【2話】ターゲット
文字数 2,519文字
花を咲かせたばかりの桜が月明かりに照らされる満月の夜。
肌寒い風に撫でられながら、青年はバイクに跨って目的地へ向かっていた。
行き先は、昼間の路地裏で組織の連中から聞き出したアジトだ。
琴木市の賑わう街の中心部からは離れた場所、人通りの少ない場所にあるひとつの建物に着くと青年はその近くにバイクを停める。
そして二丁のハンドガンを準備してすぐ発砲できるようにすると、黒いジャケットの裏に入れて隠した。
「さぁ、行くか」
青年は気持ちを切り替えるように、あえて言葉にして呟く。
門をくぐると、正面玄関の前に立っているサングラスをつけたスーツの男二人を早速見つける。
その二人は首を簡単に折ってしまいそうな程ガタイがよく、スキンヘッドな頭は光を僅かに反射させていた。
けれど、青年は男たちに臆することなく近づくと、緊張感のない様子を見せる。
「ねぇ、そこのお兄さんたち。ここ通してもらってもいい?」
「なんだてめぇ。ここは関係者以外立ち入り禁止だ、さっさと帰れ若造」
青年の言葉に対し、突き放すような冷たい言葉であしらう男。その適当な態度に、青年はむっとして口を尖らせる。
だが、それとは別に青年は男の放った“若造”という言葉に少しばかり戸惑う。
この二人は、青年が組織のお尋ね者であるクリムゾンだという事に気付いていないのだろうか。
「えぇ。それは困るんだよなぁ……なんとか通してくれないか?」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇ。どんな用かは知らんが、そんなことより死にたくなかったらさっさと帰りな」
青年の頼みに、もう一人の男も言葉を返す。
先程の男と同様に、冷たい態度を取っていた。
そんな次の瞬間――
「今、そんなことって言った――?」
青年は男の放った何気ない一言に怒りを覚え、不満そうに溜息をつくとジャケットからひとつのハンドガンを取り出した。
「こいつ、やる気か……!」
すると、それを見た片方の男は素早く拳銃を取り出して声を荒らげる。
それに続くように、もう片方の男は青年を鷲掴みにする勢いで手を伸ばしてきた。
青年は地面を蹴りあげて高く跳び上がり、その手を避けると同時に銃口をこちらに向ける男を先に撃ち抜く。
地面に着くと、接近してきたもう一人の男に銃を向けて引き金を引こうとした。
だが、その瞬間。青年は男に腕を掴まれて照準を逸らされた事によって発砲できなくなる。
男は掴んだ腕を引っ張って青年を手繰り寄せると青年の背後へ回り込み、もう片方の手で首を掴んだ。
「ッ――!?」
首を勢いよく掴まれたことによって、青年は首に鈍い痛みが走る感覚を覚える。
どうにか腕を振りほどこうと暴れてみるが、しっかりと掴まれているせいで青年は上手く身動きが取れない。
「諦めな、若造」
男はそう言うと、青年の腕を折ろうと手に力を込める。
青年は額に冷や汗を浮かべながら、左手をジャケットの中に入れてもう片方のハンドガンを素早く取り出す。
そして、慣れた手つきで後ろに銃口を向けると、一思いに引き金を引いた。
「がッ――?!」
次の瞬間、男は短く声を出してその場へと倒れる。
銃口から僅かに漂う煙に、周囲で血を流して倒れる二人の男。
「俺にとっては、そんなことなんかじゃないっての……」
青年はぽつりと呟きながら、大きく息を吐く。
ジャケットからもうひとつのハンドガンを取り出して両手にハンドガンを構えると、組織のアジトの正面玄関の扉を堂々と開けた。
――カランカラン。
手動の扉につけられたベルが軽い音を立てて、青年の存在を周囲に知らせる。
その音によって入口の近くにいた数人と目が合うと、相手に銃を構える隙も与えずに青年は頭を撃ち抜いた。
姿勢を低くしてコツコツと足音を立てながら駆け足で奥に進む青年。それと同時に、周囲にいる人間たちの頭に照準を合わせて発砲していく。
先程の銃声音や悲鳴を聞いたのだろう。青年が奥へと進み廊下へ出た時には、スーツを着た数人の男たちが拳銃や刃物を構えて静かな足取りでこちらを警戒していた。
