プロット

文字数 2,420文字

起)
 主人公のアミーはアグノール王国の王都近くの町で暮らす12歳の世話焼き気質の女の子。王国は魔王によって脅かされており、暗いニュース続きだった。しかしある日、アミーはひとつの嬉しい報せを受ける。お母さんに、「新しくお腹に赤ちゃんができたから、あなたはお姉ちゃんなるのよ」と言われたのだ。
「やった! 憧れのお姉ちゃんになれる!」
 喜んでいたアミーだったが、突然、その身体が白く輝き始める。それは『光の奇跡』と呼ばれる特殊な力だった。その数日後、アミーは王宮へと招集を受ける。そこには自分と同じくらいの年齢の女の子が4人いた。
 突然の顔合わせに戸惑う5人の前に、アミーよりは少し年上の冷徹な目をしたイケメン王子ライオットが現れ、この5人は全員が預言者によって選ばれし勇者の姉の候補、『巫女』なのだという。奇跡とは、勇者が成長するまでその身を守れるように勇者の女系の肉親の能力として現れるものらしい。ただし、王国に伝わる史実によれば勇者はひとつの時代に1人で巫女も1人。どうして5人も巫女が現れたのかはわからないという。確かなのはアミーを含めるこの場の5人の中の妹弟(きょうだい)の誰か1人が勇者であるということだけだった。

承)
 王子に促され、全員が自己紹介を始める。4人は全員アミーと同い年だったが、それぞれ以下のようにバラバラの奇跡を持ち、出生も大きく異なっていた。
 ・水の奇跡を使える少女、アジール。王国を代表する富豪の1人娘。
 ・風の奇跡を使える少女、リリカ。母と妹2人を持つ長女。とても貧しい。
 ・土の奇跡を使える少女、チェシオ。一般家庭の末娘。
 ・火の奇跡を使える少女、マリオーヌ。国の中枢を担う貴族の長女。
 また、それぞれ性格も大きく異なっていた。
 アジールは可愛く自信家であるが自分が1番でないと嫌なワガママさがあって、リリカはクールで凛々しいが貧乏な自分へのコンプレックスから誰とも関わろうとせず、チェシオは心優しいが自分では何も決められない優柔不断さがあり、マリオーヌは真面目さと意志の強さがあるが自分しか信用していない。
 まったく統一性のない一同に不安を覚えるアミーだったが、その時、シャドウと呼ばれる魔王の手先の軍勢が王都に攻め込んできたとの情報が入る。さっそく出陣を命じられる5人だったが、アミーとチェシオは恐怖に動くことができず、アジールは「働くのは下々の役目」と眺めているだけで、王国を守ることが貴族としての義務と割り切ったマリオーヌと家族を養うために報酬の金銭を頼りにしているリリカしか戦えていない。
 たった2人では戦力不足であり、その隙を突いた何体ものシャドウがアミーたちに襲い掛かってくるが、間一髪のところでライオットが助けてくれる。ライオットは王宮の騎士たちの指揮を取ってシャドウたちを追い払った。
 恐ろしい経験を経て、騎士たちがいるなら自分たちが戦う必要はないんじゃないかと王子に迫るアミーだったが、しかし騎士たちだけでは守るのが精一杯でシャドウたちが王都近くの村に構えた拠点を浄化できないから、5人の持つ奇跡の力だけが頼りなのだと言われる。
 それからも王子の要請で5人は戦場に立たされるが、「私こそが真の勇者の姉である巫女なのよ」と譲らない高慢な態度のアジール、そんな高飛車な彼女と口をきかないリリカ、1人ですべての敵を相手取ろうとするマリオーヌ、戦いの恐怖に怯えるチェシオ、そしてそんな4人の誰とも連携を取ることのできないアミー、息の噛みあわない5人の戦いは連戦連敗。常に王子の率いる騎士たちに助けてもらうばかりの日々が続いた。

転)
 ある日の戦場で、アミーたちのチームワークはいつも通りバラバラでシャドウたちに押されていたが、アミーはもはやそれに慣れてしまって、どうせ負けてもライオットが助けてくれるのだからと気が緩んでいた。しかし、その日の戦いの後、ライオットは倒れ伏してしまう。
 もともとライオットは病弱であり、連日の無理がたたったのだという。頼りきりになってしまっていた罪悪感と、次の日の戦場には自分たちを助けてくれる存在がいないという恐怖に5人は追い詰められてしまう。
 そして翌日、攻め込んでくるシャドウに対して5人はいつも以上に動けないで惨敗していた。代わりに出てきた王宮の騎士たちだったが、しかしいつも指揮を取っていた王子がいないことでこちらも負けそうになっている。
 アミーの背筋が凍った。このままでは王都の中にシャドウが入ってしまう、そして大好きなパパとママ、さらには命を授かったばかりの赤ちゃんまでもが襲われてしまうのだと。
「協力しよう! 私たちの目的はひとりひとり違うかもしれないけど、守るべきものは同じでしょ⁉ 王都を、私たちのまだ見ぬ妹弟(きょうだい)を守らなきゃ!」
 その言葉に、バラバラだった5人の考えがようやくそれぞれの立場を超えて一致するようになる。5人は自分たちの奇跡を効率よく、時には組み合わせて使い、シャドウの大軍を圧倒して追い払う。そしてとうとうシャドウの拠点へと攻め込んで、5人の奇跡を合わせることで発現した巨大な奇跡の力で拠点を浄化することができた。
 
結)
 5人の結束で得た勝利を経て、彼女たちは少しずつお互いに気を許せるようになっていた。また、今回倒したシャドウたちは闇の王の手先に過ぎずこれからも戦いは続くと王宮の人間に聞かされたが、それでも自信のついた5人は前向きにその事実を受け止める。
「これからも私たちの妹弟(きょうだい)を守るためにがんばろう!」
 まだまだ本当の意味で仲良しにはなれない5人だったが、その1つの目標のために一致団結することを誓い合った。
 4人と別れアミーが1人でいるところに、病床から回復したライオットがやってくる。
「君が他の4人を引っ張ってくれたんだね、ありがとう」
 普段の冷徹な目をしている姿とはうらはらに優しく微笑んだ王子に、アミーはドキリと胸を高鳴らせるのだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み