3日目の邂逅1 新事実!?宇宙人はイッヌ対策に強い!

文字数 4,609文字

 ミーラさんたちが来てから三日目の朝。今日は月曜日だから学校だ。
 僕は寝ぼけたままパジャマから着替えて1階の洗面台に行く。むにゃむにゃ。
 こう見えても僕は夜更かしさえしてなければ目覚めはいい方だ。むにゃむにゃ。へへへっ。

 顔を洗って台所に行く。
 お母さんにおはようと挨拶して冷蔵庫から「背がぐんぐん伸びるグレート成長水」を出して飲む。世間一般では牛乳と呼ばれている飲み物だ。
 コップを流しに置いて別のコップを持って隣のダイニングルームに行く。冷蔵庫にお茶はなかったので既に誰かが出したのだろう。
 ダイニングルームではすでにゆずとミーラさんたちがいた。
ニュポ。ニュポ。ニュポポ?
あっ、おにいちゃんおはようー。
ニュポ。ニュポー?ニュポォー……。
ニュポー!
ゆず、タコ、ミーラさん、おはようー。
何やってるの?
会話の練習ー!まだ全然分からないけど毎日練習しようかなって。
 ゆずのやつ、ニュポ語の習得諦めてなかったのか……!
 ……ここで無理だというのは簡単だが、妹の夢を壊すのはよくない。
 サンタがいないって言っちまうようなもんだ。
 ここは兄らしく無理だとは言わないでおいてやろう。さすが俺。ヘッ。
ふあぁーーー。ゆずちゃんは偉いわねー。翻訳機がある中、キララの言語勉強しようって人は奇特だかラ。
あーおはヨーおはヨー。ねっむう。
 ミーラさんは生あくびをしながらテーブルにべたーっと張り付いている。これは朝弱そうだ。
ニュポーー!
 ミーラさんの言葉を肯定するかのようにタコが触手をゆずに向ける。
 ミーラさんが僕の頭をなでていたし、ゆずの頭を撫でるつもりかもしれない。
 ふむふむ。宇宙人と共通の文化もなにげにあるな。

 ……が!
あっ!
 ゆずはビクッと体を震わせて身を引いてしまった!
ニュポォ!?
あ、あはは。私、ご飯もう食べたから学校行くねー。
ミーラおねえさんたちまたあとで!
おかあさんお皿、横に置いとくねー。
いってきまーす!
 ゆずは慌てて食器を片付けて玄関に向かっていく。
 なでなでを拒否されたタコがニュポォォォォとうめきながら床に伏せている。
あららーー?
これはきっとあれだね。怖がりのゆずがずっとタコに捕まってたからタコの触手がトラウマになっちゃったんじゃないの。
ほら、闇の遊戯のときにさー。
!?
 タコはさらにォォォォォオとうめいている。正直寝起きにちょっとうるさい。
 僕は台所からご飯を茶碗によそってきてテーブルの上の「ゴールデン玉子焼きオムレツ日本風味」に醤油をかけながら続ける。
ほぉうらああ!誰かさんがゆずの首を折るとか言っちゃったからだよぉ!
あの時ずっーーーと泣いてたじゃんゆずー。可哀想になー。
その間ずっとタコに捕まってたんだもんなー。タコの触手が怖くなるよなー!
 あの時、僕はションベンを「ちびる」という恥をかいたのでお返しに意地悪を言ってみた。
 「ちびり」の恨みはしつこいのだ。
 ……ミーラさんは否定してくるかなーと思ったけど。
そうよネ。私がやりすぎちゃったからよくないのよね。
ごめんねゆずちゃん。ごめんねキララ。
 そう言って椅子から降りてタコの隣でうめき始めた。
 二人揃ってォォォォォォォオってうっさい!
 うーん。いい過ぎたかな???
ま、まあ、ほら、ええっと、うん、そう!そうそう!
ゆずは怖がりだからあんま気にしないでよ!
あいつイッヌ、ああっ犬ね、犬が怖くて近づけないくらいの怖がりだからさ!
じゃ僕もご飯食べたから学校行ってくるから!
 台所の奥のおかあさんに行ってきまーす!を言って僕は逃げるように家を飛び出した。

