第４９話 想い人
文字数 2,415文字
春休みの時と同じようにめぐを使って脅してくる。
でも今回の要求はかなりヒドイ。
俺に二股をしろだと？ ふざけんな！
「まぁまぁ、そんなに睨まないでよ」
「これが睨まずにいられるか！」
「別に本当に二股掛けろって訳じゃないから」
「は？ どういう事だよ？」
と言う事は、二股は比喩みたいな物なのか。
「覚えてる？ リア充に成る為の特訓の目標」
「学校一のリア充になる事だよな？」
「それもそうだけど、それの先の『彼女を作る』だよ」
「あ！」
思い出した。リア充になって最終的に彼女を作るのがゴールだった。
「って事は俺の特訓は終わりなんじゃないか？」
「本来ならね。でも今回の場合学校一のリア充に成る前に彼女ができちゃったからなぁ」
「それじゃあまだゴールって事にはならないって訳か」
「まぁそうだね」
学校のアイドルの新島と付き合って、良くも悪くも学校中から注目されてるんだけどなぁ。
「今、新島先輩と付き合って注目集めてるのにって思ったでしょ？」
「う……」
「今の段階じゃ学校一のリア充には遠いよ」
「どこがダメなんだ？」
「少なからず、男子女子共にお兄ちゃん達を快く思ってない人が居るからだよ。心あたりない？」
その言葉に一瞬お腹を触る。
確かに俺を憎んでる奴はいるな。
でも『お兄ちゃん達』って言った。つまり楓も含まれてるって事だ。
「楓もそんな風に思われてるのか？」
「新島先輩は元々が完璧美少女だったからほんの一部だよ。それもただの嫉妬とかだしね」
「そうか、その位なら楓が自分で何とかしそうだな」
「実際もう何人かは懐柔されたみたいだよ」
俺の知らない所で暗躍とかさすがだな。
でも
「今の話と二股に何の関係があるんだ？」
「言ったでしょ？ 新島先輩に嫉妬してる子達がいるって」
「ああ」
「言い変えればお兄ちゃんの事が好きな子が居るって事」
「はは、去年までの俺なら考えられないな」
春先までの俺ならそんなの気のせいとか言ってたと思う。
だけど今はすんなり受け入れられる。
これが自分に自信が出来た証拠なのだろう。
「それでね、ある一年の女の子がお兄ちゃんの事好きだったの」
「うん」
「お兄ちゃんが新島先輩と付き合って諦めようとしたんだって」
「……うん」
「でもこの間の放課後、私に泣きついてきたんだ」
「……」
「諦めようと思ったけどやっぱり諦められない！ 私どうしたらいいの？ ってね」
「……そうか」
俺が彼女出来て浮かれてる裏で苦しんでる子がいたなんて。
俺に何か出来ないのだろうか。
「だから、お兄ちゃんにはその子と一日だけデートして帰りにキッパリ振って欲しいの」
「おいおい、デートしておいて振るのかよ！」
「それがその子の望みだから。キッパリ振られれば諦めがつくって」
何故だろう。誰も悪くない筈なのに胸が苦しい。
「ん？ じゃあさっき言ってた二股っていうのは」
「その子との一日デートの事だよ」
「なんだそう言う事か。それならめぐを脅しに使わなくてもよかっただろ」
「そうでもないよ。楓さんがこのデートOKすると思う？ 独占欲強いんだよ？」
「それは……、でも楓に内緒でデートは出来ない」
「じゃあお兄ちゃんの事好きな子は放っとくの？」
「いや、楓を説得してみせる」
「ふ～ん、じゃあ明日結果聞かせてよ」
「わかった。ちなみにその子の名前は？」
と聞くと少し俯きがちになり
「今は言えない。会った時のお楽しみ」
そういって今日の会議は終了した。
さて、どうやって楓を説得しよう。
翌日、教室に入るといつもと雰囲気が違った。
自分の机に荷物を置き、いつもの溜まり場へ向かう。
「お！ やっと来たか」
