第4話 雑念ラジオ②~少しくらい察してよ、ずっと男の目で見ているよ~
文字数 1,199文字
あの日俺は見た。照井が村瀬さんの部屋から出てくるところを。
「ありがとう、助かった」
「このくらいお安いご用。じゃあ、傘借りていく。あとで部屋の前に置いておくから」
「いつでもいいから」
俺は照井が去ったのを見届けて、村瀬さんの部屋のインターホンを押していた。
「成田君、どうしたの?」
村瀬さんがドアを開けた。俺は強引に中に入り玄関スペースで村瀬さんを問いただした。
「さっき、照井となにをしていたの?」
「え? 天井近くのデッドスペースに収納棚を作りたくて、ちょっと手伝ってもらっただけよ」
「俺に頼んでよ! 照井と二人きりなんて危ないよ!」
「やだ、成田君考えすぎ。ただの知り合いよ、なにも起きないから」
そう言って村瀬さんは無邪気な笑顔を見せた。
今だって村瀬さんはうかつすぎる。なんの警戒心も無くドアを開けて、俺に中に入り込まれているじゃないか。
村瀬さんの部屋で二人きり、こんなチャンスはもうなかなか訪れないだろう。
俺は焦って、気がついたら村瀬さんを抱きしめていた。俺の背は百川よりは低いけど、村瀬さんよりはずっと高くなった。
「成田君?」
俺はそのあとどうしたらいいのかわからず、どんどん強く力を込めてしまった。
「苦しい、離して?」
「やだ」
まるでわからず屋の駄々っ子だ。
村瀬さんが怯えた目で見上げて、俺はハッとして腕をほどいた。
「どうしたの? 成田君。何かあったの?」
村瀬さんは、俺がずっと村瀬さんのことを好きだっていうことにまったく気がついてくれない。少しくらい察してよ。俺、ずっと男の目で見ているよ。
「俺、ずっと村瀬さんのことが好きなんだ。だから照井なんかとチャラチャラしないで」
「成田君、少し冷静になって?」
「服部とも最近距離が近くなってきている。あいつ、急に間合いを詰めてくるタイプだから気をつけてよ」
「服部君は開ちゃんが懐いているから、近づかないわ。無用なトラブルは避けたいもの……急に間合いを詰めてくるのは成田君でしょう」
村瀬さんはそう言うと、困ったように微笑んだ。
「俺のことバカにしている。男だと思っていないの?」
「そんなことないけど」
「俺、頭悪いし、あんな親父見られているし、母さんもあんなだし、俺なんか論外かな」
「親は関係ないでしょ、もう、どうしたら落ち着いてくれるの?」
「キスして」
「本気なの?」
村瀬さんは眉をしかめた。俺はかまわず、乱暴に村瀬さんの唇に自分の唇を重ねた。
「気が済んだ? もう帰って」
翌週、食堂で会ったとき俺は謝った。
「この間はすみませんでした。でも本気です」
みんなのおしゃべりや笑い声が波のようにさざめく中、さり気なく言葉を潜り込ませた。
この言葉に反応したのは、村瀬さんと近くにいた田中宮司、そして小関さんだけだった。
村瀬さんはもう今までのように話しかけてくれなくなった。
俺を警戒して態度が硬くなった。仕方がない、俺が悪い。でも俺は後悔していない。
「ありがとう、助かった」
「このくらいお安いご用。じゃあ、傘借りていく。あとで部屋の前に置いておくから」
「いつでもいいから」
俺は照井が去ったのを見届けて、村瀬さんの部屋のインターホンを押していた。
「成田君、どうしたの?」
村瀬さんがドアを開けた。俺は強引に中に入り玄関スペースで村瀬さんを問いただした。
「さっき、照井となにをしていたの?」
「え? 天井近くのデッドスペースに収納棚を作りたくて、ちょっと手伝ってもらっただけよ」
「俺に頼んでよ! 照井と二人きりなんて危ないよ!」
「やだ、成田君考えすぎ。ただの知り合いよ、なにも起きないから」
そう言って村瀬さんは無邪気な笑顔を見せた。
今だって村瀬さんはうかつすぎる。なんの警戒心も無くドアを開けて、俺に中に入り込まれているじゃないか。
村瀬さんの部屋で二人きり、こんなチャンスはもうなかなか訪れないだろう。
俺は焦って、気がついたら村瀬さんを抱きしめていた。俺の背は百川よりは低いけど、村瀬さんよりはずっと高くなった。
「成田君?」
俺はそのあとどうしたらいいのかわからず、どんどん強く力を込めてしまった。
「苦しい、離して?」
「やだ」
まるでわからず屋の駄々っ子だ。
村瀬さんが怯えた目で見上げて、俺はハッとして腕をほどいた。
「どうしたの? 成田君。何かあったの?」
村瀬さんは、俺がずっと村瀬さんのことを好きだっていうことにまったく気がついてくれない。少しくらい察してよ。俺、ずっと男の目で見ているよ。
「俺、ずっと村瀬さんのことが好きなんだ。だから照井なんかとチャラチャラしないで」
「成田君、少し冷静になって?」
「服部とも最近距離が近くなってきている。あいつ、急に間合いを詰めてくるタイプだから気をつけてよ」
「服部君は開ちゃんが懐いているから、近づかないわ。無用なトラブルは避けたいもの……急に間合いを詰めてくるのは成田君でしょう」
村瀬さんはそう言うと、困ったように微笑んだ。
「俺のことバカにしている。男だと思っていないの?」
「そんなことないけど」
「俺、頭悪いし、あんな親父見られているし、母さんもあんなだし、俺なんか論外かな」
「親は関係ないでしょ、もう、どうしたら落ち着いてくれるの?」
「キスして」
「本気なの?」
村瀬さんは眉をしかめた。俺はかまわず、乱暴に村瀬さんの唇に自分の唇を重ねた。
「気が済んだ? もう帰って」
翌週、食堂で会ったとき俺は謝った。
「この間はすみませんでした。でも本気です」
みんなのおしゃべりや笑い声が波のようにさざめく中、さり気なく言葉を潜り込ませた。
この言葉に反応したのは、村瀬さんと近くにいた田中宮司、そして小関さんだけだった。
村瀬さんはもう今までのように話しかけてくれなくなった。
俺を警戒して態度が硬くなった。仕方がない、俺が悪い。でも俺は後悔していない。