第2話(5)

エピソード文字数 2,150文字

「――ほい。以上が、これまでの出来事です」

 バカな神様と出会った時から現在まで。細かく丁寧にご説明をしました。
 勿論ボクはにゅむっ子とは違うので、『自分なりに』細かく丁寧にではありません。

「麗平さん。ご理解頂けたかな?」
「うん、理解しましたわ。色紙クンは魔王使いとなり、キミを守るタメに魔王勇者クンたちが同居してるんですのね」
「いいえ、それは少し違うわ。私と従兄くんは、『撫で怒られる』の間柄なのよ」
「麗平さん、相手にしなくていいからねー? コイツ、オツムのネジが外れてるんだよ」

 どこかで、ネジを嵌めてくれないかな? 今度ネットで検索してみよう。

「魔王やら勇者やらがいて、驚いたでしょ? でも全員めっちゃ心優しいヤツなんで、安心してよ」
「それは、見てたら分かりますわ。二人とも――黒真クンも虹橋クンも、私利私欲では力を使わない人の雰囲気がありますもの」

 い、言えない。虹橋クンは『遠見』で俺の入浴を覗こうとしていたなんて、口が裂けても言えない。

「? 色紙クン、なんで口元をヒクヒクさせてますの?」
「さ、些事だよ。そ、それはそうと麗平さん、お次はアナタについて知りたいな」

 これが気になっていたので、誤魔化すついでにお尋ねする。まさかこんな大事なことを、誤魔化しに使う日がくるとは思わなんだ。

「…………ウチの素性を語ると長くなるし、こちら側の人間なら大事な部分も伝えられますわ。どっさり時間がかかりそうだから、場所を我が家に移しても構いませんか?」

 彼女は至極真剣な顔で、俺達を順に見る。
 今春からほぼ毎日顔を合わせてきたが、こんな表情は初めて。これはきっと、こっちが思っている以上に大事な話があるのだろう。

「パパとママは仕事で、夜まで誰もいません。気兼ねなく話せますわ」
「そっか、ならそれでいいよ。レミアとシズナもいいよね?」
「にゅむ。まるっ、だよーっ」
「従兄くんが、同年代の異性の家に行く……。内容が重要とはいえ、これは看過できないわね……!」

 よし、異論はないな。スパッと決まった。

「麗平さん。案内お願いします」
「んっ、ラジャーですわ。それじゃあこっちになります」

 そうして俺達は、ラミラミの先導で目的地へと出立。渋るシズナはモチのロン、

「てめぇウザいんだよしつこいんだよ空気読めよテンポ悪くなるんだよ妨害するんじゃねーよボケナス!!
「ひゃぅっ! 一度にこんなには、むりぃぃぃぃぃ…………!」

 連続怒りで気絶させて、運びました。

                  ◇※◇

「ようこそ我が家へ。どうぞどうぞですわ」

 俺らが通されたのは、客間の和室。ただウチの和室と共通しているのは、畳&麗平さんと優星サイドの間にあるテーブルが、無垢で出来た和風なモノという点のみ。上にはクリスタルが美しい立派なシャンデリアがあり、壁には王室風の気品あふれる壁紙が張られております。

「ウチはパパが日本人、ママがイギリス人なんですわ。この内装は、日英の良さが合わさった究極の一品なんですのよ」
「そ、そうなんだ。イギリスと日本のハーフなんだねぇ」

 ツッコミ衝動を抑えきれなくなるから、内装には触れない。床の間にかけてる、『日英同盟』と書かれた掛け軸なんて知らないよ。

「こ、ここなら腰を据えて話せるね。さて、本題に入ろうか」

 俺は出されたお茶で唇を濡らし、居住まいを正す。
 入り方は締まらないが、内容はギャグ系とは真逆に違いない。ここからは気を引き締めていこう。

「……悪ふざけをしようとしたら従兄くんに睨まれたから、真面目に対応します。まずは貴方自身について、教えてください」
「ウチは、異世界ラミラミミーを救った騎士の一人、『双剣のミラル』の生まれ変わりですの。とはいえ、覚醒するのが遅く――前世の記憶が蘇るのが遅く『麗平活美』としての人格が大半を占めてるので、『ミラルの力と記憶を引き継いだ地球人』になっていますわね」

 この子がラミラミ発言をし始めたのは、先々月の末。つまりあそこで目覚めたんだな。

「にゅむむ、ミラルちゃんさんかー。どんな人だったのー?」
「一人で戦士五千万人に匹敵する、精鋭集団・セブンナイツのリーダーでした。僅か三歳で双剣を握り、十歳にしてセブンナイツに名を連ねたのですわ」

 ふむふむ。ミラルさんは天才中の天才で、怪物染みた実力の持ち主なのか。
 左右に1兆人に匹敵する少女がいなかったら、度肝を抜かれていたよ。

「ミラルと出会った敵は必ず死ぬ――。『戦場の死神女神』――。そう畏怖されてて、アイツ以外の悪は全員倒してきたのですわ」

 麗平さんの、顔が。『アイツ』のところで険しくなった。

「……色紙クン、黒真クン、虹橋クン。ここからが…………同類にしか打ち明けられない、重要な部分ですわ」
「お、おう。それで、どんな話があるの?」
「………………あの、ですね。このままでは……」
「このまま、では?」

 ただならぬ雰囲気のため、俺は唾を呑んで反芻する。そうしたら彼女は、殊更重い調子でこう発した。


「このままでは2日後に、地球が滅んでしまうんですの」
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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