第15話 認知行動療法、とは?(後)
文字数 2,239文字
引き続き認知行動療法について。
前話では認知の歪みについて振り返ってみましたが、ここではもっと実践的な『マイ・ルール』についてのお話です。
自分にとっても目から鱗と言いますか、かなりハッとさせられるカリキュラムでした。早速ですが、以下、具体的に。
―――
②マイ・ルールを知ろう
人にはそれぞれ自覚していないマイ・ルールがある、というはなし。
例えば『待ち合わせの時間は守らなければならない』というルールとか。
これはルールというか、社会通念上のお約束・道徳のようにも思えますが、実際は人によって受け取り方が様々です。遅刻してなんら悪びれない人もいれば、1秒でも遅れてはいけないと考える人もいます。この違いは何なのか?
僕の場合、まさにルール通り時間は絶対に守らなければならない! と考えていました。5分前到着は当たり前。そのために準備するのも当然のこと。それは『自分にとってのルール』ではなく『人類共通のルール』みたく考えていたのです。
なので、時間にルーズ(しかも悪びれもしない)な人に会うと結構イライラしていました。こっちは努力して時間を守っているのに、みたいな。
まずはこのルールが『マイ・ルール』だと気付くことが大事……なのですが、我ながら結構難しかったです。あくまでルールは自分のものであって、他人も同じ認識だとは限らないというポイントが。僕の場合はカリキュラムを通じ、心理療法士さんに相談しながら掘り下げていったのですが、やはり難しいものでした。
なんとかルールが人類共通のものではないと自覚できたなら、次はメリット・デメリットを考えてみる。
例えば時間守りルールのメリットと言うと、
・人から信頼される
・予定を進めやすい
とかでしょうか。
次いでデメリットを考えるのですが、これがまた難しい。なにせ人類共通ルールだと思っていたのでデメリットとか考えたこともない。なのでこれも心理療法士さんに相談しながら進めます。例えば、
・時間にルーズな人がいるとストレスを感じる
・自分が時間を守るために多大な労力を掛ける
・自分が時間を守れないと自己嫌悪に陥る
3つ挙げてみましたが、これらは全て僕にとってのストレス要因になっている。些細なことかもわからないけれど、自分にとっては結構な大ごと。特に2つ目と3つ目が。
そもそも、小さい頃の僕は遅刻魔だったのです。1時間の遅刻は当たり前。守ろうとは思うのですが、なんだか段取りができず遅刻を繰り返す日々。さすがにこれはマズイ、友達無くすと思って色々と努力……いわゆる『過剰な努力』によってどうにか時間を守れるようになりはしましたが、故に余計ストレスを感じるのかも知れません。
ここまで考えてみて、このルールってどうなんだろう? ひょっとして自分を苦しめる結果になっていないだろうか……?
そこまで気付いたなら非常にイイ感じ。
そして今度はブラッシュアップを掛ける。ルールのメリットも活かしつつ、自分を苦しめない程度に改善を試みる。例えば、
旧:時間は守らなければならない
↓
新:重要な約束は時間厳守するが、そうでない場合は少し間に合わなくても良い
友人と映画館に行く約束なら、少し余裕を持った時間設定をする。そうすれば多少遅れても映画自体は観に行くことが出来る。
友人達との飲み会などであれば(自分が主役とかでなければ)少し遅れても問題ない、など。
そうやって良い感じにルールを改善出来れば、自分を苦しめることも、人に辛くあたることも減らせるのではないか、と。
―――
リハビリ真っただ中にある僕にとって、こういった取り組みは一人で出来るものではなく、やはりリワークの皆さん、そして療法士さんの手助けを得て初めて可能なものでした。
抑えきれない苛立ち、理不尽な仕打ち、他者に理解されない怒り……そんなものが込み上がって来たとき、これからも自分自身に問いかけたいと思います。
「それって人類共通ルール?」
ここまで振り返ってみた認知の歪み、それにマイ・ルール、あと幾つかの授業で共通していたのは『自分の取扱説明書を作ろう』というものでした。
自分自身のことは、実は全く分かっていない。
他人のことはよく見えるのに、自身の中にあるルールや拘り、ましてや自分を苦しめている決まり事など、そうそう簡単には見つからないもの。なるほどなぁ、と腑に落ちることが沢山感じられました。
リワーク終了後、そんな感想を尾長先生に話してみたのですが、
「トリセツは一回作ったら終わりじゃないよ」
との返答。
「と、言いますと?」
「年齢、体調、気候、職場……色々な影響を受けて自分自身っていうのは変わっていくからね。いま作ったトリセツが、1年後も有効かは分からないでしょ?」
「なるほどぉ」
「ルールをブラッシュアップして終わり、じゃなくて、常にブラッシュアップを続けないと。職場に戻ってからも常に自分はどうなのか、振り返り続けないとね」
うむむ、やはり奥が深い。
リワークで色々と手伝って貰いながら作った自分のトリセツは、あくまでキッカケの一つ。職場復帰を果たしたなら、今度は自分でブラッシュアップをかけ続けなければならない。
難しいとは思うけれど、これも二度とダウンしないためのツール。そう心に刻んだカバネでした。
========
※参考文献
・心がスッと軽くなる認知行動療法ノート~自分でできる27のプチレッスン~
ナツメ社発行
監修:福井至氏 貝谷久宜氏
前話では認知の歪みについて振り返ってみましたが、ここではもっと実践的な『マイ・ルール』についてのお話です。
自分にとっても目から鱗と言いますか、かなりハッとさせられるカリキュラムでした。早速ですが、以下、具体的に。
―――
②マイ・ルールを知ろう
人にはそれぞれ自覚していないマイ・ルールがある、というはなし。
例えば『待ち合わせの時間は守らなければならない』というルールとか。
これはルールというか、社会通念上のお約束・道徳のようにも思えますが、実際は人によって受け取り方が様々です。遅刻してなんら悪びれない人もいれば、1秒でも遅れてはいけないと考える人もいます。この違いは何なのか?
