第2話 猿の意外な裏設定と今昔雉の立場

文字数 3,567文字

 ゴンゾウは来れない。つまり、鬼退治を猿雉両名で達成しなければならない。



 鬼ヶ島へと歩を進める。この先の森にセイソンは居た。



 セイソン。猿である。



 彼は鬼退治一味の言わばムードメーカー、そして兼トラブルメーカー。鬼ヶ島へ行くまでに紆余曲折あったのは大概コイツの所為。



 まぁ、その紆余曲折で人助けは出来たので結果オーライなのだが。





 「兎に角、セイソンとの合流を急がねば。」



 セイソンは妖術の類を使う。



分身して鬼を攪乱して、その隙に他の皆で奇襲を仕掛けて鬼退治は行われた。



トラブルメーカーとは言うけれど、キッチリ仕事をする凄腕の猿なのは間違い無い。



 木が陽光を遮り、暗くなってくる。もう来ても良い筈だが、



















































あれぇ?あれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれぇ?



おかしいぞぉ?



 セイソンも居ない。イヤな予感がするナァ。



 そう思っていた次の瞬間。



 『そこに居るのは桃太郎じゃないか。お久しぶり!』



 後ろから声が聞こえた。よっしゃ!フラグは砕け散った!



 「久しぶりセイソン!良かった!お前は無事なん……………のか?」



 『いやぁ、そうでも有ったり無かったり……』



 振り返った瞬間僕の全身が固まった。



 驚きで体が固まった。



 セイソンが目の前に居た。



しかし、居たのは上半身だけだった。



 「Sせせせせせせせせせせせせせせsっせえsっせえいそ、セイソン!どうしたお前!?」



 石化を無理矢理解いて口と身体を動かし、舌ったらずに困惑を示し、有るべきセイソンの下半身を探す。どうして?



 『いやぁ、ごめんよ。前と同じようにお師匠さんを届けてその足で鬼退治しようと思ったんだけど、すこーし手違いがあって……。そっちに行くのが少し難しくなっちゃったんだ。』



 「え?お師匠さん?どういうこと?あと、その身体如何したの?」



 思わず尋ねる。



 『あぁ、これ?妖術の応用で幻術を特定の場所に届けてるの。三次元立体映像ってヤツ。ホログラムって言えば……おっと、時代背景を忘れていた。』



 え?ちょ…、そう言えば『行くのが難しくなった?』って…………。



 『説明すると、実は今俺、西遊記の猿。孫悟空をやってて、一寸牛魔王〆るのに手間取ってそっちに辿り着くのが難しくなっちゃって……。という訳で三人、一人と一匹と一羽で鬼退治をしておいて。ってこと。じゃぁ。』



 セイソンの上半身がそれだけ言って消えた。



 セイソン、孫悟空。斉天大聖孫悟空。セイテンタイ『セイソン』ゴクウ。あぁー成程。そう言う事か…………。



 「時代背景違うだろ!!多分!」



 誰もいない空に突っ込む。それに驚いた野鳥がバサバサと飛び立っていく。



 桃太郎の時代背景やストーリーがもう諸々崩壊してきた。それより先ず不味いのは。



 「一人と一羽で何をしろと?」



 ゴンゾウに続きセイソンまで欠席。





 現在の戦力差



 鬼ヶ島の戦力…鬼300人以上



 桃太郎一味…武装した人間・雉







 ヤバイ、詰みそう。というかほぼ死んでる。死ぬ。



 イヤ!未だ希望はある。



雉のイチイさんは雉界では名の知れた名士。



雉の集団で鬼ヶ島を襲撃すれば未だ、希望はある!



確かイチイさんはこの先の雑木林で会う筈。



「そうと解ればいざ善は急げ!」



 そう言って僕は駆けだした。















 「これはこれは桃太郎さん。お久しぶりですねぇ。」



 イチイさんは道の真ん中に立って僕を待ってくれていたようだ。



 相変わらずいい羽根だ。乱れ無い羽根が整然と彼の身体を覆っている。輝いていると言って過言ではない。



 しかし、気になる事が有った。それは、



「そちらの……女性は?」



 紫色の着物を着た鋭い三白眼の女性が居た。これは前に見たことは全然なかった。誰だ?