「なっ、あれはクリムゾンか!? こ、殺せ!」
そこにいた一人の男が、青年を視界で捉えた途端に声をあげる。
掛け声を合図に発砲しようと男たちが銃を構える僅かな隙を青年が逃すはずもなく、両腕を前に突き出すとハンドガンの引き金を引く。
男たちが発砲したころには、既に二人の頭が撃ち抜かれていた。
「な、なんだこいつの動きは――!」
青年の素早い動きを見た男の一人が、驚きに満ちた表情で声を上げる。
銃弾が当たりにくくなるように青年は姿勢を低くして弾を避けると、走って二人の男に急接近した。
その間に、青年は冷静に相手の様子を伺う。
男たちの動きが鈍く戦闘慣れしていない事を確認した青年は、心に余裕を持って――けれど、決して油断することなく次に取るべき行動を考える。
片方の男が青年に銃口を向けて目の前の距離で発砲しようとするが、青年は男の拳銃を持つ手をハンドガンで勢いよく弾き、次に男の足を蹴ると男は体制を崩してその場に転ぶ。
「てめぇっ!」
男をカバーするようにもう一人の男がナイフを振り上げて叫ぶような声を放つ。
青年は瞬時に後ろに下がって攻撃をかわして飛び跳ねると、壁を強く蹴って宙を舞った。
そして男の背後に移動した途端、男の足に勢いよく回し蹴りを食らわす。
男が体制を崩して勢いよく尻餅をつく傍で、青年は他の男たちが向ける拳銃の照準を逸らすために再び大きく飛び跳ねる。
「よっ、と……!」
青年は飛び跳ねた空中で瞬時に両手のハンドガンの照準を合わせると、連続で発砲した。
地面に着地すると同時に受け身を取って転がると、青年は起き上がる時に再び引き金を引いて男たちを仕留めていく。
そして、先程相手した二人が体勢を整えて起き上がろうとしている間に、青年はくるりと振り向いて発砲する。
二発の銃声音が響き終えた頃には廊下は血塗れになっており、唯一その場で息をしている青年はすました顔で数秒ほどその光景を見つめていた。
突如アジトに現れたクリムゾンに、どんどん騒がしくなっていく建物内。
青年はハンドガンのマガジンを付け替えると、上の階へと進んだ。
肌寒い風に撫でられながら、青年はバイクに跨って目的地へ向かっていた。
行き先は、昼間の路地裏で組織の連中から聞き出したアジトだ。
琴木市の賑わう街の中心部からは離れた場所、人通りの少ない場所にあるひとつの建物に着くと青年はその近くにバイクを停める。
そして二丁のハンドガンを準備してすぐ発砲できるようにすると、黒いジャケットの裏に入れて隠した。
「さぁ、行くか」
青年は気持ちを切り替えるように、あえて言葉にして呟く。
門をくぐると、正面玄関の前に立っているサングラスをつけたスーツの男二人を早速見つける。
その二人は首を簡単に折ってしまいそうな程ガタイがよく、スキンヘッドな頭は光を僅かに反射させていた。
けれど、青年は男たちに臆することなく近づくと、緊張感のない様子を見せる。
「ねぇ、そこのお兄さんたち。ここ通してもらってもいい?」
「なんだてめぇ。ここは関係者以外立ち入り禁止だ、さっさと帰れ若造」
青年の言葉に対し、突き放すような冷たい言葉であしらう男。その適当な態度に、青年はむっとして口を尖らせる。
だが、それとは別に青年は男の放った“若造”という言葉に少しばかり戸惑う。
この二人は、青年が組織のお尋ね者であるクリムゾンだという事に気付いていないのだろうか。
「えぇ。それは困るんだよなぁ……なんとか通してくれないか?」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇ。どんな用かは知らんが、そんなことより死にたくなかったらさっさと帰りな」
青年の頼みに、もう一人の男も言葉を返す。
先程の男と同様に、冷たい態度を取っていた。
そんな次の瞬間――
「今、そんなことって言った――?」
青年は男の放った何気ない一言に怒りを覚え、不満そうに溜息をつくとジャケットからひとつのハンドガンを取り出した。
「こいつ、やる気か……!」
すると、それを見た片方の男は素早く拳銃を取り出して声を荒らげる。
