第4話(2)

エピソード文字数 2,670文字

『優星よ。これは……』

 おう。そうだな、謎の声。

「ねえ、みんな。カラスと黒猫、多いよね?」

 ここまで、カラス4匹黒猫4匹。この街には、カラスと黒猫しかいなくなったのか?

「熱中していて気にしてなかったけど、そればかりですわね。不吉ですわ……」
「黒猫とカラスは、不吉の象徴になってるもんね。ますます嫌な予感が――」
「従兄くんのバカっ!」

 パチィィィィィィン!!
 俺は、シズナに思いっきりビンタされた。

「カラスさんと黒猫さんは、ただの黒色の鳥と猫なのよっ!? なのに貴方は、不幸不吉と忌み嫌う……っ。不幸不吉の原因は彼らだという根拠はないのに酷いわっ!」
「そ、そうだよね。見ただけでそう思うのは、カラス達に悪いよね」

 これに関しては、この人の言う通り。ちゃんと反省しないとだ。

「指摘ありがとう、シズナ。俺は間違ってたよ」
「気付いてくれたのなら、いいの。カラスさんも黒猫さんも、きっと許してくれるわ」
「そ、そうかな? こんなヤツを、簡単に許してくれるのかな?」
「ええ、受け入れてくれるわ。動物と話せる魔法を使ったから、肩に触れてそこのカラスを見つめてみて」
「お、おうです」

 俺は彼女の右肩に手を置き、カラスくん(さん?)を正視する。
 動物と、会話できるのか。どんな風に話しかけてくれるのかな?

《誰にでも、過ちはある。私は貴方の反省する心を、しかと感じました》

 少し高めの、落ち着いた声が脳内に響いてきた。
 こ、これが。カラスの、声か。

《こんなにも悔いてる者を咎めるのは、意味なき事。とある一つの行動をしてくれるのであれば、不問に付しますよ》
「か、感謝します。俺は、なにをすればいいんですかね?」
《…………貴方の、右隣。そこに、少女がいるでしょう》
「い、います」

 虹橋シズナが、いる。

「えと。この人が、どうかしたんですか?」
《今晩彼女を、百回怒りなさい。そうすれば世界中のカラスと黒猫が、貴方を許すでしょう》
「はい、わかりました。これは、壮大なシズナトラップだったんだな」

 俺は鼻と鼻があたる程に顔を近づけ、変人を睨め付ける。これでもかと睨め付ける。

「思い返せば貴様は、動物と話せる魔法を持っていない。あれは百回怒られるために、キレた芝居をしたんだよな?」
「……く、詰めが甘かったわ……。やはりこういう形では、なかなか怒られには持っていけないわね……!」

 俺、さ。コイツが女の子じゃなかったら、胸倉を掴んで振り回してる。
 この世界は暴力NGだが――。これはきっと、誰もが無罪にしてくれるはずだ。

「頬っぺたを叩けば、本気と認識させられると思ったのに……! 私は辛い思いをして叩いたのになんで失敗するのよ!!
「うっせぇ、どうして貴様がキレてるんですか。立場を弁えろです。次同じようなことやったら、一週間飯抜きにするからなですよ」

 俺はゆーっくりと言の葉を紡ぎ、止めていた脚を前へと動かす。
 ここでカッとなったら、変人を楽しませてしまう。耐えるんだ、耐えろ色紙優星。

「ま、まあまあですわ。何かとシリアスになる時期だから、こういうのも必要ですわよ」

 麗平さんはそれから「色紙クンは大変ですけど」と付け足し、苦笑した。
 ……確かにこの人の言うように得はあって、空気が柔らかくなっている。世の中は誰かが犠牲になれば好転するモノなので、よしとするか。

「はぁ、この話はお仕舞にします。ちゃんと発見ゲームをやりつつ、進みましょう」

 俺は仕方なく気を取り直し、再出発する。
 その後はワンちゃんやスズメちゃんが見つかり、シズナも大人しくなって一安心。まったりほんわかとした雰囲気で前進――していると、不意に麗平さんが止まった。
 んむ? どうしたんだにゅむ?

「そこの公園にある木の傍が、『大剣のシン』との待ち合わせ場所ですの。どうせいつもと同じだろうけど、チェックしてきますわ」
「そういや毎日、調べてるんだったよね。まだまだ時間はあるんで、ゆっくり行ってきてよ」
「ソーリーですわ。地球人に転生したら感知能力を失うんで、二人が出会える方法は限られてきますのよ」

 彼女は胸先で両手を合わせ、ボディーガードのサクを引き連れ約束の地点へと走る。
 待ち合わせが成功する確率は極めて低いけれど、0%ではない。無駄だと思いつつも気になるよね。

「昔の戦友(せんゆー)さんと、会いたいよねー。活美ちゃん、いつか会えるといいなー」
「覚醒するまでは記憶や魔力がない、というのが厄介なのよね。それらがなければ、簡単なのに」

 こないだ来た寒上さんのように気配を読める人を呼んで、強い魔力を調査する。それができたら、楽々シンさんが見つかるんだよねぇ。

「にゅむむー、何とかしてあげたいなー。なにかできないのかなぁ?」
「…………レミア、ソコは気にしなくていいよ。大剣のシンが、ここに来てたみたいだからね」

 こちらに駆けてくる二人の顔は、とても明るい。アレはそういうことなのだろう。

「みんなっ。メモに返事が書いてましたわっ!」

 思った通り。麗平さんは戻ってくるや、満面の笑みで紙を突き出してきた。

「シンは今日の明け方に覚醒してて、現在は花丘真治(はなおかしんじ)という名でウチの2年E組にいるそうですわよ!」
「麗平様の日頃の行いがよろしかった故、奇跡が起きました。万歳でございますっ」

 そのメモにあるメッセージは、どちらも奇妙な文字――ラミラミミー語で書かれており、イタズラは有り得ない。返事を記したのは、間違いなくシンさんだ。

「ここには、昼休みに体育館の裏でゆっくり話したい、とあります。やっと仲間に会えますわ……っ」
「およそ、千年ぶりの再会でございますね。麗平様、ほんにおめでとうございますっ!」
「封印の日ににやけるのは不謹慎だけど、頬が緩んじゃいます。ウチ、とっても幸せですわっ」

 他の御仲間は魂までもエネルギーにしており、転生できない――もう会えない。その人は唯一の同志なのだから、喜びも一入だよね。

「おめでとー活美ちゃんっ。ハピネスデーだねっ」
「封印できて、戦友さんと会える。この上なく素敵な日になるわね」
「まさに、盆と正月が一度に来たみたいっ。昼休みが楽しみですわ!」

 麗平さんは、ニコニコニコニコ。
 これは、当然っちゃ当然なんだけど――。通学中も授業中も、ずっとその表情でした。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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