第21話 車の部品関係
文字数 2,339文字
道路脇には、車の部品が落ちていることもある。
最も多いのは、大雪の後。除雪されて脇に押し付けられた雪の山からは、ホイルカバー、車体の底に貼ってある黒い板、チェーンの切れ端、バンパーそのもの、ミラーなど、様々な部品が出てくる。
雪解けとともに、これらが道路わきに目立つようになり、春を感じるという、イヤな雪国の風物詩だ。
自動車というものも、強度、耐久性があり、安全であることが至上命題となって作られているわけだから、部品もほとんどが頑強かつ難分解。よって、これらの始末は困難を極める。
もちろん、燃えるゴミになど出せるはずもないし、燃えないゴミに出すにしても、大きすぎて市の指定ゴミ袋に入らない。ならばと切断しようとしても、丈夫さが仇となって、ノコギリ程度ではそう易々とは切れない。まあ、金属部分は無理でも、FRP部分なら切れないことはないのだが、ノコギリの刃を無駄にして、また周囲にグラスファイバー入りの難分解な鋸クズを飛散させてまでやることか? と考えてしまう。
車体の底板は、プラ製もアルミ製もあって、どちらも軽く、素手で曲げられるので、比較的処分は楽なのだが、バンパーその他の車体部分ともなると、曲げることも切ることも難しい。
ミラーなどは小さいから、そのまま燃えないゴミの袋に入るが、問題なのは破片である。
無事な姿のまま落ちているミラーなど見たことがないが、下手をすると車に踏まれていて、鏡部分だけでなく、本体まで粉々になっていることも珍しくない。
そういうのを拾い集めるのは、大変な手間だが、放置した場合の危険性も高いから、割と丁寧にやっている。
金属製品も多い。チェーンの切れ端は、目立つようなゴミではないものの、路面と擦れて鋭い刃物と化していることもあってヤバいゴミの一つ。折れたボルトやワイパーの芯など、数は多くない。
こういう金属ゴミは、金属種ごとに分けて取っておく。スクラップ屋さんでキログラムあたり、二十円から三十円で引き取ってもらえるからだ。
百キロで二~三千円と考えると、金属入れは貯金箱のような感覚である。アルミだとキログラムあたり百円以上するので、分けておくが、もともと軽いのでかさばる。
それ以外では、車載品の三角表示板や、アイススクレーパー、スコップなども拾ったことがある。もちろん、どれも破損品である。雪道でスタックするか、事故るかして、脱出の際にその場に放棄したか、好意的に見ても、忘れて行ったかのどちらかであろう。
これらはまあ、バンパーなどと違って小さいから、指定ゴミ袋にも入るし、そう丈夫でもないので、処理は楽だ。とはいっても、散歩の途中に拾うにはかさばるもので、しかも、派手な三角表示板など持ち歩いていると、ご近所に見られた時に恥ずかしい。
なんにしても、大雪の中、大変だったのは分かるが、そんなもん捨てて行くなと言いたい。脱出の際にゴミを置いていくな。モノを忘れて行くな。
国道は、たまに掃除車両が走るようだが、市道・県道では、ほとんど掃除は入らない。田舎の自治体は、人手も足りず、貧乏なのだ。
じつは今、近所の市道のある場所にバンパーが落ちている。
あまり周囲を掃除しない専門学校の、駐車場前で、道路側の植え込みに隠れているから、車道側からしか見えない。つまり、歩行者も施設関係者も、そこに落ちていることが分からない場所なのだ。
わざと手を出さないのは、大雪の後、市がこうした道路上の廃棄物に、いつ、どう対処するか知りたいからだ。俺が拾わなかった場合、いつまで放置されるかの、実験なのである。
今は三月だから、すでに二か月以上経つが、いっこうに回収される気配はない。
これら自動車関係のゴミ。大雪後のことだと書いたが、それ以外の季節でも、発生することはある。
事故である。
特にヘッドライトやウィンカー、ブレーキランプの破片が、よく曲がり角や交差点などに落ちている。事故った人、および警察は、そういうゴミを誰が掃除していると思っているのであろうか?
