第2話 ペットボトル
文字数 2,537文字
ゴミ拾い散歩で、あまりうれしくないゴミの筆頭が、ペットボトルである。
何故か?
汚いからである。
他人が口をつけたボトル。大抵は蓋を閉めて捨ててある。
分別する場合は、それを外し、外の皮を剥いて、キャップ部分のプラスチックの輪っかを爪を立てて外し、外流しで洗って干す。
製品によって、この輪っかが固くて外せないものもある。ていうか、半分くらいは外せない。
この際には、飲み口に手を付けないわけにはいかない。口をつけて飲むのだから、唾液が付着していることは、百パーセント間違いないのに、だ。
かの新型コロナウイルスさえも、付着している可能性がある。
そりゃ直射日光を浴びた後なら、失活しているかもしれないが、冬の夜間に捨てられたものを、早朝拾った場合など、かなり危険だ。
もちろん俺は、拾う際も洗う際も手袋をしているが、常に恐怖感はある。
コロナに限らず、人間に感染る病原体や寄生虫を最も多く持っているのは人間だ。
そういう意味では空き缶も危険だが、飲み口がオープンなので、日光に少し当たれば、ヤバいのは失活するし、雨でも降れば流れてしまう。
だが、ペットボトルは蓋をしてあると、その下の病原体はおそらく無事だろう。
ボトルには、まだ中身が入っている場合もある。
飲み残しは栄養たっぷり。菌の培養器材みたいなものだ。病原体によっては時間が経つにつれて増殖している場合もあるかも知れない。
夏の炎天下で腐敗し、破裂しそうになっているのもよく見るが、この場合は逆に感染するようなタイプのウイルスや菌は死滅していそうではある。
次に嫌なのが、タバコの吸い殻が入っている場合だ。
灰皿代わりに使ったのであろう。ミネラルウォーターのボトルなのに、何故かウーロン茶が入っている、みたいなのがそれだ。
タバコが腐ると、吐きそうなほど臭いのを知っているだろうか?
ウーロン茶色の水の中、タバコの葉がゆらゆらと揺らめき、巻き紙とフィルターがバラバラになって漂う。
そこまでの状態になっても、フィルターは分解しないのだ。
見えているのはまだいい。カフェ・オレなどの飲み残しに吸い殻が入っていると、濁っていて気づかない。蓋を取って中身を出すと、吸い殻があふれ出し、腐敗臭が鼻を衝いて初めてわかる。外流しの排水口は小さいから、すぐに吸い殻で詰まり、臭い水が溜まりだす。
毒づきながら手で吸い殻ごみを回収し、後で死ぬほど手を洗う。
吸い殻は、空き缶に入っていることの方が多いが、空き缶ならいいってわけでもない。吸い殻が出てきにくい分、分別しづらさはペットボトルより上だ。
吸い殻の件についてはまだまだあるので、もっと別項で詳しく書く。
さて。
最もイヤなペットボトルは何か?
それは『大雪の降った年、雪が解けた後に国道沿いに捨ててあるお茶のような色の液体の入ったペットボトル』である。
これ以上、イヤなペットボトルはこの世に存在しない、と断言してもいい。
その正体とは何か? 大雪の降った年。国道はほぼ間違いなく渋滞となる。
渋滞といっても、二時間や三時間ではない。半日から三日以上も渋滞から抜け出せないこともある、という地獄の大渋滞だ。
原因となるのは、たいていトラック。
冬の雪国に来るというのに、スノータイヤもチェーンの用意もせず、天気予報さえも見ずにやって来るバカなトラックドライバーが、たった一台いるだけでこの渋滞は起きる。
平坦な道を走っている間は、多少積もっていても走れるものだ。だが、陸橋などの坂道になると、途端にスリップする。勢いをつけて登り切ってしまえばいいが、それが出来ないで途中で止まると、もう身動きできない。
スリップした状態でアクセルを吹かすと、車体が斜めになり、二車線を塞いでしまう。
こうなると後続は抜くこともできないし、トラックは重すぎて人力で押して何とかすることもできない。
次々に後続が止まり、雪がそこに降り続き、すべての車を埋めていく。そうなってから、原因のトラックをなんとか動かしたところで、もはや誰も身動きとれなくなっている。
これが、大雪の年には必ず起きるわけだ。
国道渋滞の原因究明と防止は、国土交通省の仕事だろうから、俺が口を出すことではない。地元民は渋滞解消するまでの間、国道を避けて生活するしかないわけだが、問題は、渋滞の中にいる人間どもである。
「飲み物も食べ物もない」だの「燃料が無くて寒い」だの、「毛布や食料を自衛隊や地元が配った」だの、「積み荷から食料を提供したトラックがあった」だの、TVの報道で見た方もあるだろう。
それはいい。人命は大事だから、水分も栄養も睡眠も、きちんと取ってもらえばいい。
だが、出る方、つまり小便はどうしているのか。
その辺にしてくれればいいのだが、何を思うのか、ペットボトルに用を足すバカが一定数いるのだ。外でするのが恥ずかしいのか、それとも局部を外気にさらすと寒いと思うのか……しかも、それにきっちりと蓋をして、道に捨てていくド外道が、更に一定数いるわけだ。
それを誰が片付けると思うのか?
