第16話:2002年の世界の出来事

文字数 1,612文字

 政治とカネをめぐるスキャンダルで、有力国会議員の辞職が相次いだ。2002年3月に社民党の辻元清美氏、4月に加藤紘一元自民党幹事長、同5月に井上裕前参院議長が、辞職。田中真紀子前外相も秘書給与流用疑惑で、同8月に辞職に追い込まれた。

 10月10日スウェーデン王立アカデミーは、2001年度のノーベル化学賞を有機合成化学分野の野依良治名古屋大大学院教授ら3人に贈ると発表した。化学分野では、白川英樹筑波大名誉教授に続く、2年連続の受賞。福井謙一京大名誉教授「故人」と合わせ日本人の化学賞受賞は3人目で、ノーベル賞全体では日本人の受賞は10人となった。

 米国では、2002年7月、昨年、大型倒産したのエンロンに続き、2002年7月に全米第2位の長距離通信会社だったワールドコムが不正会計処理に端を発して倒産。その負債総額は前年のエンロン事件を上回る約410億ドルで、アメリカ史上最大の倒産劇となった。

 ワールドコムは、1990年代後半のITバブルの崩壊やスプリント・ネクステ「携帯電話事業者」との合併取り消しなどによって悪化した経営状態を粉飾決算で偽っていた。その手法は、本来営業費用に計上すべき回線接続料などの費用を設備投資として資産計上するという単純なものだ。しかしエンロンと同様、監査法人は、その不正を見逃した。

 エンロンとワールドコムの監査を行っていたのは、いずれも、大手会計事務所のアーサー・アンダーセン。同社はエンロン、ワールドコム両社の粉飾決算を手助けしたという事で、一気に信頼を失い解散。アーサー・アンダーセンは、会社の倒産だけでなく、司法当局により経営陣の刑事責任の追及も行われた。

 CEO「最高経営責任者」のエバーズ氏は、詐欺や虚偽の財務諸表の提出などの罪に問われ、禁固25年の実刑判決を受けた。2001年のエンロン事件と翌年に「米国史上最大の倒産」として世界に衝撃を与えたワールドコム事件と共にアメリカの株式市場全体に対する信頼を大きく低下させた。アメリカでは、財務報告の信頼性を取り戻すことが急務となった。

 そのため、この事件を機にサーベンス・オクスレー法いわゆる「SOX法」の成立に向け動き出した。しかしエンロンが、簿外債務を含めると400億ドル以上、ワールドコムの負債総額は、410億ドル、2社合計820億ドル、1ドル125円で換算すると10兆2500億円と言う、天文学的な金額である。

 一方、日本では、小泉純一郎首相は、2002年9月、日本の首相として初めて北朝鮮を訪問、平壌で金正日総書記と会談した。金総書記は日本人拉致を謝罪。また北朝鮮側は「8人死亡・5人生存」との調査結果を示した。同10月には拉致被害者5人が帰国。その小泉首相の外交交渉は、今までにない、素晴らし政治力、交渉力と、褒めなければならない。

 一方、日本経済は、相変わらず不調で。デフレ不況の進行に伴い、日経平均株価は2002年10月3日に、終値でバブル崩壊後の最安値を更新し、1983年以来19年ぶりに9000円を割り込んだ。2003年が、明けた。2月1日、宇宙飛行を終えて帰還途中だった米スペースシャトル「コロンビア」が、テキサス州上空で空中分解する事故が発生。

 搭乗していた7人全員が死亡した。事故調査委員会は8月、外部燃料タンクから落下した断熱材の一部が左翼前縁部を直撃した。それにより損傷を与えたことが事故につながったとする最終報告書を公表した。アメリカ、イギリス軍は、3月20日、国際社会が求めていた大量破壊兵器の査察、廃棄に応じないとして、イラクに対する軍事作戦を開始した。

 圧倒的な軍事力を背景に戦闘は早期に終結。フセイン政権は崩壊し、ブッシュ米大統領は5月1日、事実上の戦闘終結宣言を行った。米英主導の占領が続く中、イラク人による統治評議会も発足し、12月13日には逃亡を続けていたフセイン元大統領が拘束された。
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