流れだ。井崎さんはどちらにも積極的に入ろうとはせずに、静かに食べている。そして窓際にある賑やかな島の話題に聞き耳を立てている。もう、やることなすこと気に入らないが、龍太は何とか皆が楽しく昼を過ごせないかと考えた。でも、相手が望んでいないことを実行するのは難しい。むしろ井崎さんが鈴原さんや昭に新しいネタを提供しないよう、泰史を制御する方が大事なように思う。すると結局、泰史がしゃべりたいことをしゃべらせつつ、余計な方向に話が進まないように気をつかうのが龍太の給食時間だった。

 給食後、泰史と洋一郎を追って教室を出ようとしたその時、孝弘と昭に呼び止められた。この二人、いつもなら更に早く校庭に出ようとするはず。何か危険なものを感じたが、逃げる訳にもいかない。そして後ろには吾郎もいた。

「なあ、龍太は結局、泰史の子分になってるってことか?」
 偉そうに孝弘が尋ねてくる。子分のように動いとったのは、お前やろが? と言いたくなったが、ぐっとこらえる。
「そんなんじゃないよ。ただ、仲間外れやいじめはもう、嫌なんだ」
 ちょっとビビりながら答え、吾郎に視線を向ける。吾郎、助けてくれ。
「じゃあ、龍太? 俺らから無視されてもいいのか?」
 孝弘がこうもはっきり言ってくるとは、驚いた。これは脅しだ。
「そんなの、嫌だけど、だからって……」
 うつむき加減で、もう一度吾郎を見る。何か言ってくれ、吾郎。
 吾郎は視線に気づいたようで、窓の外に目をやっていた。
「泰史が孝弘や昭に何したかは知らないけど、俺には関係ないことだから」
「龍太、お前、もしかして泰史に脅されてるのか?」
 自分が脅しておいてよくそんなことが言えるな、と孝弘のことが信じられなくなっていく。
 それに泰史はその場の勢いで喋ることがほとんどだから、誰かを策略的に脅したりはきっとできない。
「何それ? 泰史に何か狙いがあるとか、そういうのを孝弘たちが知っているのか?」

「そんなの知らないけど、あいつ最近ちょっと変なんだよ」
 昭がしゃべり始めた。その原因を作ったのは、きっとお前ら二人なんだろ? と思ったが、話を続けて聞くことにした。
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