第四幕(3)
文字数 425文字
どよめき、そして歓待。これがカーハイド人気質[かたぎ]であるらしい。遠来の客と見るや、何も訊かずに受け入れ、僕らを温め、食べさせ、休ませてくれた。
宿のあるじは太っ腹で、誰かが遠慮がちに僕らの冬山登山の訳を尋ねようとしたときに、こう言ってさえぎってくれた――
「よくある話だろ、昔から。高貴なお方が追放されるなんてね。正義は天のみぞ知る、と言うじゃないか」。
こんな小さな村でもラジオはあるから、皆、エストラヴェンの追放も、彼をかくまえば犯罪だということも知っている。
でも、僕らのことを誰だか知りませんでしたと言って、白[しら]を切ることはできるわけだ。