俺は幼なじみから家に誘われる

文字数 462文字

公平(こうへい)、このあとわたしんち、来ない?」

 放課後、高校の帰宅中、幼なじみの速水千夏(はやみ ちなつ)は、唐突にそう提案した。

「え、いいの?」

 俺、国松公平(くにまつ こうへい)は、彼女のことが好きである。

 ずっと隠してきたことではあるが。

「おじさんとおばさんは来週まで帰ってこないんでしょ? こっちもパパとママはしばらく演奏旅行だし、どう?」

 千夏の両親は音楽家だ。

 けっこう有名らしくて、俺らが小さいころから、仕事で家を留守にするなんて当たり前だった。

 俺の両親も仕事人間だから、お互いの家を行き来して遊ぶのも、珍しくなんてなかった。

「そういえば、この間の模試の結果、千夏に見てもらいたいと思ってたんだ」

「お、いいよ~。じゃあ、着替えたら、うち来てくれる?」

「おお、飯はどうする?」

「用意しておきますって~」

「千夏は料理もうまいからな~」

「持ち上げちゃってえ、なんかヘンなこと、考えてんじゃない?」

「おいおい、勘弁してくれよ~」

「ま、いいよ。じゃ、待ってるからね~」

「うぃ~」

 気がつくはずなどなかった、ヘンなことを考えていたのは、彼女のほうだったということを――
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