お金がない
文字数 1,575文字
旅を続けるにはお金がいります。
でもリュミエールとアミルには、わずかなお金しか残っていませんでした。
昨日の癒し草の依頼の報酬は、宿代とパンを買ったらなくなってしまったのです。
「そんなのあったら、とっくに他の冒険者がしてるよ。もう9時だよ!」
ギルドは朝6時から営業している。
いい依頼を掴まえたい冒険者達は、朝早く依頼をチェックしているはずで(または夜遅く)そのどちらもしていないリュミエールに文句を言われたくはないだろう。
「えええええええーーーー!!ずるくない?」
ギルドの横にあるコルクボードに無造作に止められた依頼を穴があくくらい見てみるが、とめられた依頼が変わる訳もなく……!
ハーチェの森に毒消し草を採りに行った孫が帰ってこないから探してほしい。
孫の名前:レオン
年齢:6歳
手にトゥールガで編まれた手提げカゴを持っている。
報酬:100ギル
いま残っている依頼は、これだけな訳でーーーー!
100ギルでは宿代もでない。
2人で160ギルかかる。
そういうと、クマのぬいぐるみ……ではなくギルドの職員は1枚の写真を置いた。
朝出て行った時の服装は写真と同じらしく、その意味では探しやすい。
ハーチェの森は薬になる材料が多く採れる豊かな森でアミルもよくお世話になっている。なかでも毒消し草の品質は高い。
ニヤニヤとしながら自分をみる視線に気づき、少しだけ不機嫌になったリュミエールがアミルに詰め寄る。
真っ赤になって反論しようとするが、『な』しか言えてない。
リュミエールの細い蒼い髪を少し乱暴にナデナデする。
髪を手グシで調えながら抗議する。
頭を両手で隠し、涙目で座りこむ。
「ヒドイよ!」と言おうとして、言葉のとまったアミルを見て……
数十匹のキラービーが、リュミエールとアミルを取り囲んでいた!
短剣に焔を宿らせると、右足を軸に円を描くように焔を雨のように撒き散らす。
その焔は、リュミエール達をドクバリで刺そうと狙っていたキラービーの群れを焼き尽くした。
「……お姉ちゃ…………!」
座り込んだまま、焦点のあっていないリュミエールを引きずりながら森を後にする。
「……送るわ」