第21話 バランスとれた、からだのパーツ

文字数 790文字

 午後の競技は体力に一ひねり入れたゲーム系の競技が大半だった。おそらくそういう競技も出れば日奈は1位になるのだろうが、さすがに白団は遠慮して日奈を外した。日奈の出番は最後のリレーまでない。
 すると、白団の選手たちは2位には結構なるのだが、見事なまでに1位を取れる種目が無くなり、せっかく騎馬戦でもぎ取った大量得点をどんどん食いつぶしていく形となった。結局、どの団も最後のbye-byeリレーに運命を託すこととなった。
 
 リレーの選手は学校指定の体操着ではなく、全員陸上競技用のランニングシャツとパンツを着用する。‘本気で走る’ための服だからだ。陸上部から借りる。
 そのいでたちで日奈がすっ、とトラックに立つと、各団の応援席からため息交じりの声がちらほら聞こえた。1年生女子の憧れの声。2・3年女子の頑張れという感じの声。そして、学年問わず、日奈に憎からぬ思いを寄せている男子共の声。
 だが、そういう感情を抜きにして、日奈の容姿はアスリートとして完璧なものだった。背が低くそれに応じた四肢の長さしかないが、バランスの取れた体のパーツの配置がなされ、それらの全てが健康に栄養を吸収した骨格とインナーマッスルに支えられている。最初は邪な眼を向けていた男子共も、競技者としての日奈の美しさに恥じ入っていた。
 白団の第一走者はバド女子部2年の金田。日奈以外唯一女子で選ばれた選手だ。つまり、全団で女子は日奈と金田だけ。それだけ金田の走力が高いことが分かる。因みに、女子バド部は‘オリンピック代表の日奈の母校なんだから!’と気合を入れ、秋の区大会で団体優勝を執念でもぎ取った。出場できない日奈も飛び上がってその快挙を喜んだ。日奈は練習に参加できなくても合波高校のバドミントン部が大好きだ。ただ、男子部がもう少し奮起してくれればという欲もあるが、今日の騎馬戦の奮闘でよしとしよう、と思っていた。
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