 「あぁ……、その事なのですが……。」



 イチイさんの赤い顔が曇る。あれぇ、デジャビュってる気がするぞぉ?



 「どうも、貴方がイチイさんのおっしゃっていた桃太郎さんと言う方ですか?私、国鳥保護の会の会長をしております彼岸花と申します。」



 国鳥保護の会ぃ?なんだそりゃ?



「彼、イチイさんをあなたは鬼退治に連れて行くとおっしゃっていますよね?」



敵意を混ぜて威嚇するようにこちらに問う。雲行きがどんどん怪しくなってくる。



「えぇ、吉備団子を挙げる代わりに鬼ヶ島迄鬼退治をお願いし」



 「残念ながら拒否させて頂きます。」



 こちらの話を聞く気が無い。それは解った。



 「いきなり来てどういう事でしょうか?というか、貴女はイチイさんではないでしょう?私は彼を鬼ヶ島に誘っているのです。貴女とは関係の無いお話で」



 「関係大有りです。言いませんでした?私は国鳥保護の会会長です。我々の活動内容は日本国の国鳥の保護。つまり雉の保護です。日本の象徴の鳥たる雉を保護するのが我々の役目です。国鳥の雉が鬼ヶ島などと言う鬼の巣窟、危険極まりないところへ連れて行かれそうだというのに無視する訳には参りません。そもそも、貴方は吉備団子で雉さんに…………」



 「すいません、僕は彼と話をしているので」



 「未だ私が話しているでしょう!!」



 僕が遮断するとキンキン声で喚き散らした。



 人の話を遮断して自分の話を遮断されるとキレる。予想以上にメンドイ奴だ。



 「解るように端的に言いますと、貴方の行いは不当であり、雉を鬼ヶ島へ連れて行くことは認められません。」



 「あの、すいません。こちらの話を聞いてました?僕と彼が行くか行かないかは決める事で他人が横からどうこう言う事では」



 「ダーカーラ!!ナンドイッタラワカルノ!!」



 オイオイオイオイ、イチイさん。なんでこんなの連れてきたの?



 アイコンタクトでイチイさんに合図する。彼は鬼ヶ島へ行きたくないのか?ならば別にいいけど………。



 も・う・し・わ・け・な・い・お・れ・も・い・き・た・か・つ・た・の・だ・が・こ・い・つ・が・な・か・ま・を・ほ・ご・し・て・く・れ・て・る・も・の・で・い・く・に・い・け・な・い



 イチイさんはガミガミ女に解らないように嘴パクでそう伝えてきた。



 成程な。イチイさんもイチイさんで雉の名士としての立場がある訳だ。



 自分『達』を守ろうとしてくれる相手をないがしろにして鬼退治をする訳にはいかない。という事だ。



 「あぁーー!分かった分かった。俺が悪かった悪かった。はい、ごめんなさいね。断念しますよ。こんなところまで御足を御運びさせて申し訳ございませんでした。」



 そんな適当な謝罪を聞いて、どう考えたって上の謝罪は適当極まりないのにも関わらず。



 「そう、分かってくれましたか。分かれば良いのです。」



 なんて勝ち誇ったような面をしていた。何だ?イヤミって方言だった?全国共通の概念では無かった?



 そんな女の後ろからイチイさんが又嘴パクで俺に語り掛ける。





 ほ・ん・と・う・に・ご・め・ん・な・さ・い・あ・な・た・と・ま・た・た・び・が・し・た・か・つ・た





 「気持ちで十分だ。イチイさん。僕は僕、イチイさんはイチイさんで闘う相手は違うが、精々抗っていこうぜ。じゃぁ。」



 僕はそういってガミガミ女とイチイさんを背に鬼ヶ島へ向かっていった。



































 現在の戦力差



 鬼ヶ島の戦力…鬼300人以上



 桃太郎一味…武装した人間 のみ




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