3-12. ITエンジニア採用面接
文字数 2,257文字
翌日、零のところにGmailのアドレスからメールが届く。zoom面接の案内だった。日程をいくつかある中から選んで返信すると、すぐに確定の返事が届く。いたずらにしては手が込み過ぎていると思い、零はドキドキしながら面接の時間を待った。
面接時間がやってきた。パソコンにはパーティールームのテーブルに並ぶ四人と零の映像が並ぶ。
「よ、よろしくお願いします……」
インカムをつけた零は緊張しながら切り出す。
「私は採用担当のオディーヌです。今回はご応募ありがとうございました。GitHub見させていただきましたが、素晴らしい技術力ですね」
オディーヌはニコッと美しい笑顔を見せた。
「あ、いや、それほどでも……」
零は謙遜する。
「それでは志望動機について教えてください」
「異世界に興味がありまして、もし動画みたいなところがあるなら行ってみたいなと……。それから、新たな国づくり、とてもやりがいがありそうだったので」
「あの動画はあるがままをiPhoneで撮っただけです。現実ですよ」
「では、異世界は本当にあると……?」
「あるというか、私たちからしたら日本が異世界なんですけどね」
苦笑するオディーヌ。
「あ、そ、そうですよね」
「ちょっと技術的な質問いい?」
シアンが横から口を出す。
「は、はい」
シアンはパソコンを手元に持ってくると、GitHubの画面を共有し、そこからソースコードを一つ選んで拡大した。
「ここの処理だけど、DB叩くならこう書いた方が正しくない?」
そう言ってシアンはチャットにソースコードを打ち込んだ。
「あっ! ……。でも、このテーブルはこうクエリかけた方が、出てくるデータの順番が都合よくなるんです」
「ふーん、なるほどね……」
シアンはそう言ってうなずき、パソコンを元の位置に戻した。
「何か質問はありますか?」
オディーヌが聞く。
「設立準備委員会というのは何人いるんですか?」
「これで全部じゃ」
レヴィアが答える。
「え? 見たところ皆さんお若いようですが、この四名だけで国づくりを?」
困惑する零。画面に映っている四名はどう見ても全員十代だった。
「街の様子は動画で見たじゃろ? あれ何日で作ったと思う?」
「何日って……四人ですよね? 何年かかっても無理……そうですが……」
「一日じゃ」
「へっ!?」
「一日で街を作れるメンバーなんじゃよ」
レヴィアはドヤ顔で言った。
「そ、それは感服しました……」
零は圧倒される。林立するタワマンに巨大スタジアム、一体どうやったら一日で作れるのか? 本当だとしたら異世界とは常識の通じないすさまじい所……。零は背筋がゾッとした。
「メンバーは豪華ですよ」
オディーヌはニッコリと笑って言った。
「あ、治安とかは大丈夫ですか? 魔物が出たり盗賊が出たりは……」
「治安は大丈夫。うちの軍事警察力は宇宙一、米軍を瞬殺できるくらい最強じゃ」
レヴィアは目をつぶり、ちょっと気が重そうに言った。
「米軍を瞬殺!? この四人で……ってことですよ……ね?」
「実質一人じゃがな」
レヴィアは淡々と言い、シアンは、
「きゃははは!」
と、笑った。
零はこの荒唐無稽な話をどう考えたらいいのか悩む。とは言え、ウソを言っているような感じではない。ドラゴンが火を噴いていたが、あの不可解なエネルギーを使えば本当に米軍を瞬殺できるかもしれない……。でもドラゴンが米軍を? それはまさにファンタジーの世界の話だった。
「他にご質問は?」
オディーヌが聞く。
「えーと……。一度参加したら異世界に行きっぱなしですか?」
「基本そうなります。ただ、止むに止まれぬ理由があったらその時は帰れます。異世界の事は一切口外してはなりませんが」
「守秘義務……ですね」
「そうです」
「職場はどこになりますか? その部屋ですか?」
「あー、どうですかね? ここでもいいし、タワマンの好きな部屋でもいいし……」
「オフィス使おうよ!」
レオが言った。
「え? あぁ、あのビルもう使えますか?」
オディーヌがシアンに聞く。
「ん? ネットさえつなげればOK。レヴィアよろしく!」
と、シアンはレヴィアに振る。
「わ、わかりました……」
レヴィアは渋い顔でうなずいた。
「ということで、動画で出てた超高層ビルのオフィスになりました」
オディーヌはニコッと笑って言った。
「そ、それは凄いですね。分かりました。ありがとうございます」
零は頭を下げる。
「どうですか? うちで働いてくれますか?」
オディーヌは少し上目遣いで瞳をキラッと光らせて言った。
零はその美しいまでの鋭い視線にゴクッとツバを飲む。この答一つで採否が決まる事を本能的に感じたのだった。ここですぐに『はい』と言えなければ不採用だろう。しかし……、異世界など地球の常識が全く通じないはず。どんなリスクがあるか分からない。命の危険だってあるだろう。
零はうつむいて逡巡 する。夢見ていた世界に飛び込むなら今この瞬間しかない。全てを捨て、命の危険を冒してでも行くか……。零はグッと奥歯をかみしめた。
ふうっと大きく息をつくと、零は腹を決め、バッと顔を上げる。そして、
「ぜひ働かせてください! 必ずやご満足いただく結果をお見せいたします!」
そう、明るい顔で言った。
オディーヌはニコッと笑うと、
