第9話 ひいら
文字数 1,607文字
待ち合わせ時間はとっくに過ぎている。俺に今できることを全力でやり遂げるという引きしまった思いで十分前に来ただけに拍子抜けだ。
彼女の正体、しいて言えば彼女のミカエリとその能力について知ることと、彼女が俺達のゲームの計画のことを耳にしているのかということを突き止めなくてはいけない。
彼女は俺を見つけると、やっほーと気軽に笑った。友達でもないのに急に慣れすぎた感じがする。そして俺よりも先に店に入って何を注文するか聞いてきた。嫌悪感が募り始めて俺は閉口して自分でレジに並んだ。彼女は気にもせず自分も注文し席を取ってくると先に行ってしまった。
席に着くと彼女はがつがつハンバーガーを食べはじめている。俺はコーラしか頼まなかったので、その食欲を見つめながら一口すすった。彼女はハンバーガーを頬張りながら改めて自己紹介をした。
「善見ひいら。氷山女子高等学校の三年。今すっごい忙しいんだ。君にも手伝って欲しいぐらい。体育祭の準備とテストとボランティアでしょ。あとカラオケと、しっかり遊びもね」
彼女はボランティアを三つもしているそうだ。やはり注意深く聞き入ってしまうのは、ミカエリをボランティアで使っているという点だ。
そもそもミカエリが慈善活動に使えるということに驚きだ。留学生を迎え入れている高校で、通訳をかねて色々と観光案内をしているらしい。その他数人の留学生の勉強もつきそっている。
彼女もある程度は英語ができるのだが、分からないところはミカエリがひいらの口を借りて発音するのだとか。もう一つは地震で被災した地域への募金活動を毎週行っているそうだ。
極めつけは、月に一度だが、海岸の清掃活動だ。ミカエリに全て任すというから驚きだ。自分でも拾うが、ミカエリの大きな口が掃除機のような吸引力で吸い集める。人に見られるといけないので派手にかき集めるときは必ず人のいない隅の方で掃除機のごとく浜辺を一掃するらしい。
彼女はしゃべるしゃべる。俺が口を挟むことはほとんどない。彼女の生き生きとした話しぶりを聞いていると、とても同年代とは思えなくなってきた。
彼女が月に何十回と慈善を施している間、俺はと言えば部屋に閉じこもって過去の記憶をまさぐっては憎しみを溜め込むことしかしていない。まず目の輝きが眩しく、目線が合う度に俺は天井や壁を見て反らした。話が過熱してくると苛立ちも募ってきた。
雲泥の差をまざまざと見せつけられた気がして切なくなったのが悟られないようにコーラで舌を濡らした。
「ミカエリはいつからいるんだ」
「ミカエリって呼ぶんだ。もっといい名前考えてよ。そんな怖い生き物じゃないでしょ?」
「俺がつけたんじゃない」
「じゃあ誰? そっか君の友達もミカエリがいるんだ!」
大声で騒がれてはたまらないので、俺は冷や汗をかいた。まして早くも悪七のことを悟られてしまったからだ。こうなったら早くゲームのことを聞いたか聞いてないかだけでも突きとめないといけない。
「ねぇ。どこで拾ったの? あたしのフーは公園に捨てられてたの」
カムは今日は一度も傷口を触りはしないが、悪寒が全身をめぐった。そんなペットみたいに捨てられているわけがない。カムは、気づいたら側にいたのだ。拾ったとかそういうものではないのだ。幽霊みたいに憑いたともいえる。
ふわふわ漂っていたというのか。(俺のカムは這うが、フーはふわふわ浮いている)
「そう。はじめて見たときびっくりしちゃったけど、かわいかったから持って帰ったの」
結局ミカエリの出自については分からないが、俺のことを聞かれても困るし、そろそろこっちから話しかけてもいいころだろう。
「昨日は、俺の友達の顔見たんじゃないか? あのとき一緒にいて、あいつもミカエリといるんだ」
