観察日誌:2044年7月4日

文字数 420文字

 宇宙が出来、地球が出来、人類が生まれ、人類史が再現されたのだが、予想以上に歴史にズレが生じている。
 この世界が誕生したことでさえ偶然なのだが、歴史がこの通りに進んできたのも、数ある偶然が重なった結果であって、同じ歴史になるのは滅多に無いという事だろうか。

 だが、なんとしてもデータ上の歴史を現実と同じものにしなくてはならない。

 いや、少なくとも、10年前までを同じ歴史に出来ればいい。

 本来なら認めたくは無いのだが、また内有に頼んで歴史を修正して貰わなければならない。
 ここ数日、スタッフ全員が疲労しているというのに、更に負担をかけてしまうのは本当に申し訳ない。
 侘びにもならないだろうが、せめて内有の好物でも差し入れることにしよう。



 はて、あいつの好物はなんだったかな。
 長いこと研究を手伝ってもらっていたはずだが、うまく思い出せない。私も疲労が溜まっているのだろうか。
 まあ、伊豊にでも聞けばいいだろう。
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登場人物紹介

戸隠顕子(とがくれ けいこ):実験室の室長。十年かけてこのプロジェクトの発足を成功させた。

内有布袋(ないある ほてい):戸隠顕子の後輩。有機スーパーコンピューターGBP(Glitter Black Polyhedron)を所持する企業からの外部協力者。

伊豊貞衣(いほう てい):内有布袋の彼女。研究室のメンバー。

野倉舞(のぐら まい):研究室のメンバー。内有と伊豊と同郷。

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