3 ❀ 少女を枕を持て、この羊のように

文字数 998文字

その日、咲良さらは、ずっと心ここにあらずであった。
(ジョンのことばかり頭に浮かぶ・・・。うぅ、昨日もすぐに寝れなかったから眠い・・・)
授業中、こくり…こくり…と舟をこぎ、ついに眠りに落ちた。
          

夢の中で目を覚ます。


咲良の目に、飛び込んできたのは・・・

ここはどこ・・・? あれ、この服・・・
咲良は、自分が黒い修道服を身にまとっていることに気づいた。

(熱い・・・。この服のせい・・・? 喉が痛い・・・)

パタ…パタパタ…。
(空が泣いているわ・・・)

咲良も涙を零した。


瓦礫に残る熱を、冷たい涙雨が奪っていく。

( ここで誰かと手を握っていたわ・・・。誰と・・・? 思い出せない・・・ )

憶えている「彼」の手の温もり。


その温もりを、この冷たい雨は消してしまいそうだ。

ぬれてしまいますよ
振り返ると、ジョンが隣にいて、自分に傘を傾けてくれていた。
泣かないで。僕はここにいますよ
(ああ。これが…夢でないといいのに・・・)
傘の下で、ジョンを見つめる。
(目を開けても、となりに「彼」がいる世界であって欲しいの・・・)
  ❀        

目を開けると、そこはいつもの教室だった。


先生がちょうど、授業の終わりを告げていた。お昼休みが始まる。

す――・・・すぴ―――・・・
隣を見ると、理々は教科書に突っ伏し、すこやかな寝息を立てている。
理々、昼休みだよ
咲良が肩を揺らし、起こしてあげた。

先生、読むの上手うま過ぎだよね。


声がいいよ、うん。眠い、眠い…。


そうしたらシエスタの神が私のところへ下りてきてさ…

シエスタの神?

昼寝の神様。


マクラを持った羊さんが〝少女よマクラを持て、この羊のように〟って言うのよ

それって…少年よ大志を抱け、この老人のように?

あー…そうそれ。何歳になってもいい夢見たいわぁ。


――うーん、よく寝たぁ! 安眠は心労の最大の療法、ってね

セルバンテスの名言ね
そうじゃ
理々は深く肯くと、教室の窓の外を見た。

夢の中でね、草むらに座って青空を見上げていたわ。


この窓から見える空より、ずっと澄んでいて、雲一つないのよ。


どこからか伴奏のない聖歌鐘の音が聞こえてきて…

聖歌鐘の音

うん・・・。綺麗な夢だったわ、本当に。


私は夢の中で、どうしてずっとを見上げていたんだろう・・・

理々は机に頬杖をつき、春の空を見上げた。
  つづく 
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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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