コンプライアンスとしてのコスプレ
文字数 1,965文字
姐さんの命令でドンキに来たはいいけれど。
警備員の服、品切れみたいね……。
んー、ポリスの服でいいんじゃね？ 大体似てるっしょ。
これパーティーグッズじゃん。ミニスカポリスしかないけど、男はどーすんの。
男は学ランでよくね？
知ってるか、学ランって軍服がモデルなんだぜ。軍隊と警察似てるし、いけるいける。
お前物知りだな。じゃあそれで。
……というようなわけで、子分はミニスカポリスと学ランを買ってきたようだ。
これで大丈夫かなあ、ピカール？
まあ、大丈夫じゃね。そういう制服の会社と思ってもらえれば……。
おっし。そんじゃ行くかぁー！！
うおーーー！
アイアイーー！
イーヤッホーゥ！！
いやいや駄目駄目、雄叫びを上げちゃ駄目。
きっちり並んで、下請け業者のふりをして行きます。
っつーわけだ、クールに行くぜ！
せいれ〜つ！
前へー倣え！
ビシィ！
直れ！
シャキィン
おーし、これでいいな。
ぜんたーい進めっ。
ザッ ザッ ザッ
お、輸送部隊が来たな。あっちの馬車は……たぶんボゲ判事だな。
よし、紛れ込んでいこう。
スヤ……。
……ルイズどうしたの？
昨晩、寝付きがお悪かったらしく。私がおぶって参ります。
はぁ。頼みます。
スヤヤヤ……。
（ま、一晩の特訓では何ともなりませんけれど。
継続は力ですよ、姫様……。）
ザッ ザッ ザッ ザッ
ぜんた～～～い止まれっ。
イチ ニッ。
おかしな連中が来たな。
おい、何者だ！
うぇっへっへっへ、怪しいもんじゃございやせん。我々は警備引っ越しセンターでやんす。
警備引っ越しセンター？ 一体なんだそいつは。
へぇ、自宅警備から荷下ろし等の軽作業までお任せいただける、地元密着型のマルチ人材サービスでやす。
警備と荷下ろしのサービスが、なぜミニスカポリスの恰好なんだ。
お坊さんのサポート役やなんかも承っておりやす。
はっ？
法師（ホシ）をアゲる。
……………………。
男は学ラン姿のようだが……。
こいつら才能がありやがるんで、これ着て隠さなきゃいけねぇって。能ある鷹はやっぱねぇ。
…………爪 鋭利（つめえり）？
いけねぇ、言われちまった。
あほか！！！
怪しい奴らめ！！ お前ら、判事様の荷物を狙う盗賊じゃねえだろうな。
そそそそそんな訳ないっすよ！？ あたしら、荷運びの手伝いに呼ばれて来ただけでやんすよ！？
誰にだ！？ いや、そんなことは判事様に確認すれば分かること。
おい伝令、ボゲ判事にちょっと伝えてきてくれ！ 俺はこいつらを見張っておく！
分かりました。
アワワワー！
……ボゲ様の馬車はあれだな。
ボゲ様、ボゲ様。副隊長から伝令を言付かりました。
うん？ もう合流だというのに、なぜ副隊長が直接来ないのですか。
それが、先ほど怪しい一団が現れまして。
怪しい一団とは？
男女に分かれて、それぞれ制服を着こんだ連中です。荷下ろしの手伝い業者だと言ってます。
ほう、男女に分かれて制服とは。なかなか殊勝な社風ですこと！
ボゲ様が手配されたのですか？
いえ。でも、信用できそうな業者ですわね。会社というものは基本、男女を隔離すべきですからね。
男女は一所にあれば、それは混浴と同じ。どうあっても淫行にふけるものですわ。たとい行状を厳しく慎んだとしても、無意識のうちに互いを誘惑し、惑わしあって、魂を消耗することになります。仕事など捗るものではありません。
そうなる前に、男女を分けてしまえば何の問題もないのです。制服によって統制できればモアベター。利益追求の組織として当然のコンプライアンスと言えるでしょう。
はぁ……。じゃ、そいつらに任せていいですかね。
ええ、ちょうど荷下ろしの人員が欲しかったところですわ。ギャラの交渉は副隊長に一任します。
了解です。
………………とのことでした、副隊長。こいつらに任せろと。
マジか、こんな不審な連中に……。
いや、判事様の手配なら是非もない。
おいミニスカ、疑って悪かった。モールの門前に車を付けるから、作業を頼む。
モール内の地図と荷物の配置図を共有しよう。
しめた！
どーんと任せてくんな、うぇっへっへっへ。
（よっしゃよっしゃ、では台車に積むふりをしてなんぼか隠してしまおう）
（オッケ〜）
（あとは……。シニストラリが書いてた「雄牛の皮」像を探さなきゃな。目立たないように）
ドニエさん、ルイズをこっちに。
…………。
実にいいタイミングでしたわ。休日着になったから、モール側の人員があまり確保できなくて。
……何か言いたそうですわね、ホプキンス。
少々タイミングが良すぎるやも。
服装の正しいものは心も正しいものですわ。あなたのように。
……でも、そうね。一応、自分の目で確かめておこうかしら。
よっこら、ほいさ。
そいきたホイ。
わっしょいわっしょいわっしょいわっしょい！
本当に学ランなのねえ。規律正しい服装に統制のとれた労働、素晴らしい……。
やはり、信用できる連中のようですわ。
…………。