「結果はまたメールでお知らせします。本日はありがとうございました」
そう言って丁寧に頭を下げる。
果たして、翌日零のところに採用通知メールが届いたのだった。
こうして日本のITエンジニアがジョインする事になった。
面接時間がやってきた。パソコンにはパーティールームのテーブルに並ぶ四人と零の映像が並ぶ。
「よ、よろしくお願いします……」
インカムをつけた零は緊張しながら切り出す。
「私は採用担当のオディーヌです。今回はご応募ありがとうございました。GitHub見させていただきましたが、素晴らしい技術力ですね」
オディーヌはニコッと美しい笑顔を見せた。
「あ、いや、それほどでも……」
零は謙遜する。
「それでは志望動機について教えてください」
「異世界に興味がありまして、もし動画みたいなところがあるなら行ってみたいなと……。それから、新たな国づくり、とてもやりがいがありそうだったので」
「あの動画はあるがままをiPhoneで撮っただけです。現実ですよ」
「では、異世界は本当にあると……?」
「あるというか、私たちからしたら日本が異世界なんですけどね」
苦笑するオディーヌ。
「あ、そ、そうですよね」
「ちょっと技術的な質問いい?」
シアンが横から口を出す。
「は、はい」
シアンはパソコンを手元に持ってくると、GitHubの画面を共有し、そこからソースコードを一つ選んで拡大した。
「ここの処理だけど、DB叩くならこう書いた方が正しくない?」
そう言ってシアンはチャットにソースコードを打ち込んだ。
「あっ! ……。でも、このテーブルはこうクエリかけた方が、出てくるデータの順番が都合よくなるんです」
「ふーん、なるほどね……」
シアンはそう言ってうなずき、パソコンを元の位置に戻した。
「何か質問はありますか?」
オディーヌが聞く。
「設立準備委員会というのは何人いるんですか?」
「これで全部じゃ」
レヴィアが答える。
「え? 見たところ皆さんお若いようですが、この四名だけで国づくりを?」
困惑する零。画面に映っている四名はどう見ても全員十代だった。
「街の様子は動画で見たじゃろ? あれ何日で作ったと思う?」
「何日って……四人ですよね? 何年かかっても無理……そうですが……」
「一日じゃ」
「へっ!?」
「一日で街を作れるメンバーなんじゃよ」
レヴィアはドヤ顔で言った。
「そ、それは感服しました……」
零は圧倒される。林立するタワマンに巨大スタジアム、一体どうやったら一日で作れるのか? 本当だとしたら異世界とは常識の通じないすさまじい所……。零は背筋がゾッとした。
「メンバーは豪華ですよ」
オディーヌはニッコリと笑って言った。
「あ、治安とかは大丈夫ですか? 魔物が出たり盗賊が出たりは……」
「治安は大丈夫。うちの軍事警察力は宇宙一、米軍を瞬殺できるくらい最強じゃ」
レヴィアは目をつぶり、ちょっと気が重そうに言った。
「米軍を瞬殺!? この四人で……ってことですよ……ね?」
「実質一人じゃがな」
レヴィアは淡々と言い、シアンは、
「きゃははは!」
と、笑った。
零はこの荒唐無稽な話をどう考えたらいいのか悩む。とは言え、ウソを言っているような感じではない。ドラゴンが火を噴いていたが、あの不可解なエネルギーを使えば本当に米軍を瞬殺できるかもしれない……。でもドラゴンが米軍を? それはまさにファンタジーの世界の話だった。
「他にご質問は?」
オディーヌが聞く。
「えーと……。一度参加したら異世界に行きっぱなしですか?」
「基本そうなります。ただ、止むに止まれぬ理由があったらその時は帰れます。異世界の事は一切口外してはなりませんが」
「守秘義務……ですね」
「そうです」
「職場はどこになりますか? その部屋ですか?」
「あー、どうですかね? ここでもいいし、タワマンの好きな部屋でもいいし……」
「オフィス使おうよ!」
レオが言った。
「え? あぁ、あのビルもう使えますか?」
オディーヌがシアンに聞く。
「ん? ネットさえつなげればOK。レヴィアよろしく!」
と、シアンはレヴィアに振る。
「わ、わかりました……」
レヴィアは渋い顔でうなずいた。
「ということで、動画で出てた超高層ビルのオフィスになりました」
オディーヌはニコッと笑って言った。
「そ、それは凄いですね。分かりました。ありがとうございます」
零は頭を下げる。
「どうですか? うちで働いてくれますか?」
オディーヌは少し上目遣いで瞳をキラッと光らせて言った。
零はその美しいまでの鋭い視線にゴクッとツバを飲む。この答一つで採否が決まる事を本能的に感じたのだった。ここですぐに『はい』と言えなければ不採用だろう。しかし……、異世界など地球の常識が全く通じないはず。どんなリスクがあるか分からない。命の危険だってあるだろう。
零はうつむいて
ふうっと大きく息をつくと、零は腹を決め、バッと顔を上げる。そして、
「ぜひ働かせてください! 必ずやご満足いただく結果をお見せいたします!」
そう、明るい顔で言った。
オディーヌはニコッと笑うと、
「結果はまたメールでお知らせします。本日はありがとうございました」
そう言って丁寧に頭を下げる。
果たして、翌日零のところに採用通知メールが届いたのだった。
こうして日本のITエンジニアがジョインする事になった。