第1話 救われた世界、残された謎
文字数 750文字
創世の時代から続く、破壊神、死神と創造神、豊穣神、狩猟神による争い。
それはいつしか選ばれし人間――
結果、人間でありながらも神と同じように崇められる存在が生まれた。
そう、神々ではなく人々に選ばれた戦士たち――英雄の誕生である。
中でも、死後に至るまで祈りを捧げられた者は、本物の奇跡をもたらす人神となった。
そして、先の戦いにおいて世界を救った英雄は九人いた。
平和の象徴さながら、吟遊詩人たちはこぞって彼らの英雄譚を語る。
しかし、その物語は穴だらけであるだけでなく、一つの謎が残されていた。
――何故、正義神の成聖者は死んだのか?
正義神の
すなわち、大義名分があればあるほどに強くなれる。
だからこそ、誰もが疑問を抱いた。
――世界を救う。
これほどの大義名分、正義が存在するだろうか?
答えは、否。
だとすれば、かの成聖者はどうして命を落としてしまったのか?
共に戦った成聖者たちは、欠けることがなかったと云われている。
英雄の存在は知られていても、それが誰かまでは語られていなかった。
わかっているのは二人だけ。
狩猟神と戦神の成聖者――揃って、大国の王族であったからだ。
二人は世界を救った名声を存分に振るっていた。
その所為かどうかは定かではないが、両国の間ではまたしても戦乱の火蓋が切られようとしていた。
これは世界の命運を握った戦いから、僅か数か月後のことである。