「ざーんねんながら見えなかったよ。その人のも見たかったな。君のカムちゃんだってかわいいもん。あ、そうそう忘れないうちにメアド教えてよ」
彼女の正体、しいて言えば彼女のミカエリとその能力について知ることと、彼女が俺達のゲームの計画のことを耳にしているのかということを突き止めなくてはいけない。
彼女は俺を見つけると、やっほーと気軽に笑った。友達でもないのに急に慣れすぎた感じがする。そして俺よりも先に店に入って何を注文するか聞いてきた。嫌悪感が募り始めて俺は閉口して自分でレジに並んだ。彼女は気にもせず自分も注文し席を取ってくると先に行ってしまった。
席に着くと彼女はがつがつハンバーガーを食べはじめている。俺はコーラしか頼まなかったので、その食欲を見つめながら一口すすった。彼女はハンバーガーを頬張りながら改めて自己紹介をした。
「善見ひいら。氷山女子高等学校の三年。今すっごい忙しいんだ。君にも手伝って欲しいぐらい。体育祭の準備とテストとボランティアでしょ。あとカラオケと、しっかり遊びもね」
彼女はボランティアを三つもしているそうだ。やはり注意深く聞き入ってしまうのは、ミカエリをボランティアで使っているという点だ。
そもそもミカエリが慈善活動に使えるということに驚きだ。留学生を迎え入れている高校で、通訳をかねて色々と観光案内をしているらしい。その他数人の留学生の勉強もつきそっている。
彼女もある程度は英語ができるのだが、分からないところはミカエリがひいらの口を借りて発音するのだとか。もう一つは地震で被災した地域への募金活動を毎週行っているそうだ。
極めつけは、月に一度だが、海岸の清掃活動だ。ミカエリに全て任すというから驚きだ。自分でも拾うが、ミカエリの大きな口が掃除機のような吸引力で吸い集める。人に見られるといけないので派手にかき集めるときは必ず人のいない隅の方で掃除機のごとく浜辺を一掃するらしい。
彼女はしゃべるしゃべる。俺が口を挟むことはほとんどない。彼女の生き生きとした話しぶりを聞いていると、とても同年代とは思えなくなってきた。
彼女が月に何十回と慈善を施している間、俺はと言えば部屋に閉じこもって過去の記憶をまさぐっては憎しみを溜め込むことしかしていない。まず目の輝きが眩しく、目線が合う度に俺は天井や壁を見て反らした。話が過熱してくると苛立ちも募ってきた。
雲泥の差をまざまざと見せつけられた気がして切なくなったのが悟られないようにコーラで舌を濡らした。
「ミカエリはいつからいるんだ」
「ミカエリって呼ぶんだ。もっといい名前考えてよ。そんな怖い生き物じゃないでしょ?」
「俺がつけたんじゃない」
「じゃあ誰? そっか君の友達もミカエリがいるんだ!」
大声で騒がれてはたまらないので、俺は冷や汗をかいた。まして早くも悪七のことを悟られてしまったからだ。こうなったら早くゲームのことを聞いたか聞いてないかだけでも突きとめないといけない。
「ねぇ。どこで拾ったの? あたしのフーは公園に捨てられてたの」
カムは今日は一度も傷口を触りはしないが、悪寒が全身をめぐった。そんなペットみたいに捨てられているわけがない。カムは、気づいたら側にいたのだ。拾ったとかそういうものではないのだ。幽霊みたいに憑いたともいえる。
ふわふわ漂っていたというのか。(俺のカムは這うが、フーはふわふわ浮いている)
「そう。はじめて見たときびっくりしちゃったけど、かわいかったから持って帰ったの」
結局ミカエリの出自については分からないが、俺のことを聞かれても困るし、そろそろこっちから話しかけてもいいころだろう。
「昨日は、俺の友達の顔見たんじゃないか? あのとき一緒にいて、あいつもミカエリといるんだ」
「ざーんねんながら見えなかったよ。その人のも見たかったな。君のカムちゃんだってかわいいもん。あ、そうそう忘れないうちにメアド教えてよ」