第67話  黒澤 凛  4

文字数 2,681文字


 ※


 僕が帰ろうとするのを遮る三人組。赤木と魚住。そして名谷。


 凛でいられる時間はあと三十分を切っている。

 ここでこいつらに捕まってしまえば、僕は……間違いなく女になってしまう!

【名谷】

最近てめぇ生意気なんだよ。

【赤木】

強がんのは先生の前だけか? 何だよその情けない顔は

【魚住】

逃げようたって無駄だぞ~。女たらしめ

 すぐに逃げようとするけど魚住に捕まってしまい、その間に三人に引っ張られる。


 僕が……この三人に勝てる訳がなかった。殴られ、蹴られ、体操服は泥だらけになった。
 それに誰も助けてくれない。学校でも最高学年だし、下校する小学生はみんな足早に去っていく。


 うぅっ……来た!
 三回目のサインが頭の中に届くと、途端に身体が重くなった。
ちょっと男子! やめてあげてよ!

【堀口】

ちょっと可哀想でしょ! やめてあげてよ!

坂田さん……堀口さん……

【赤木】

坂田ぁ! 先生にチクってみろよ。お前もボコってやるぞ!

【名谷】

何だお前~~。坂田は黒澤のこと好きなんか?

何よっ! 先生に言うから!
 坂田さんが校舎に走ろうとすると、魚住が彼女の腕を掴んでしまう。

【魚住】

待てってばよ! 先生にチクったらお前らもやっちまうよ。

【堀口】

綾ちゃん! や、やめてよ魚住!

やめろっ! 坂田さん達は関係ないだろ!

 このままじゃ坂田さん達も危険だと思った僕は、その場から一目散に校門を潜り逃げ出した。

 


僕が逃げれば、みんなこっちに追いかけてくるはずだ!

 すると後ろから三人組が追いかけてくる。

 とにかく逃げるんだ!


 戦いにならないだけじゃない。
 このままじゃ僕は意識を失う。

 

 頭を抑えながら必死に歩いていると、三人も付いてくる。と同時に坂田さんまでついてきてしまう。




 ※



 早く……早く帰らなきゃ!
 次に倒れたら起き上がれる自信が無いんだ。


 このまま意識を失えば……
 僕は……女の子になってしまう! 



 三人は後ろから色々僕の悪口を言ってるみたいだけど、逃げることに集中していた。
 早く家に帰らないと、そればかり考えていた。


 丁度、公園に差し掛かったとき、急に僕の身体が前に吹き飛んだ。

 地面に転がった僕を三人は笑い飛ばすだけだった。


 蹴飛ばされたのか? それすらも分からない。




も、もう……か、身体が……思い通りに動いてくれない。

【赤木】

何だよ。無視して逃げんの?

もうやめてあげてよぉ! お願いだから!

【赤木】

うぜぇんだよ坂田! いい加減にしろよ!

きゃっ!

 赤木は坂田さんを突き飛ばした。その瞬間僕は叫んでいた。


やめろぉ!

【魚住】

ここまでするってことは、坂田って黒澤のこと好きなんじゃね?

【赤木】

おい! 黒澤! 公園で遊ぼうぜ。

 倒れる僕を起き上がらせたのは、赤木だった。
 その顔はとても怖くて、今にも意識を失いそうになった。



 その時――

あ? 今……黒澤っつったか?

 その声に振り返ると、僕は「あっ」と漏らしていた。

 その人はお兄ちゃんの友達の、怖いお姉さんだった。 
  

――――――――――――


 高校。廊下。



分かった。そのまま様子を見なさい。緊急を要すると判断した場合は早急に保護する事

待ってなさい凛ちゃん! あなたは私が守る!
――――――――――――――
ん~? お前さ。黒澤っつうの?

 あの怖いお姉さんだった。映画館に行った後にお兄ちゃんの妹さんだって言った……

あの人だ。

 

 今すぐ助けて欲しいと言いたかったけど、今の僕は凛なんだ!

なぁ。いじめられてんのか?

 凄い目の前で見られてる。僕は思わず顔を逸らすと、赤木が妹さんに「何だよこの人」って口を開いた瞬間、公園の中まで吹き飛び一発でダウンしていた。

てめぇら口の利き方がなってねーな。

クソガキが! くらしあげんぞ!

 すぐに逃げようとする魚住に名谷だったけど、すぐに妹さんに捕まった。一発殴るだけで二人は地面に転がった。


 圧倒的な強さだった。い、一撃だなんて……

なぁお前。もしかしてさ、兄貴いない? 黒澤の兄貴
 僕に質問してくるけど、あまりにも顔が怖くって……
 多分、睨んでる訳じゃないんだろうけど、僕には妹さんに喋る事が出来なかった。
おいっ! ま、待てよ。こっちは黒澤の兄貴の弟なのかって聞いてんだよ!
 そんな事よりも早く逃げないと……
 早く家に帰らないと、身体が動くうちに。
てめぇ。聞いてんのか? 無視すんなよおい!

 僕は何を言われようと、振り向かなかった。

 振り向くこともできないって言った方がいいかもしれない。

黒澤くん。大丈夫?
だ、大丈夫だから。お、お願い。こ、こないで!

おい。助けてやったんだろ? そりゃいくらなんでも礼儀知らずだろ。

その女の子もお前を心配してんのがわかんねーのか!

 まだ家まで遠い。だけどもう僕のリミットは限界に達しようとしていた。


 頭がクラクラしてまともに歩けない。

 塀にもたれかかりながらでも、僕は一生懸命足を動かす。

あ? なんだおっさん? 誰だお前。俺とやんのかおい!

 後ろを向いちゃダメだ。今の内に逃げるんだ。

 ケンカしているような声が聞こえてくる。何が起こってる分からないけど、僕はその間必死に逃げる。

黒澤くん……苦しいの? 私が家まで運んであげる。

ごめん! さ、坂田さん!

ここでいい。も、もう……僕についてこないで!

 僕を心配してくれているのに……

 だけど、こう言うしかなかった。


 その時、また頭に激痛が走ると、身体に力が入らなくなってくる。

 も、もう……持たない。



 家まで……もたない!

 ど、どこか隠れる場所。どこか安全に入れ替われる場所を……


 その時、マンションの入り口が見えた時、僕はそのマンションへと入っていた。

 ここで……見られない場所を探して……

あれ? ここお前ん家? もっと先じゃなかったのかよ


 まだ付いてくる。お願い……来ないで。

 僕は非常口っぽいドアを見つけると。最後の力を振り絞ってドアを開ける。
 そこは階段が上に続く場所だった。



お願い! これ以上来ないで。お願いだから!

 そう叫んでドアを閉めると、壁に持たれかかりながら目を閉じていた。


 もう限界だ……


 もう一歩も歩けない。

おい。待てよ! そこは家じゃねぇだろ。な?
黒澤くん……

 お願い……

 お願い。来ないで。

 僕が入れ替わってる間。入ってこないで!



 
 暫くして何も声が聞こえなくなる。入れ替わってる間は何も聞こえないし見えない。

 不安に駆られながらも、女の子に入れ替わっていく。


 そして僕は目を開くと、そこには……



 妹さんと坂田さんが、僕を見て驚いていた。
 

お、お前……
え……

 み、見られた……

 見られた。入れ替わる所まで全部……

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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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