きみの為にできること

文字数 624文字



―――――――……

 小さな光の粒が、いくつも空へと吸い上げられる。
 それは無数の水から生み出された光の雫で、空へと還っていくように、重力などまるで関係無いように、あの青に吸い込まれていった。

 海の底に居るみたい。
 きらきら、涙が光と泡になって、消えていく。
 あたしのカラダも、一緒に溶けて。

 光の柱の中、あたしはその手をとった。

「……どうして……お前なんだ……!」

 シアが、泣いてる。
 その青い瞳にあたしを映して。

 離すまいと繋いだ手は震えていた。
 瞬きすらも拒むように、閉じることのない瞳があたしを射抜く。

 痛いのに、逸らせないのは。
 あたしもできる限りずっと、見ていたかったから。

 ホント、泣き虫で、ワガママで、横暴で。
 そして弱くて優しいこの国の王様。

 シアの、そういうところが。
 すごく、すごく……、

「おれは……っ お前が、望むのなら……この国も、未来も……この世界でさえも……!」

 シアの涙が儚い願いに混じって風に乗る。
 それから周りのソレと同じように、ゆるりと空へと浮かんだ。

 あたしはその雫の一粒を、そっと自らの手の平に閉じ込めて。
 それからゆっくりとシアの目を見て笑った。

「大丈夫、そんなこと。シアに選ばせたりなんか、しないから」


 君が選ぶ未来は、ひとつで良い。
 たったひとつ。

 それだけで。

―――――――……
――――――――――……

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