第45話 到着、城郭都市
文字数 3,008文字
ようやく街の入口まで辿り着いた私は、目の前にそびえる
「この門は開け閉めするのが、なかなか大変そうですねー」
たぶん一人で操作するのは無理じゃないのかな……。
「そうだな、だから操作する際は数人掛かりで、門を動かすのも朝開いて夜閉じる際の二回のみだ。この街には他に出入口もないから、閉じたあとは出入りも出来ない」
へー出入口は一つだけで、夜になると街に入ることは出来ないのか……。
えっ、それじゃあ私がアルフォンス様の城に
ま、まぁ私に掛かればこの程度の城壁なんて飛び越えられるわけで、そこは問題じゃないですし!! 問題があるとすれば、後々勝手に入ってきたことがバレて不審者として警備隊の人たちに目を付けられる心配くらいで…………。
「リアぼんやりとして、どうかしたのか……?」
「いえ……ただアルフォンス様に出会えて本当によかったと思っていただけです」
「ふぁっっ!?」
いやー、街の方に着かなくてよかった!! あの天候で門がしまっている街に着いたら、何の
平時ならともかくあの嵐で野宿なんて選ばないし……!!
「え、あっえ……そ、それを言うなら私の方が……」
「まぁ、それはさておき」
話を変えようと私はパンッと手を叩く。
「あっ…………」
だがしかしアルフォンス様が気まずそうな表情で、そんな声を
私は思いっきり聞き逃していたけど、そう言えば小さな声で何か言ってたような……。
「……ごめんなさい聞いていなかったのですが、何か仰っていましたか?」
「いや、ない……別にない」
私が念の為聞き返して見たところ、アルフォンス様はぷるぷると小さく首を振った。
あら、気のせいだったのかな……。
「そうですか? ならよいのですが……あっ、そうですよアルさん!」
あっそうそう、そうだー!! 思い出した!!
「はっ、え?」
私の呼びかけに、彼は目を白黒させて返事とも取れない声を漏らす。
「呼び方を慣らしておこうと思いまして、アルさんでいいんですよね? アルさん?」
さっきほど謎のやり取りを経て、せっかく決まった呼び方をうっかり忘れかけていたので、確認の意味も込めて私は何回もそう呼んでみた。
いまいち、しっくりこないけど仕方ない。たぶん呼んでるうちになれるよね?
「いや、それでいいんだ……が……」
「よかったー、それでは行きましょうかアルさん」
なんだか彼の反応が微妙なのが少し引っかかるが、とりあえず問題はなさそうなので先に進むように彼を
だっていつまでも入口で話し込んでても仕方ないからねー。
「そんなにやたら呼ぶ必要は…………いや、でもせっかくだしここは……」
しかし彼はなにやら一人でブツブツ言っており返事をしてくれない。
んー、やっぱり何かあったのかな……。
「どうしましたか、アルさん?」
「なっなんでもない、問題ない……!!」
問題ないというわりに言葉に変な力が入ってる気がするのはなぜだろうか……。
うん、まぁいいや。
「分かりました、それでは今度こそ街に入りましょうー!!」
「うむ……」
そうして私たちは二人で門をくぐり街へと入ったのだった。
街に入ってまず印象的だったのが、ひときわ高くそびえ立つ
あれは街の中心に立つ城の一部のようで、あれに登って見張りをすることでこの一帯を一望できるようになっているのだろう。城の規模はアルフォンス様の古城の半分程度で、けっして小さいワケじゃないけど比べると見劣りする感じだ。
単体だと分かりづらいけど、実はあの古城って結構大きいからねー。
そんなところで街について私の
とは言ってもまぁ、あれだけの建物を遊ばせてるとは思えないから、たぶん中には行政機関なんかが置かれていて一般人の出入りは出来ないようになってるでしょう……。
最初から無理だとは分かっていましたよ、でも考えずにはいられないんです!!
ロマンだからっっ!!
主塔を見ながらそんなことを考えつつ、私はしばらく歩いた。
あっそうそう、街に着いたところで行き先を決めないとね。
まぁ私が行きたい場所は決まってるのでアルフォンス様が、どうなのかって所が重要な訳だけど……。
「さて、アルさんはどこか行きたい場所などはございますか?」
そんな言葉と共にアルフォンス様の方へ顔を向けた私が目にしたのは、物凄く挙動不審な動きをする彼だった。その姿はまるで始めて人の多い都会に来た田舎者のようで……ううん、流石にそれは失礼か。
久しぶりの街で少し緊張してるだけに違いない、そうだよね?
「あっいや、特には……」
アルフォンス様は私の声にやや間を開けてそう反応した。
とりあえず、さっきの変な動きは見なかったことにして話をしよう……。
「それならば、私は書店に行きたいんですよー」
そこですかさず私は書店へ行くことを提案する。
そう私には書店に行かなくてはいけない理由があるのだ……。
うっかり
「ん、書店……? 図書室の本だけでは不十分なのか?」
すると不思議そうな顔でアルフォンス様はそう問いかけて来た。
まぁアルフォンス様のこの反応は想定内である。あれだけ立派な
だがしかし、それではダメなんですよ……私がダンスの教本を借りたという
そう、バレずにどうにかする。それが私のプライドなんですよ……!!
「いえ、そうではないのですが……実は私、街ごとの書店の
そんなわけで私はツラツラと言い訳を並べる。まぁ書店の陳列や品揃えを見比べるのは、実際好きなのであながち嘘ではない。
「ほ、ほう? そういう楽しみ方もあるのか……」
しかしアルフォンス様は明らか困惑している。
はぁっ、なんでそんな反応なんですか!? 書店の陳列や品揃えは凄いんですよー!!
その品揃えを見れば、そこの住人の文化や知識レベル地域の特色などを推察することが可能で、それは土地柄を知るうえで重要な
しかし内心で思っていても自重した私は偉い……!!
「そうなんですよー!!」
私は諸々の考えを口に出すのを我慢した代わりに、力いっぱいそう言った。
「ならば最初に見るのは書店にするか?」
ふふっ、よし来ましたね!?
その言葉に私は出来る限りの笑顔を作って
「いいんですか、ありがとうございますっ!!」
「う、うむ……」
アルフォンス様は私の言葉に頷きつつも、コチラからやや視線をそらした。なぜだ、なぜ視線をそらす……まさか勢いに引かれた?
で、でもそんなことはいい、これでダンスの教本を確保出来るぞ……!!