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エピソード文字数 1,091文字

【紗紅side】

 ―2016年1月―

 都内で起きた原因不明の陥没事故。
 埠頭の一部が突如陥没し、廃屋となっていた古い倉庫諸共、深さ10メートルの巨大な穴に吞み込まれた。

 ――没落事故から1週間。
 事故当時倉庫内にいた者は、死者35名、重症者1名、不明者2名のまま、未だに捜索は続けられていたが、更に崩落する危険性があるために、巨大な穴にはなかなか近付けず、不明者の生存は絶望的となった。

「ワンワンワン!ワンワンワン!」

 ブルーシートに囲まれた陥没事故現場で、一匹の救助犬が激しく鳴く。

 レスキュー隊員が、穴に向かって声を上げる。

「誰かいるのか-!声が聞こえるかー!」

「陥没事故からもう1週間だ。救助ヘリで捜索活動は連日行われた。瓦礫の下に生存者はいないよ。生きているとしたら、鼠だろう。救助犬は鼠に反応したんだ。当時倉庫内では対立するレディースの拉致監禁暴行事件が発生していたらしい。その中に雷竜会の組員も2人いたそうだ」

 ベテランのレスキュー隊員はその場に背を向ける。若い隊員はそれでも諦めきれず、穴に向かって叫び続けた。

「誰かいるのかー!返事をしろー!」

 穴の奥で瓦礫がガチャンと音を鳴らした。

「ワンワンワン!ワンワンワン!」

 犬が激しく鳴き叫び、瓦礫と瓦礫の隙間から指が突き出し、微かに動いた。

「あ、あれを見て下さい!指が……!動いてる!」

「……まさか!?」

 レスキュー隊員は無線でヘリを要請、救急車の手配をする。

「生存者発見!生存者発見!ヘリよりロープで穴に入り生存者を救助する。至急、現場に救助ヘリを回してくれ!」

 事故現場周辺は一気に緊迫感に包まれた。

 ◇◇

 パタパタとヘリが旋回する音がする。
 救急車のサイレンが鼓膜に響き、頭がズキズキと痛む。瞼は重く自分の意思で開くことは出来ない。

「生存者1名!繰り返します。生存者1名!意識レベルあり。至急病院へ搬送します」

 体中の骨が折れてしまったのではないかと思えるくらい全身は痛み、咽は焼けるように熱い。

 ……それでもあたしは声を絞り出す。

「……み……の」

 レスキュー隊員があたしの手を握った。

「生存者はもういない。よく頑張ったな」

「……みの、美濃を……捜し……て」

 救急車に乗せられ、病院へと搬送される車中で、あたしは意識を手放した。

 ――あたしは……

 夢を見ていたのだろうか……?

 ――あたしは……

 まだ……夢を見ているのだろうか……?

 ――ここは……

 どこ……なんだよ……。
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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