「おっす。なんか教室の雰囲気いつもと違くないか？」
丁度水樹が話しかけてきたので聞いてみる。
すると
「それはな、中居が及川と付き合う事になったんだってよ！ その所為じゃないか？」
水樹がさも今日知りましたという感じで言ってくるので俺も
「マジで！ それなら教室中がざわついてもしょうがないな！」
と話を合わせる。
すると中居が
「チッ、騒ぎ過ぎなんだよ。及川を見てみろよ」
と言われ中居の後ろに隠れる様に居る及川を見る。
顔を真っ赤にして俯いてしまっている。
よっぽど恥ずかしいのだろう。
「及川、諦めろ。 有名人と付き合うって事はこういう事だ」
俺なりの激励を浴びせた。
それから休み時間の度に及川は女子に囲まれ色々聞かれていた。
及川事態も男子女子隔たり無く人気があったので仕方ないだろう。
中居に絡もうという奴はいなかったが、水樹には凄い揶揄われてた。
昼休みになり学食に行こうとすると、楓に引き止められた。
「友也君ちょっと来て」
と言っていつものメンバーが集まって昼食を摂ろうとしている所に座らされる。
「どうしたんだ楓、早く行かないと席が埋まっちゃうんだけど」
そんな俺をみて中居が
「佐藤、何かやったんじゃないか？」
と言ってくる。いえ、まだヤッてません。
もしかしてそれが原因か！
と考えていると
「も～、昨日約束したでしょ？ お弁当作って来るって」
「「「「「は？」」」」」
俺達以外の全員が驚いた声を挙げた。
そう言えば今度お弁当作って挙げるって言われたな。
まさか昨日の今日で作ってくるとは思わなかった。
「はい、お弁当♪」
「ありがとう」
楓から可愛らしい入れ物のお弁当箱を受け取ると、田口が
「いやいやいや、お弁当って！ ってか昨日何があったん？」
と大きな声とリアクションで聞いてくる。
田口の所為でまた教室の注目を浴びる事になった。
今日はこのグループ目立ち過ぎじゃないですかね。
でも今回の要求はかなりヒドイ。
俺に二股をしろだと？ ふざけんな！
「まぁまぁ、そんなに睨まないでよ」
「これが睨まずにいられるか！」
「別に本当に二股掛けろって訳じゃないから」
「は？ どういう事だよ？」
と言う事は、二股は比喩みたいな物なのか。
「覚えてる？ リア充に成る為の特訓の目標」
「学校一のリア充になる事だよな？」
「それもそうだけど、それの先の『彼女を作る』だよ」
「あ！」
思い出した。リア充になって最終的に彼女を作るのがゴールだった。
「って事は俺の特訓は終わりなんじゃないか？」
「本来ならね。でも今回の場合学校一のリア充に成る前に彼女ができちゃったからなぁ」
「それじゃあまだゴールって事にはならないって訳か」
「まぁそうだね」
学校のアイドルの新島と付き合って、良くも悪くも学校中から注目されてるんだけどなぁ。
「今、新島先輩と付き合って注目集めてるのにって思ったでしょ？」
「う……」
「今の段階じゃ学校一のリア充には遠いよ」
「どこがダメなんだ？」
「少なからず、男子女子共にお兄ちゃん達を快く思ってない人が居るからだよ。心あたりない？」
その言葉に一瞬お腹を触る。
確かに俺を憎んでる奴はいるな。
でも『お兄ちゃん達』って言った。つまり楓も含まれてるって事だ。
「楓もそんな風に思われてるのか？」
「新島先輩は元々が完璧美少女だったからほんの一部だよ。それもただの嫉妬とかだしね」
「そうか、その位なら楓が自分で何とかしそうだな」
「実際もう何人かは懐柔されたみたいだよ」
俺の知らない所で暗躍とかさすがだな。
でも
「今の話と二股に何の関係があるんだ？」
「言ったでしょ？ 新島先輩に嫉妬してる子達がいるって」
「ああ」
「言い変えればお兄ちゃんの事が好きな子が居るって事」