僕の場合、まさにルール通り時間は絶対に守らなければならない! と考えていました。5分前到着は当たり前。そのために準備するのも当然のこと。それは『自分にとってのルール』ではなく『人類共通のルール』みたく考えていたのです。
なので、時間にルーズ(しかも悪びれもしない)な人に会うと結構イライラしていました。こっちは努力して時間を守っているのに、みたいな。
まずはこのルールが『マイ・ルール』だと気付くことが大事……なのですが、我ながら結構難しかったです。あくまでルールは自分のものであって、他人も同じ認識だとは限らないというポイントが。僕の場合はカリキュラムを通じ、心理療法士さんに相談しながら掘り下げていったのですが、やはり難しいものでした。
なんとかルールが人類共通のものではないと自覚できたなら、次はメリット・デメリットを考えてみる。
例えば時間守りルールのメリットと言うと、
・人から信頼される
・予定を進めやすい
とかでしょうか。
次いでデメリットを考えるのですが、これがまた難しい。なにせ人類共通ルールだと思っていたのでデメリットとか考えたこともない。なのでこれも心理療法士さんに相談しながら進めます。例えば、
・時間にルーズな人がいるとストレスを感じる
・自分が時間を守るために多大な労力を掛ける
・自分が時間を守れないと自己嫌悪に陥る
3つ挙げてみましたが、これらは全て僕にとってのストレス要因になっている。些細なことかもわからないけれど、自分にとっては結構な大ごと。特に2つ目と3つ目が。
そもそも、小さい頃の僕は遅刻魔だったのです。1時間の遅刻は当たり前。守ろうとは思うのですが、なんだか段取りができず遅刻を繰り返す日々。さすがにこれはマズイ、友達無くすと思って色々と努力……いわゆる『過剰な努力』によってどうにか時間を守れるようになりはしましたが、故に余計ストレスを感じるのかも知れません。
ここまで考えてみて、このルールってどうなんだろう? ひょっとして自分を苦しめる結果になっていないだろうか……?
そこまで気付いたなら非常にイイ感じ。
そして今度はブラッシュアップを掛ける。ルールのメリットも活かしつつ、自分を苦しめない程度に改善を試みる。例えば、
旧:時間は守らなければならない
↓
新:重要な約束は時間厳守するが、そうでない場合は少し間に合わなくても良い
友人と映画館に行く約束なら、少し余裕を持った時間設定をする。そうすれば多少遅れても映画自体は観に行くことが出来る。
友人達との飲み会などであれば(自分が主役とかでなければ)少し遅れても問題ない、など。
そうやって良い感じにルールを改善出来れば、自分を苦しめることも、人に辛くあたることも減らせるのではないか、と。
―――
リハビリ真っただ中にある僕にとって、こういった取り組みは一人で出来るものではなく、やはりリワークの皆さん、そして療法士さんの手助けを得て初めて可能なものでした。
抑えきれない苛立ち、理不尽な仕打ち、他者に理解されない怒り……そんなものが込み上がって来たとき、これからも自分自身に問いかけたいと思います。
「それって人類共通ルール?」
ここまで振り返ってみた認知の歪み、それにマイ・ルール、あと幾つかの授業で共通していたのは『自分の取扱説明書を作ろう』というものでした。
自分自身のことは、実は全く分かっていない。
他人のことはよく見えるのに、自身の中にあるルールや拘り、ましてや自分を苦しめている決まり事など、そうそう簡単には見つからないもの。なるほどなぁ、と腑に落ちることが沢山感じられました。
リワーク終了後、そんな感想を尾長先生に話してみたのですが、
「トリセツは一回作ったら終わりじゃないよ」
との返答。
「と、言いますと?」
「年齢、体調、気候、職場……色々な影響を受けて自分自身っていうのは変わっていくからね。いま作ったトリセツが、1年後も有効かは分からないでしょ?」
「なるほどぉ」
「ルールをブラッシュアップして終わり、じゃなくて、常にブラッシュアップを続けないと。職場に戻ってからも常に自分はどうなのか、振り返り続けないとね」
うむむ、やはり奥が深い。
リワークで色々と手伝って貰いながら作った自分のトリセツは、あくまでキッカケの一つ。職場復帰を果たしたなら、今度は自分でブラッシュアップをかけ続けなければならない。
難しいとは思うけれど、これも二度とダウンしないためのツール。そう心に刻んだカバネでした。
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※参考文献
・心がスッと軽くなる認知行動療法ノート~自分でできる27のプチレッスン~
ナツメ社発行
監修:福井至氏 貝谷久宜氏