 通学路を歩いているといつも通っている道が工事中で通れなくなっている。
 これは右から迂回しなくてはいけない。
 ……ということはきっと。

 ああ、やっぱりだ。ゆずがある家の前で立ち止まっている。
 本当はこっちの道を通った方が小学校にも中学校にも近い。だがこの道はゆずに限らず迂回する小学生が多い。
 ここには真っ白で大きなイッヌがいて低学年、中学年の小学生は怖くて通れないことが多いのだ。
 ゆずが低学年の時は僕が付き添って一緒に学校に行ったけど、この道は本当に怖がっていた。
あっ・・・おにいちゃん・・・。
 ゆずはバツが悪そうにこちらを見ている。
 ゆずの近くにいくと

 ウウウウウウウウ!ワンワンワン!!

 いつにもまして吠えてるイッヌが見えた。
 イッヌが寝ていたりぼーっとしていればゆずもなんとか通れるんだけどこんなに吠えていたらもう無理だ。
よしよし。にいちゃんが一緒に通ってやるから大丈夫だ。
 するとそこに近所のクソガキどもがやってきた。
A:おっ!佐藤のやつ!また犬にビビってるぜ!
 ゆずに向かって失礼なことを言ってきたこいつはクソガキA。真ん中のキッズだ。3人組のリーダー格で率先してゆずに嫌がらせをしてくる。
B:ゆずちゃーーん!おはよーー!!
 ゆずに挨拶したこいつはクソガキB。向かって左のキッズだ。基本的には人畜無害だがちょっと頭のゆるい子で何をしでかすか分からない爆弾キッズだ。
C:あはははは。佐藤さんは相変わらず怖がりだなあ。僕のように優雅に歩けば犬なんて寄ってこないのに。
 ゆずに生意気なことを言ってくるのはクソガキC。向かって右のキッズだ。昔はもう少し大人しいキッズだったが、いつからか髪の毛もじゃもじゃなのにアイドルのような立ち振舞をするようになったキッズだ。

 昔は僕も彼らを近所の男の子たちと呼んでいた。それがいつしか悪ガキどもになり、ゆずに棒で拾ったイッヌのうんちっちを近づける事件が起きてからはクソガキどもと呼ぶようになった。
 なんせすぐゆずをいじめようとするものだから油断がならない。
竹田くん、おはよー。
もう二人はいじわるなこと言わないで・・・。どうしてもこわいんだもん。
A:そんなこと言ってから佐藤はいつまでも怖がりなんだよ。なー?
おいおい。僕の目の前でゆずをいじめるとはいい度胸だな。
また君たちのお母さんにお願いしてゆずの前でお尻100叩きしてもらうよ!
A:な、なんだよ!小学生の喧嘩に兄貴が出てくるとかダメだろ!うちのかーちゃんに告げ口するなんて卑怯だぞ!卑怯者!
男の子3人でうちのゆずをいじめておいてよく卑怯なんて言えるなあ。
ほら学校いけ。シッシッ。
C:はっはっは。おにいさん。竹田くんは挨拶しかしてないから3人じゃありませんよ。馬鹿だなあ。
ほーう。じゃあ君たち2人のお母さんに連絡かな?
A:あっバカ!余計なこと言うな!
ちっ。じゃあ先行くからな!佐藤は兄貴に抱っこでもしてもらえ!
B:ゆずちゃん。またねー!
 ふう。やっといなくなったか。お尻100叩きが通じる間は追い払うのが楽でいいな。
あはは・・・。笑われちゃった。
 僕はゆずの手を引いてイッヌの前を一緒に通った。もちろん気にするな!とひと声かけてね。