「はは、去年までの俺なら考えられないな」
春先までの俺ならそんなの気のせいとか言ってたと思う。
だけど今はすんなり受け入れられる。
これが自分に自信が出来た証拠なのだろう。
「それでね、ある一年の女の子がお兄ちゃんの事好きだったの」
「うん」
「お兄ちゃんが新島先輩と付き合って諦めようとしたんだって」
「……うん」
「でもこの間の放課後、私に泣きついてきたんだ」
「……」
「諦めようと思ったけどやっぱり諦められない！ 私どうしたらいいの？ ってね」
「……そうか」
俺が彼女出来て浮かれてる裏で苦しんでる子がいたなんて。
俺に何か出来ないのだろうか。
「だから、お兄ちゃんにはその子と一日だけデートして帰りにキッパリ振って欲しいの」
「おいおい、デートしておいて振るのかよ！」
「それがその子の望みだから。キッパリ振られれば諦めがつくって」
何故だろう。誰も悪くない筈なのに胸が苦しい。
「ん？ じゃあさっき言ってた二股っていうのは」
「その子との一日デートの事だよ」
「なんだそう言う事か。それならめぐを脅しに使わなくてもよかっただろ」
「そうでもないよ。楓さんがこのデートOKすると思う？ 独占欲強いんだよ？」
「それは……、でも楓に内緒でデートは出来ない」
「じゃあお兄ちゃんの事好きな子は放っとくの？」
「いや、楓を説得してみせる」
「ふ～ん、じゃあ明日結果聞かせてよ」
「わかった。ちなみにその子の名前は？」
と聞くと少し俯きがちになり
「今は言えない。会った時のお楽しみ」
そういって今日の会議は終了した。
さて、どうやって楓を説得しよう。
翌日、教室に入るといつもと雰囲気が違った。
自分の机に荷物を置き、いつもの溜まり場へ向かう。
「お！ やっと来たか」
「おっす。なんか教室の雰囲気いつもと違くないか？」
丁度水樹が話しかけてきたので聞いてみる。
すると
「それはな、中居が及川と付き合う事になったんだってよ！ その所為じゃないか？」
水樹がさも今日知りましたという感じで言ってくるので俺も
「マジで！ それなら教室中がざわついてもしょうがないな！」
と話を合わせる。
すると中居が
「チッ、騒ぎ過ぎなんだよ。及川を見てみろよ」
と言われ中居の後ろに隠れる様に居る及川を見る。
顔を真っ赤にして俯いてしまっている。
よっぽど恥ずかしいのだろう。
「及川、諦めろ。 有名人と付き合うって事はこういう事だ」
俺なりの激励を浴びせた。
それから休み時間の度に及川は女子に囲まれ色々聞かれていた。
及川事態も男子女子隔たり無く人気があったので仕方ないだろう。
中居に絡もうという奴はいなかったが、水樹には凄い揶揄われてた。
昼休みになり学食に行こうとすると、楓に引き止められた。
「友也君ちょっと来て」
と言っていつものメンバーが集まって昼食を摂ろうとしている所に座らされる。
「どうしたんだ楓、早く行かないと席が埋まっちゃうんだけど」
そんな俺をみて中居が
「佐藤、何かやったんじゃないか？」
と言ってくる。いえ、まだヤッてません。
もしかしてそれが原因か！
と考えていると
「も～、昨日約束したでしょ？ お弁当作って来るって」
「「「「「は？」」」」」
俺達以外の全員が驚いた声を挙げた。
そう言えば今度お弁当作って挙げるって言われたな。
まさか昨日の今日で作ってくるとは思わなかった。
「はい、お弁当♪」
「ありがとう」
楓から可愛らしい入れ物のお弁当箱を受け取ると、田口が
「いやいやいや、お弁当って！ ってか昨日何があったん？」
と大きな声とリアクションで聞いてくる。
田口の所為でまた教室の注目を浴びる事になった。
今日はこのグループ目立ち過ぎじゃないですかね。
