第67話

文字数 864文字

 真琴の話題でしか、俺とリクの共通点などないから、まあそうだよなと苦笑がこぼれた。

「で。何がいいたいわけ?」

「あの子のこと、からかうのはやめてもらえませんか?」

「あんたにそんな怖い顔して真琴をからかうのやめろ、とか言われる筋合いある?」

 俺が真琴、と呼び捨てにしたら、リクは神経質に瞬きをして反応した。

「そうじゃなくて……」

 苛立ったようにそう口走った後、頭の中を整理するようにリクは黙った。少しの間をあけたあと、もう一度口を開く。

「真琴、最近全然集中が続かないんです。勉強も上の空。小テストなんかも最近まともな点数とれてないし。模試の結果、まだ返ってきてないけど、答え合わせしたら全然できてなかったって言ってましたしね」

「あらー。真琴、どうしちゃったんだろ。まあ、勉強なんて調子でないことなんかあるんじゃない? 私なんかずっと調子でなかったけど」

 雫が軽い調子でそう口を挟むと、リクは小さく首を振った。

「真琴は今まで、中学からですけど、そんなふうに成績がおかしくなるほど、集中力が落ちた事はありません。それが高3の今、おかしくなるなんて……」

 それから鋭く射抜くような瞳を俺に向けた。

「あなたが原因としか思えない」

 相手は高校生(ガキ)。本気で相手をしても仕方ないとはいえ、やっぱり腹もたつ。とりあえず黙らせようと口を開いたら、先に雫がしゃべりだした。

「でもさリク。私バカだからよくわからないけど、人には勉強より大事なモノってそれぞれあると思うんだよね。真琴にとってそれは恋じゃないの? それを邪魔するのって野暮っていうんじゃない?」

 雫の無邪気な正論がリクにも刺さったようで、一瞬瞳を大きく見開いた。それから小さく自嘲するような笑みを浮かべた。

「確かに雫さんの言う通りかもしれません。でも……真琴はどこかでいつも勉強から逃げたいって思っていた気がするんです。その逃げ道にするのは違うだろうって。真琴に言っても全く聞く耳もたないし……修正するとしたら、今しかない。そう思ったんで、ここまで来たんです」

 そう言い切り、まっすぐ俺を見た。
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