第2章

文字数 379文字

 あなたが住むまちは、わたしと同じ路線沿いにある。
 駅の北口を出ると、正面にロータリーがあって、路線バスの乗り場が並んでいる。バスを待つ人の背中を通り過ぎ、駅ビルの横の通りを歩いていけば、ほどなく賑やかな交差点に出る。
 横断歩道を見下ろすように立つファッションビルと、ガラス張りのコーヒーショップ。道路を挟んだ向かい側には、証券会社や学習塾が入居するビルが並んでいる。
 交差点を渡って、その先の通りに足を踏み入れると、やがて、洒落たセレクトショップや雑貨屋、いかにも居心地がよさそうなカフェがいくつも集まるエリアに出る。その向こうに、戸建て住宅と低層マンションが並ぶ住宅街が広がっている。
 このまちのいたるところに、あなたの気配が満ちている。
 あの夜、駅の雑踏の中で、わたしは、あなたの背中を追いかけた。踏み込んではいけないと、知っていたのに──。
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