詩小説『ネットカフェ個室にて』3分で夜の街の闇。若者へ。

エピソード文字数 987文字

ネットカフェ 個室にて

「なんで」

「うん?」

「なんでネカフェ?」

「だって寒いじゃん」

「いや、そうだけど」

「まぁ、この街じゃ夏でも長袖だけどね」

「なんで?」

「腕なんて出したら、リストカットか、タトゥー、良くてキスマークがこんにちは」

「なーるほどね」

「もしかしてヤレるとでも思った?」

「いや、そんな、まさか」

「しかたないなぁ」

「えっ?!」

「観ても良いよ。アダルトサイト。楽園チャンネル」

「観るわけないじゃん」

「今、ちょっとさ、期待してたでしょ?」

「違うよ、ほんとマジで」

「今、気づいた」

「何に?」

「私達って、友達の作ら方知らない」

「なんだよ急に」

「距離の取り方とか、近づき方とか」

「みんな学んで大人になるはずなの。中学では中学なりの付き合い方。高校では高校なりの付き合い方」

「だとしたら、なにひとつ学ばずに大人になったなぁ」

「私たちの会話って、周りの人が聞いてたら異様なのかな?」

「かもね。ってか、そうだね」

「いまさらなにやってんだろうね。ネット使って友達作りなんて」

「でも、確かに学校じゃないと出逢えない人もいっぱい居るけどさ。ネットじゃないと繋がれない人も居るよ」

「えっ?」

「だってさ、あの鍵のかかった五畳の部屋と、廃棄ビルの屋上から見たあの街が繋がったんだよ」

ドリンクバーの受け皿は甘い香りを放ち、ねちっこく汚れている。

自分が用済みになれば、後はお構いなし。次にジュースを注ぎに来る人間の顔すらチラつかない。

自分のモノではないモノに興味なし。次使うヤツが自分なら。想像ひとつでセカイは変わるはず。

壁に掛けられたコートに毛布。足元へ乱雑にならぶブーツやスニーカー。

キャリーバッグにはシワを作る洋服が詰め込まれている。

一夜の寝床にするために入ったはずの個室。一度根が生えたなら抜けらず。いつしか住処に。

自分以外全て見ず知らずの他人という空間に、生活臭が入り混じり、空気は重苦しかった。

そこには闇があった。

「そうじゃなくて、もっと早く友達付き合い知ってたら、私だって」

「違う、もっと早くはあったとしても、もう遅いはない。絶対ない」

「えっ?」

「僕たちは友達になれる」

「いや」

「なんで?」

「もうなってる」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック