第3話

文字数 556文字

 ミイ姉ちゃんは毎朝誰よりも早く団地の公園にいた。
 ミイ姉ちゃんは毎朝かなり早起きをしていることは確実なのに、不思議なことに、団地入口周辺でやるラジオ体操でミイ姉ちゃんを見かけたことは一度もなかった。
「ラジオたいそう、いかないの?」
 一度、ミイ姉ちゃんに聞いてみると、ミイ姉ちゃんは、「行かないよ」と即答した。
「だって、わたし、ラジオ体操のカード、持ってないもん。それに、わたしは毎日朝から大忙しなのに、ラジオ体操する意味ってあるの?」
 夏休みの朝にラジオ体操をする意味。
 はて、と首をかしげてしまった。そこに意味を求めること自体に、驚いてしまったのだ。
 わたしは意味もわからず毎朝追い立てられるように靴を履き、眠い目をこすって、大あくびをしながらラジオ体操に参加している。
他の子どもたちもそうしている。
ラジオ体操なんてそんなもので、自分にとって意味があるかどうかなんて、考えたことがなかった。
 ミイ姉ちゃんは、そんなことより、と嬉しそうな顔でわたしの耳元に口を寄せた。
「猫だけが通る道を見つけたの。なっちゃんも行く?」
「いく、いく」
 わたしは、うんうんと大きくうなずく。さっき質問したことなんて、ミイ姉ちゃんの提案の前ではあっという間にないものになる。
 わたしとミイ姉ちゃんは、常時、そんな感じだった。
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