プロット

文字数 1,666文字


 4月、新学期。宮本カズサ、笹川ユウト、長谷トモナリは市立旭ヶ丘小学校に通う5年生になったばかりの男の子。同じ1組だが、それぞれタイプが違って教室で一緒に過ごすことはまずない。
 カズサは明るく活発なクラスの中心人物。みんなと仲良くできて初対面の子ともすぐに仲良くなれて、周りに溶け込むのが早いのが特技で、今年度来た転校生ともすぐに仲良くなった。
 ユウトは芸術家肌の変わり者。休み時間は1人で絵を描いていることが多い。記憶力が良くて一瞬しか見ていないものでもそのまま絵にすることができる。
 トモナリはいつも本を読んでいる勉強家。いろんな事を知っていて周囲からは博士と呼ばれているが人前で話すのが少し苦手。
 クラスメイトたちからは何の関係もないと思われている三人だが、じつは、放課後だけの秘密の親友である。


 秘密の親友は昔三人で回し読みした本「ひみつのともだちシリーズ」に出てくる少年探偵3人組に憧れて始めたことだった。
 「ひみつのともだちシリーズ」は中学生の3人組がひょんな事から仲良くなり秘密探偵団となって街の謎を解明していく話だ。周囲に秘密探偵団であることがばれないようにしながら調査をする登場人物の様にとはいかないが、ワクワクの共有ができると小学校3年生から続けていた。
 放課後にカズサの家に集まるのがお決まりの秘密の親友3人組。秘密がばれないようにクラスではなるべく話さないようにしている分、流行りのゲームの話や担任の先生の面白い話と話題は尽きない。その中で3人の今のとびっきりの話題は、ゴールデンウィークに計画している隣県への日帰り旅行だった。
 旅行を楽しんだゴールデンウィークが明けた最初の登校日。ユウトが登校すると、クラスの仲良し4人組の女の子の机に花が一輪ずつ無造作に置かれていた。


 それから毎日、クラスの誰かの机に仲良しグループごとに花がおかれるようになる。
 不思議な届け物に5ー1のクラスメイトたちは様々な推理を始めた。猫、鳥、花屋の家の子。様々な憶測が飛び交うが真相はわからない。
 花が置かれ出してから土日を除いて20日がたった。5-1の子どもたちは、教室では一人でいることの多いユウトを除いて、全員が一度は花を置かれている。明日は最後の一人、ユウトのはずだと皆が考えていた。しかし、翌日の朝、ユウトの机だけではなく、カズサ、トモナリの机の上にも花が置かれていたのだった。クラスメイトたちが首を傾げる中、3人は自分たちの関係を知っている誰かを探すことを決める。
 去年進級できなかった元5-1の子の噂や、花屋の家の子の証言、転校生が放課後消える話など、情報を集めて行くうちに3人は「ひみつのともだちシリーズ」の探偵たちさながらのチームワークを身につけていく。


 花が暗号になっていることや、カズサの情報収集能力とユウトの記憶力からヒントを得たトモナリの推理で、花を置いていた人物は、4月に旭ヶ丘小学校5-1に転校してきた結城ミツルだとわかった。母親の入院で隣県から祖父母の住むこの町に一時的に引っ越してきたミツルは、ゴールデンウィークに隣県の母親のお見舞いに行ったときに遊びに来ていた3人を見て仲がいい事を知ったという。仲がいいのにそれを隠している3人をみてミツルは「ひみつのともだちシリーズ」のように彼らが仲がいい事をばらすライバル役をやりたいと思ったのだという。ミツルは負けを認めると、花を置いた人物として名乗りをあげて秘密の親友のことを誤魔化してくれた。3人の秘密は守られて、秘密の共有者になったミツルはときどきカズサの家に遊びにくるほど仲良くなる。夏休みの計画にミツルも誘おうかと話していた矢先に、ミツルが母親が退院したことで夏休みになる前に隣県に帰ることになったと告げた。
 お別れの日に3人が会いに行くとミツルは最後に「あの時のきみたち、秘密探偵団みたいだったよ」と言って笑って帰って行く。
 去っていく車を見つめながら、カズサは「ライバルがいたから、俺たち秘密探偵団みたくなれたんだよな」と呟いた。
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