19

文字数 938文字

          *****



 どの地点に戻れというのだろう。
 ボクは学園寮の自分の部屋で眠っている。
 窓からは月あかり。

 目を瞑っていると、ベッドの布団にもぞもぞと入ってくる、小動物のような女の子。

「……にゃーこ……会長…………?」
「えへへ。来ちゃったのよ」
「来ちゃったって、一体……」
「聞いたこと、あるでしょ。魔法協会は魔法少女を〈木偶人形〉って呼んでるって。……あれね、わたしのことなのよ? はっ! もしかして知らなかった?」
「木偶、人形……」
「な。生きてるか死んでるかわからない。それはわたしも同じなのよ」
「…………」
 ボクの身体に布団の中で抱きつくにゃーこ会長。
「うにゅ。いずれ魔法は世界中の人間が知ることになる。宇宙人がやはりいずれ世界中の人間が、存在を認めるように」
「えっ! 宇宙人て、いるの!」
「いるいる、そこらじゅうにいる。なぜなら地球人も宇宙人だから! じゃなくてにょー、地球外生命体は実在するし、未知の技術はたくさんあるのよ」
「はぁ? は、……はぁ」
 ボクは寝ながら頷いた。

「さ。今日は眠るのよ。な? また春が巡ってくるのよ」
「そう、ですね。雪解けを、……待ちましょうね、にゃーこ会長」

 ボクは嘘つきで、ひどい奴で、……でも、魔法少女で。
 自分と戦うだけじゃなく、今度こそ、ほかの魔法少女たちのお手伝いをしていきたい、なんて思っているのだ。
 全然、格好がつかないけど。格好つけなくちゃいけない魔法少女なのに。
 泥にまみれて、それでもなお、格好をつけられたらいいのにな。
「なにニヤけてるの、まりん」
「会長こそ、笑顔ですよ」
「疑問は明日以降にとっておいて。笑顔のままで、今日は眠るのよ」
「そうですね。明日も、続いていくんですもんね」
「おやすみ」
「おやすみなさい」


 格好良くないボク。
 格好のつけ方を、残念ながらボクは学んでいない。
 格好がつかないまま、ボクは〈聞いて〉いた。
 悪魔たちの〈声〉を。
 そして、自分の心の〈声〉の在処を見つけられた。
 格好はつけられないけど。
 そのままのボクで、これからは戦っていく。
〈見えない声〉に、惑わされないように。



〈了〉
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み