第3話(10)

エピソード文字数 1,349文字

「は? え? なぐ、られた……?」
「リョウ、その人はお前の欲を満たす道具じゃねー。てめぇには指一本触れさせねーぞ!!

 敵共が呆気に取られている隙に、全力疾走。仰向けになっている少女を素早くお姫様抱っこし、横にある小道に走り込んだ。

「この人のために、絶対にレミア達が来るまで逃げてやる……! 根性見せろっ、色紙優星!!

 疲れ果てている肉体に鞭を打ち、駆ける。駆ける! 駆ける!!
 もうヘトヘトでスタミナが殆どなかったのに、全然疲れない。これからフルマラソンを完走できそうな程、力が湧いてくる。

「ははっ、この調子なら1時間でも逃げ回れるぞっ。優星やるじゃないか!」

 俺は微苦笑を浮かべ、今後のルートを計算しつつ、閑静な住宅街を走り抜ける。
 ヤツらの姿は見えなくなったが、あちらはこちらの居場所を特定できるからな。見つかったら入り組んだ道に入って翻弄できるよう、そういうのが多いトコを進んでいこう。

「……ここは、右側がいいな。左側も捨てがたいが、こっちにしとこう」

 その方向には、若干だが該当する進路が多くある。この『若干』が、生死を分けるかもしれないよな。

「…………大和撫子さん、安心してくださいね。巻き込んだ人間が言うのは変なんだけど、必ず守るからっ!」
「……………………ぅ……。私は、どうなって……?」

 気合を入れ直していると、美少女さんの瞼が上がった。
 この人の声は、割としっかりしている。弱すぎて相手にされなかったのか、大した怪我がないようで一安心だ。

「アナタは、魔物? にやられて気絶してたんですよ。それで今は、俺が抱えて逃げているところです」
「…………思い出したわ。貴方が助けてくれたのね」

 暫し考え、前後の記憶が接合。理解した大和撫子さんは品よく微笑み、小さく顎を引いて謝意を伝えてくれた。

「こっちの責任なんで、そういうのは不要ですっ。ギアをもう一段階上げるから、しっかり掴まっててください!」
「護られるというのも、たまには悪くないわね。お願いします」

 彼女は左手首にある虹色のブレスレットのズレを直し、丁寧に一礼。俺が走りやすいよう、身体を寄せて服を掴んだ。

「俺は無力同然なんですけど、もうすぐ仲間が参戦しますっ。彼女達は異常に強いんで、安心してくださいねっ!」

 不安を少しでも減らすため、駆けながら予定を説明する。
 その職業の頂点に立つ者が、2人もいるんだ。全次元に敵なんていない。

「仲間が来れば、100%勝てます。それまで逃走劇に付き合ってくださいねっ」
「ええ、頼りにさせてもらいます。と返事をしたかったのだけれど、そうさせてくれそうにないわ。あちらは本気になったみたいだからね」
「ぇ? 本気って――うわあっ!?

 真後ろにあった一戸建てが一瞬にして粉々になり、ボスと呼ばれていたムキムキの男が部下を引き連れ歩いてくる。
 逃げ切れると思っていたが、所詮自分は人間だ。全力を出されたら小細工は無意味で、すぐ追いつかれるのか……。

「ははは、こりゃどうにもならないな。…………少女さん、アナタだけでも逃げてください」

 仕方、ないからね。俺は覚悟を決め、巻き込んでしまった人に話しかけた。
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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