お金がない

文字数 1,575文字

旅を続けるにはお金がいります。

でもリュミエールとアミルには、わずかなお金しか残っていませんでした。

昨日の癒し草の依頼の報酬は、宿代とパンを買ったらなくなってしまったのです。
「こうパパっと稼げる依頼は、ないものかしらね~?」
「楽して稼げるみたいな?」
「そう、それよ!それっ」
「そんなのあったら、とっくに他の冒険者がしてるよ。もう9時だよ!」
ギルドは朝6時から営業している。

いい依頼を掴まえたい冒険者達は、朝早く依頼をチェックしているはずで(または夜遅く)そのどちらもしていないリュミエールに文句を言われたくはないだろう。

「えええええええーーーー!!ずるくない?」
「ずるくない!早いもの勝ちだよ。大画面のサービスショットで言ったからって、覆らないよ」
「むーーーー」
ギルドの横にあるコルクボードに無造作に止められた依頼を穴があくくらい見てみるが、とめられた依頼が変わる訳もなく……!





ハーチェの森に毒消し草を採りに行った孫が帰ってこないから探してほしい。


孫の名前:レオン

年齢:6歳

手にトゥールガで編まれた手提げカゴを持っている。

報酬:100ギル





いま残っている依頼は、これだけな訳でーーーー!


「……報酬と釣り合わない気がする」

100ギルでは宿代もでない。

2人で160ギルかかる。

「そうだけど……子供が1人で森にっていうのは心配だよ」
「そうね、この報酬じゃ誰も受けないだろうしね」
「こちらのご依頼ですね。助かります」

(報酬がアレだから仕方ないけど誰も受けてくれなくて……最悪行かないといけなかったんだよな)

そういうと、クマのぬいぐるみ……ではなくギルドの職員は1枚の写真を置いた。
「こちらがレオンくんです」
朝出て行った時の服装は写真と同じらしく、その意味では探しやすい。
ハーチェの森は薬になる材料が多く採れる豊かな森でアミルもよくお世話になっている。なかでも毒消し草の品質は高い。
「ハーチェの森で毒消し草って言ったらアソコよね」
「おぉーー!さすが薬師」
「とうぜん」
「早く見つけてあげないとね」
「そうね」
「な、なによ」
ニヤニヤとしながら自分をみる視線に気づき、少しだけ不機嫌になったリュミエールがアミルに詰め寄る。
「リュミちゃんって優しいよね」
「なっ、ななななななな!!」
真っ赤になって反論しようとするが、『な』しか言えてない。
「ん~、もおカワイイ!!」
リュミエールの細い蒼い髪を少し乱暴にナデナデする。
「ちょっ、アミ。やめっ!」
「リュミちゃ~ん♪」
「髪が、髪が~!(´;ω;`)」
「ここから少し東に行ったところよ。毒消し草の群生地」
「ヒドイよ。アミちゃん!」
髪を手グシで調えながら抗議する。
「よくキラービーが出るわ。刺されないように注意して進みましょう」
「……キラービー?」
「そっ。木の上によく巣があるのよ」
「ね、ねぇ。他のところからは行けないの?」
「ん~。行けるけど、この道が1番安全だよ」
「そ、そう」
「あーー!キラービー!!」
「ぅわひゃぁあああああああ!!」
頭を両手で隠し、涙目で座りこむ。
「ジョークよ!ごめ……」
「ヒドイよ!」と言おうとして、言葉のとまったアミルを見て……
ーーーーーー!!
数十匹のキラービーが、リュミエールとアミルを取り囲んでいた!
「フレアレイン」
短剣に焔を宿らせると、右足を軸に円を描くように焔を雨のように撒き散らす。
その焔は、リュミエール達をドクバリで刺そうと狙っていたキラービーの群れを焼き尽くした。
「……お姉ちゃ…………!」
「レオンくん?」
「……うん」
「リュミ!逃げるわよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
座り込んだまま、焦点のあっていないリュミエールを引きずりながら森を後にする。
「ここまで来れば大丈夫ね」
「毒消し草は採れた?」

「……ううん」

「そう。じゃぁ、これあげるわ」
「毒消し草!……いいの?」
「もちろん」
「……送るわ」
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登場人物紹介

リュミエール

エルフ。

魔力が低くエルフの里では劣等感を抱えていた。

好奇心が強く里の外への興味から剣を習い、2年前に里をでて冒険者になった。

アミル

オッドアイをもつ少女。薬師。

オッドアイではなく、両目を同じ色にする方法を求めて旅にでた。

魔物に襲われていたところをリュミエールに助けられて以来、パートナーとして一緒に旅をしている。


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