ペットボトルが日光で劣化し、分解するまでどれくらいかかると思うのか?
一年や二年では消えないのだ。その間、彼等ド外道の小便は日光で温められ、発酵し続け、あるいは破裂し、あるいは植栽の土に埋もれていく。
こうして小便爆弾は、雪が降るたびに蓄積されていくわけだ。
俺のいくつかある散歩コースのうち、国道まで行くのはひとつだけ、しかも百メートルくらいしか国道沿いを歩かないが、それでさえ、数本片付けたのだから、十数キロの渋滞区間で、何百本、何千本の小便爆弾が設置されているか、考えたくもない。
言っておく。
豪雪に限らず、渋滞に巻き込まれることもあるだろう。
その際に、小便をしたくてたまらなくなることもあるだろう。
状況によっては、外でするわけにもいかず、ペットボトルしか見当たらないこともあるかも知れない。
そのボトルに用を足してはいけない、とは言わない。
したら持って帰れ。
自分の家で処理しろ。
洗って分別して、リサイクルに出せ。
ていうか、小便ボトルでなくとも自分の出したゴミはすべて持って帰れ。
例外はない。
何故か?
汚いからである。
他人が口をつけたボトル。大抵は蓋を閉めて捨ててある。
分別する場合は、それを外し、外の皮を剥いて、キャップ部分のプラスチックの輪っかを爪を立てて外し、外流しで洗って干す。
製品によって、この輪っかが固くて外せないものもある。ていうか、半分くらいは外せない。
この際には、飲み口に手を付けないわけにはいかない。口をつけて飲むのだから、唾液が付着していることは、百パーセント間違いないのに、だ。
かの新型コロナウイルスさえも、付着している可能性がある。
そりゃ直射日光を浴びた後なら、失活しているかもしれないが、冬の夜間に捨てられたものを、早朝拾った場合など、かなり危険だ。
もちろん俺は、拾う際も洗う際も手袋をしているが、常に恐怖感はある。
コロナに限らず、人間に感染る病原体や寄生虫を最も多く持っているのは人間だ。
そういう意味では空き缶も危険だが、飲み口がオープンなので、日光に少し当たれば、ヤバいのは失活するし、雨でも降れば流れてしまう。
だが、ペットボトルは蓋をしてあると、その下の病原体はおそらく無事だろう。
ボトルには、まだ中身が入っている場合もある。
飲み残しは栄養たっぷり。菌の培養器材みたいなものだ。病原体によっては時間が経つにつれて増殖している場合もあるかも知れない。
夏の炎天下で腐敗し、破裂しそうになっているのもよく見るが、この場合は逆に感染するようなタイプのウイルスや菌は死滅していそうではある。
次に嫌なのが、タバコの吸い殻が入っている場合だ。
灰皿代わりに使ったのであろう。ミネラルウォーターのボトルなのに、何故かウーロン茶が入っている、みたいなのがそれだ。
タバコが腐ると、吐きそうなほど臭いのを知っているだろうか?
