【なぞなぞ7】魔王ちゃん、お昼寝する
文字数 1,682文字
ただし、問題文が小説的文章、というだけです。このなぞなぞの目的は、活字が苦手な魔王ちゃんが小説的文章に慣れることですので
【なぞなぞ7】
窓を叩く雨の音が、より一層強くなる。
集められた殺し屋たちは、窓の外に視線を向けた。
本来なら夕焼け空が広がっている時間帯だが、今日は灰色の分厚い雲が空を覆い、大粒の雨を吐き出している。今朝の天気予報では、この雨は一週間降り続けると言っていた。
ここは、とある政治家――依頼主の屋敷の一室だ。
殺し屋たちは「儲け話がある」と集められたのだが、まだその依頼主は部屋にやってこない。
手持ち無沙汰な殺し屋たちは、耳障りな雨音に苛立ちを募らせながら、依頼主を待っていた。
殺し屋Aは狙撃手【スナイパー】。長距離射撃が得意。狙った獲物を逃さない正確無比な射撃の腕前だ。
殺し屋Bは暗殺者【アサシン】。音もなく標的に忍び寄り、暗器(※1)で一瞬で命を奪う暗殺術を会得している。
殺し屋Cは薬剤師【ドクター】。あらゆる毒薬を熟知しており、状況に応じて毒薬を選び、標的を毒殺する。
殺し屋Dは飼育係【テイマー】。小動物から猛獣まで、あらゆる動物を巧みに操り、標的を殺害する。
時計の短針が『Ⅴ』を過ぎた頃、ようやく依頼主の男は現れた。
「遅れてすまない。殺し屋諸君、よく集まってくれた。本来なら個別に依頼すべきなのだろうが、私も多忙の身でな。打ち合わせの時間をまとめさせてもらったよ」
「いいから早く説明しろ。こっちは二時間も待たされてんだよ」
「悪かった。今から説明しよう――」
依頼主の話はこうだ。
殺しの標的は依頼主と同じく政治家だ。来週の大統領選挙で戦う候補者の四名らしい。ライバルを減らして選挙を楽に進めたいという、実にくだらない殺しの依頼である。
四人の殺し屋と、四人の標的……つまり殺し屋はそれぞれ標的を一人受け持ち、暗殺することになる。
「急ぎなのでな。今日から三日以内に殺してもらいたい」
「リスクが高すぎるぞ。受けるのは報酬次第だ」
「成功すれば、500万ドル出そう。やってくれるか?」
「……ふふふ。その話、のったぞ」
依頼主の問いに、殺し屋たちは満足気に頷いた。
遠くのほうで雷鳴が響く中、殺し屋たちと依頼主はニヤリと口角を持ち上げた。
ところが、この暗殺計画は完遂しなかった。
殺し屋の中で一人だけ、標的を暗殺することができなかったのだ。
さて。殺し屋A~Dのうち、暗殺失敗したのは誰?
※1 暗器……身体に隠し持てる小さな武器のこと。
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前回【なぞなぞ6】の答え
正解『ホチキス』
理由『「ちゅー」→「キス」に変換。キスの文字があり、離れなくなる文房具は「ホチキス」です』
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