事故った時には、そりゃ大変だろうとは思う。パニクっているに違いないし、責任が自分にあれば、尚のこと気が重いだろう。警察に連絡、ケガ人がいれば救急車、保険会社にも、家族にも、勤務先にも連絡する必要がある。
そうやって様々な対処をして、ようやくホッと一息付けたなら、現場の掃除にも来てほしい。
放置され、何度も踏み砕かれたプラスチック片は、回収が厄介な廃棄物であって、「そのうち消えてなくなるもの」ではないのだ。
警察も人手が足りないからかも知れないが、物損で、自走可能だと分かると、警察に自分らで来てくれ、と必ず言う。
行ってみれば、双方から様子を聞き、調書を取って、事故証明は出すから後は、保険屋交えてお互いで解決しろ、で終わりである。
まあ、それはいい。だが、調書を採り終えたら、双方に対して現場の掃除を指示するくらいのことは、しても良いのではないか。
俺も何十万キロも乗っているから、何度か事故ったことはある。相手と一緒に出頭したことも数回あるが、警察からそんな指示は、一度も受けたことはない。もちろん、自主的に現場の掃除には行ったが。
たぶん、明らかな被害者の方としては、何でそんな事しなくちゃならん、と思われるだろうし、加害者の方も、追い打ちをかけられたような、惨めな気持ちになるであろうことは想像に難くない。
言えば、警察に反発の目が向くことは十分に考えられる。
だが、それを近所の住民が掃除しなくちゃならない理由は、どこを探しても見当たらないと思う。
警察が一言、現場の掃除は当事者の義務であることを伝えてくれれば、そうしたゴミもかなり少なくなると思うのだが。
最も多いのは、大雪の後。除雪されて脇に押し付けられた雪の山からは、ホイルカバー、車体の底に貼ってある黒い板、チェーンの切れ端、バンパーそのもの、ミラーなど、様々な部品が出てくる。
雪解けとともに、これらが道路わきに目立つようになり、春を感じるという、イヤな雪国の風物詩だ。
自動車というものも、強度、耐久性があり、安全であることが至上命題となって作られているわけだから、部品もほとんどが頑強かつ難分解。よって、これらの始末は困難を極める。
もちろん、燃えるゴミになど出せるはずもないし、燃えないゴミに出すにしても、大きすぎて市の指定ゴミ袋に入らない。ならばと切断しようとしても、丈夫さが仇となって、ノコギリ程度ではそう易々とは切れない。まあ、金属部分は無理でも、FRP部分なら切れないことはないのだが、ノコギリの刃を無駄にして、また周囲にグラスファイバー入りの難分解な鋸クズを飛散させてまでやることか? と考えてしまう。
車体の底板は、プラ製もアルミ製もあって、どちらも軽く、素手で曲げられるので、比較的処分は楽なのだが、バンパーその他の車体部分ともなると、曲げることも切ることも難しい。
ミラーなどは小さいから、そのまま燃えないゴミの袋に入るが、問題なのは破片である。
無事な姿のまま落ちているミラーなど見たことがないが、下手をすると車に踏まれていて、鏡部分だけでなく、本体まで粉々になっていることも珍しくない。
そういうのを拾い集めるのは、大変な手間だが、放置した場合の危険性も高いから、割と丁寧にやっている。
金属製品も多い。チェーンの切れ端は、目立つようなゴミではないものの、路面と擦れて鋭い刃物と化していることもあってヤバいゴミの一つ。折れたボルトやワイパーの芯など、数は多くない。
こういう金属ゴミは、金属種ごとに分けて取っておく。スクラップ屋さんでキログラムあたり、二十円から三十円で引き取ってもらえるからだ。
百キロで二~三千円と考えると、金属入れは貯金箱のような感覚である。アルミだとキログラムあたり百円以上するので、分けておくが、もともと軽いのでかさばる。
それ以外では、車載品の三角表示板や、アイススクレーパー、スコップなども拾ったことがある。もちろん、どれも破損品である。雪道でスタックするか、事故るかして、脱出の際にその場に放棄したか、好意的に見ても、忘れて行ったかのどちらかであろう。
これらはまあ、バンパーなどと違って小さいから、指定ゴミ袋にも入るし、そう丈夫でもないので、処理は楽だ。とはいっても、散歩の途中に拾うにはかさばるもので、しかも、派手な三角表示板など持ち歩いていると、ご近所に見られた時に恥ずかしい。
なんにしても、大雪の中、大変だったのは分かるが、そんなもん捨てて行くなと言いたい。脱出の際にゴミを置いていくな。モノを忘れて行くな。
国道は、たまに掃除車両が走るようだが、市道・県道では、ほとんど掃除は入らない。田舎の自治体は、人手も足りず、貧乏なのだ。
じつは今、近所の市道のある場所にバンパーが落ちている。
あまり周囲を掃除しない専門学校の、駐車場前で、道路側の植え込みに隠れているから、車道側からしか見えない。つまり、歩行者も施設関係者も、そこに落ちていることが分からない場所なのだ。
わざと手を出さないのは、大雪の後、市がこうした道路上の廃棄物に、いつ、どう対処するか知りたいからだ。俺が拾わなかった場合、いつまで放置されるかの、実験なのである。
今は三月だから、すでに二か月以上経つが、いっこうに回収される気配はない。
これら自動車関係のゴミ。大雪後のことだと書いたが、それ以外の季節でも、発生することはある。
事故である。
特にヘッドライトやウィンカー、ブレーキランプの破片が、よく曲がり角や交差点などに落ちている。事故った人、および警察は、そういうゴミを誰が掃除していると思っているのであろうか?
事故った時には、そりゃ大変だろうとは思う。パニクっているに違いないし、責任が自分にあれば、尚のこと気が重いだろう。警察に連絡、ケガ人がいれば救急車、保険会社にも、家族にも、勤務先にも連絡する必要がある。
そうやって様々な対処をして、ようやくホッと一息付けたなら、現場の掃除にも来てほしい。
放置され、何度も踏み砕かれたプラスチック片は、回収が厄介な廃棄物であって、「そのうち消えてなくなるもの」ではないのだ。
警察も人手が足りないからかも知れないが、物損で、自走可能だと分かると、警察に自分らで来てくれ、と必ず言う。
行ってみれば、双方から様子を聞き、調書を取って、事故証明は出すから後は、保険屋交えてお互いで解決しろ、で終わりである。
まあ、それはいい。だが、調書を採り終えたら、双方に対して現場の掃除を指示するくらいのことは、しても良いのではないか。
俺も何十万キロも乗っているから、何度か事故ったことはある。相手と一緒に出頭したことも数回あるが、警察からそんな指示は、一度も受けたことはない。もちろん、自主的に現場の掃除には行ったが。
たぶん、明らかな被害者の方としては、何でそんな事しなくちゃならん、と思われるだろうし、加害者の方も、追い打ちをかけられたような、惨めな気持ちになるであろうことは想像に難くない。
言えば、警察に反発の目が向くことは十分に考えられる。
だが、それを近所の住民が掃除しなくちゃならない理由は、どこを探しても見当たらないと思う。
警察が一言、現場の掃除は当事者の義務であることを伝えてくれれば、そうしたゴミもかなり少なくなると思うのだが。