槍使い
文字数 1,124文字
会場に着いた途端、レゼルバは目を見張った。
見間違いかと思い、何度も目をこすってみたが間違いなかった。夢でも見ているのかと思い自分でほっぺたをつねってみた。
それならばこれは現実なのだ。
そこにいたのはレゼルバが尊敬するファーストスピアのク・ホリイだった。
憧れの存在と偶然とはいえ同じ空間をともにして、レゼルバはどうしたらいいかわからなくなっていた。
駆け寄って声をかけて握手してもらいたいとも思う。だが、そんなミーハーなところをク・ホリイに見せて呆れられたらどうしようかと考えると実行することはできなかった。
広場の隅で様子を伺うようにしていると、ク・ホリイがレゼルバの姿に気が付いたようだった。
そしてあろうことかレゼルバに向かって歩いてくるのだ。
英雄の手は思っていた以上にガッチリしていた。
肉厚で手のひらはガサガサしている。
鍛えられた者の手だった。
深呼吸をして、なんとか気持ちを落ち着ける。
戦いに臨むときにいつもしている行為だ。これまで何度も繰り返してきたことなので、今もうまく自分の心をコントロールできた。