ウーロン茶色の水の中、タバコの葉がゆらゆらと揺らめき、巻き紙とフィルターがバラバラになって漂う。
そこまでの状態になっても、フィルターは分解しないのだ。
見えているのはまだいい。カフェ・オレなどの飲み残しに吸い殻が入っていると、濁っていて気づかない。蓋を取って中身を出すと、吸い殻があふれ出し、腐敗臭が鼻を衝いて初めてわかる。外流しの排水口は小さいから、すぐに吸い殻で詰まり、臭い水が溜まりだす。
毒づきながら手で吸い殻ごみを回収し、後で死ぬほど手を洗う。
吸い殻は、空き缶に入っていることの方が多いが、空き缶ならいいってわけでもない。吸い殻が出てきにくい分、分別しづらさはペットボトルより上だ。
吸い殻の件についてはまだまだあるので、もっと別項で詳しく書く。
さて。
最もイヤなペットボトルは何か?
それは『大雪の降った年、雪が解けた後に国道沿いに捨ててあるお茶のような色の液体の入ったペットボトル』である。
これ以上、イヤなペットボトルはこの世に存在しない、と断言してもいい。
その正体とは何か? 大雪の降った年。国道はほぼ間違いなく渋滞となる。
渋滞といっても、二時間や三時間ではない。半日から三日以上も渋滞から抜け出せないこともある、という地獄の大渋滞だ。
原因となるのは、たいていトラック。
冬の雪国に来るというのに、スノータイヤもチェーンの用意もせず、天気予報さえも見ずにやって来るバカなトラックドライバーが、たった一台いるだけでこの渋滞は起きる。
平坦な道を走っている間は、多少積もっていても走れるものだ。だが、陸橋などの坂道になると、途端にスリップする。勢いをつけて登り切ってしまえばいいが、それが出来ないで途中で止まると、もう身動きできない。
スリップした状態でアクセルを吹かすと、車体が斜めになり、二車線を塞いでしまう。
こうなると後続は抜くこともできないし、トラックは重すぎて人力で押して何とかすることもできない。
次々に後続が止まり、雪がそこに降り続き、すべての車を埋めていく。そうなってから、原因のトラックをなんとか動かしたところで、もはや誰も身動きとれなくなっている。
これが、大雪の年には必ず起きるわけだ。
国道渋滞の原因究明と防止は、国土交通省の仕事だろうから、俺が口を出すことではない。地元民は渋滞解消するまでの間、国道を避けて生活するしかないわけだが、問題は、渋滞の中にいる人間どもである。
「飲み物も食べ物もない」だの「燃料が無くて寒い」だの、「毛布や食料を自衛隊や地元が配った」だの、「積み荷から食料を提供したトラックがあった」だの、TVの報道で見た方もあるだろう。
それはいい。人命は大事だから、水分も栄養も睡眠も、きちんと取ってもらえばいい。
だが、出る方、つまり小便はどうしているのか。
その辺にしてくれればいいのだが、何を思うのか、ペットボトルに用を足すバカが一定数いるのだ。外でするのが恥ずかしいのか、それとも局部を外気にさらすと寒いと思うのか……しかも、それにきっちりと蓋をして、道に捨てていくド外道が、更に一定数いるわけだ。
それを誰が片付けると思うのか?
ペットボトルが日光で劣化し、分解するまでどれくらいかかると思うのか?
一年や二年では消えないのだ。その間、彼等ド外道の小便は日光で温められ、発酵し続け、あるいは破裂し、あるいは植栽の土に埋もれていく。
こうして小便爆弾は、雪が降るたびに蓄積されていくわけだ。
俺のいくつかある散歩コースのうち、国道まで行くのはひとつだけ、しかも百メートルくらいしか国道沿いを歩かないが、それでさえ、数本片付けたのだから、十数キロの渋滞区間で、何百本、何千本の小便爆弾が設置されているか、考えたくもない。
言っておく。
豪雪に限らず、渋滞に巻き込まれることもあるだろう。
その際に、小便をしたくてたまらなくなることもあるだろう。
状況によっては、外でするわけにもいかず、ペットボトルしか見当たらないこともあるかも知れない。
そのボトルに用を足してはいけない、とは言わない。
したら持って帰れ。
自分の家で処理しろ。
洗って分別して、リサイクルに出せ。
ていうか、小便ボトルでなくとも自分の出したゴミはすべて持って帰れ。
例外はない。