第1話 救われた世界、残された謎

文字数 750文字

 先の戦いは繰り返されし物語、五柱の神々によるモノだった。
 創世の時代から続く、破壊神、死神と創造神、豊穣神、狩猟神による争い。
 それはいつしか選ばれし人間――成聖者(せいせいしゃ)に委ねられ、今となっては彼らに導かれた人々による〝戦〟へと変貌していた。
 
 結果、人間でありながらも神と同じように崇められる存在が生まれた。
 
 そう、神々ではなく人々に選ばれた戦士たち――英雄の誕生である。
 中でも、死後に至るまで祈りを捧げられた者は、本物の奇跡をもたらす人神となった。
 
 そして、先の戦いにおいて世界を救った英雄は九人いた。
 
 平和の象徴さながら、吟遊詩人たちはこぞって彼らの英雄譚を語る。
 しかし、その物語は穴だらけであるだけでなく、一つの謎が残されていた。
 
 ――何故、正義神の成聖者は死んだのか? 
 
 正義神の聖奠(せいてん)は、正義を執行する際にその真価を発揮する。
 
 すなわち、大義名分があればあるほどに強くなれる。
 だからこそ、誰もが疑問を抱いた。
 
 ――世界を救う。
 
 これほどの大義名分、正義が存在するだろうか?
 答えは、否。
 だとすれば、かの成聖者はどうして命を落としてしまったのか?
 
 共に戦った成聖者たちは、欠けることがなかったと云われている。
 
 英雄の存在は知られていても、それが誰かまでは語られていなかった。
 わかっているのは二人だけ。
 狩猟神と戦神の成聖者――揃って、大国の王族であったからだ。
 
 二人は世界を救った名声を存分に振るっていた。
 
 その所為かどうかは定かではないが、両国の間ではまたしても戦乱の火蓋が切られようとしていた。
 これは世界の命運を握った戦いから、僅か数か月後のことである。
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登場人物紹介

戦神の成聖者、リルトリア(16歳)。ミセク帝国の皇子だが、継承権は下位。


聖寵:戦場の声を聴く(身の危険を察する)

聖別:対象は武具。使用者に重さを感じさせなくする

聖奠:王権。兵たちを意識レベルから支配し、操る


創世神の1柱でもある狩猟神の成聖者、クローネス(17歳)。ファルスウッド王国の王女。


聖寵:動物の声を聴く

聖別:対象は動物。文字通り、使役する

聖奠:投擲。あらゆるモノを〝矢〟として放つ狩猟神の〝弓〟を召喚

鍛冶神の成聖者、レイド(26歳)。身分違いの恋から逃げるよう放浪中。


聖寵:鉄の声を聴く(金属強度・疲労を理解)

聖別:対象は鉄。形を自在に変える

聖奠:鍛冶場の形成。金属を切り裂く武器を生み出す

この世界の最高神でもある創造神の成聖者、シャルル(11歳)。仲間たちと破壊神の行方を追っている。


聖寵:大地の声を聴く

聖別:対象は大地。文字通り、自在に操る

聖奠:天地創造。あらゆるモノを凌駕する創造神の゛手〟を召喚

創世神1柱でもある豊穣神の成聖者、シア(22歳)。同じく、破壊神の行方を追っている。


聖寵:植物の声を聴く

聖別:対象は植物。文字通り、使役する

聖奠:水源。水を生み出す、豊穣神の〝甕〟を召喚


航海神の成聖者、ペルイ(30歳)。破壊神の行方を追う、2人の保護者。


聖寵:潮読み。波風の声を聴く

聖別:対象は船。波風を軽減する

聖奠:嵐を呼ぶ(制御はできない)

医神の成聖者、エディン(28歳)。新大陸を目指して、海上を旅している。


聖寵:往診。身体の状態を聴く

聖別:対象は医療器具。消毒、清潔に保つ

聖奠:治癒

慈愛神の成聖者、テスティア(18歳)。その力を失い、現在はただの人として働いている。


聖寵:愛の程度を聴く(他者がどれだけ神に愛されているか――その力の多寡、気配を察する)

聖別:対象は神に愛された人。神の力――聖寵、聖別、聖奠を増幅させる

聖奠:結界。愛情の深さに応じた防御壁の形成

正義神の成聖者、ジェイル(16歳)。先の戦いで謎の死を遂げている


聖寵:神託。神の声を聴く

聖別:対象は人と物。穢れを払い、加護を与える

聖奠:神の裁き。自らの行い、立場が善であればあるほど力を増す

この世界の最高神でもある、破壊神の成聖者。名前も年齢も不明。先の戦いで唯一生き延びた邪神の1柱。


聖寵:壊れる声を聴く

聖別:対象はあらゆるモノ。異形の魔物へと変える。もしくは灰燼と帰す

聖奠:あらゆるモノを打ち砕く破壊神の〝鎚〟を召喚

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