それに続くように、もう片方の男は青年を鷲掴みにする勢いで手を伸ばしてきた。
青年は地面を蹴りあげて高く跳び上がり、その手を避けると同時に銃口をこちらに向ける男を先に撃ち抜く。
地面に着くと、接近してきたもう一人の男に銃を向けて引き金を引こうとした。
だが、その瞬間。青年は男に腕を掴まれて照準を逸らされた事によって発砲できなくなる。
男は掴んだ腕を引っ張って青年を手繰り寄せると青年の背後へ回り込み、もう片方の手で首を掴んだ。
「ッ――!?」
首を勢いよく掴まれたことによって、青年は首に鈍い痛みが走る感覚を覚える。
どうにか腕を振りほどこうと暴れてみるが、しっかりと掴まれているせいで青年は上手く身動きが取れない。
「諦めな、若造」
男はそう言うと、青年の腕を折ろうと手に力を込める。
青年は額に冷や汗を浮かべながら、左手をジャケットの中に入れてもう片方のハンドガンを素早く取り出す。
そして、慣れた手つきで後ろに銃口を向けると、一思いに引き金を引いた。
「がッ――?!」
次の瞬間、男は短く声を出してその場へと倒れる。
銃口から僅かに漂う煙に、周囲で血を流して倒れる二人の男。
「俺にとっては、そんなことなんかじゃないっての……」
青年はぽつりと呟きながら、大きく息を吐く。
ジャケットからもうひとつのハンドガンを取り出して両手にハンドガンを構えると、組織のアジトの正面玄関の扉を堂々と開けた。
――カランカラン。
手動の扉につけられたベルが軽い音を立てて、青年の存在を周囲に知らせる。
その音によって入口の近くにいた数人と目が合うと、相手に銃を構える隙も与えずに青年は頭を撃ち抜いた。
姿勢を低くしてコツコツと足音を立てながら駆け足で奥に進む青年。それと同時に、周囲にいる人間たちの頭に照準を合わせて発砲していく。
先程の銃声音や悲鳴を聞いたのだろう。青年が奥へと進み廊下へ出た時には、スーツを着た数人の男たちが拳銃や刃物を構えて静かな足取りでこちらを警戒していた。
「なっ、あれはクリムゾンか!? こ、殺せ!」
そこにいた一人の男が、青年を視界で捉えた途端に声をあげる。
掛け声を合図に発砲しようと男たちが銃を構える僅かな隙を青年が逃すはずもなく、両腕を前に突き出すとハンドガンの引き金を引く。
男たちが発砲したころには、既に二人の頭が撃ち抜かれていた。
「な、なんだこいつの動きは――!」
青年の素早い動きを見た男の一人が、驚きに満ちた表情で声を上げる。
銃弾が当たりにくくなるように青年は姿勢を低くして弾を避けると、走って二人の男に急接近した。
その間に、青年は冷静に相手の様子を伺う。
男たちの動きが鈍く戦闘慣れしていない事を確認した青年は、心に余裕を持って――けれど、決して油断することなく次に取るべき行動を考える。
片方の男が青年に銃口を向けて目の前の距離で発砲しようとするが、青年は男の拳銃を持つ手をハンドガンで勢いよく弾き、次に男の足を蹴ると男は体制を崩してその場に転ぶ。
「てめぇっ!」
男をカバーするようにもう一人の男がナイフを振り上げて叫ぶような声を放つ。
青年は瞬時に後ろに下がって攻撃をかわして飛び跳ねると、壁を強く蹴って宙を舞った。
そして男の背後に移動した途端、男の足に勢いよく回し蹴りを食らわす。
男が体制を崩して勢いよく尻餅をつく傍で、青年は他の男たちが向ける拳銃の照準を逸らすために再び大きく飛び跳ねる。
「よっ、と……!」
青年は飛び跳ねた空中で瞬時に両手のハンドガンの照準を合わせると、連続で発砲した。
地面に着地すると同時に受け身を取って転がると、青年は起き上がる時に再び引き金を引いて男たちを仕留めていく。
そして、先程相手した二人が体勢を整えて起き上がろうとしている間に、青年はくるりと振り向いて発砲する。
二発の銃声音が響き終えた頃には廊下は血塗れになっており、唯一その場で息をしている青年はすました顔で数秒ほどその光景を見つめていた。
突如アジトに現れたクリムゾンに、どんどん騒がしくなっていく建物内。
青年はハンドガンのマガジンを付け替えると、上の階へと進んだ。