 ……という出来事があったことを学校が終わって家に帰ってからミーラさんたちに話した。
なるほど!そのクソガキどもを退治したらゆずちゃんは元気になってくるかナ!?
だーーーめーーーですーーー。どうせ闇の遊戯って言い出すんでしょ!?
クソガキとは言え近所の子どもたちが3人も宇宙人に連れ去られて行方不明になるとか大問題だから!
や、やーね。おねえさんがそんな物騒なことするわけないじゃない?♡
 この人は本気で闇の遊戯にクソガキどもを放り込みかねない。
ニュポ!ニュポポポ!
あー。そうネ。その犬をどうにかしたらバカにされることもなくなるワね!
確かにイッヌが怖くなくなったらいじわるの種が一つなくなるけど……不安だなー。
 そうこう話をしているとゆずが帰宅してきた。
 僕は帰宅部だけど大抵は小学生のゆずの方が帰ってくる時間は早い。今日遅いのは日直 でも当たったか、放課後に友達とおしゃべりをしていたか、イッヌが怖くて大きく遠回 りしてきたかどれかだろう。
ただいまー。
おっかえいなさーイ、ゆずちゃん!
朝はキララが驚かしてゴメンね。
こんな変なタコが突然迫ってきたら怖いでしょう。
!?
すみません。私こそびっくりしちゃって。
タコさんのおててにまだ慣れてなくて。
少しずつ慣れるのでよろしくニュポ!
ニュポ!
私も前にゆずちゃんを怖がらせてしまったからお詫びを兼ねて何かしてあげたいのだけド、今ゆーたくんからゆずちゃんは犬って動物が怖いって聞いタわ。
犬のせいで学校に行くのも大変なのでしょう?
ああ。はい。犬さん好きだけどどうしても怖くて。吠えられたら一人じゃ前も通れなくて。
通学路の犬さん、白くてとっても大きいんですよ。
じゃあ!こういうのはどうかしラ!?
これこそ宇宙の叡智の結晶!絶対☆撃退ノ絶対☆消滅銃!
 ミーラさんはそういうとよくSF漫画やSF映画に出てくるレーザー中のような銃をタコの背中から取り出した。
これはすごいわヨー?犬に吠えられてもこれで撃てば絶対☆消滅!
分子レベルで分解します!チリも残らないので星にも優しい!エコ♡
えええっ。そんな怖いもの犬さんに撃ちたくないよぉ。
あら?そうなノ?私の星だと野生の動物が襲い掛かってくるので子供の頃からこの手の武器は必須でした!
 こっわ!アマゾネスか女ガンマンかよ!
ミーラさんの出身の星って銀河連盟の加盟国じゃないの?物騒だなー。
これだけ科学力があったら元から退治できそうなのに。
まあ文化の一環みたいなものですねネー。やろうと思えば完全駆除できるけド、文化的理由で居てもらっているってところかな?
人間と仲のいい動物も居て狩りを手伝ってくれるのよん♡
ここの犬はちょっと文化が違いそうね。
もう少し平和な方法がいいな。
例えば犬さんと仲良くなれるといいのだけど・・・。
おお!それならちょうどいいものがありますヨ!
これこそ宇宙の叡智の結晶!ペットと以心伝心すごすぎ笛ー♡
まーたまんまじゃないか……まんま……まんまなのか?
 ミーラさんの出した「ペットと以心伝心すごすぎ笛」はホイッスルのようなもので真ん中にボタンが一つついていた。
これは今の状況にぴったり!
なんと動物を登録して命令して笛を吹けばその命令を絶対聞いてくれまーす!
しかも持ち主に攻撃するということもできなくなるノ♡
ボタンを押しながら笛を吹くと命令を解除できるのよ。
おお!いいじゃん!!
すごーい!
命令はある程度大雑把でも構わないノ。でも大雑把すぎたり、逆に細かすぎて動物の頭で処理できなくなったらいうこと聞いてくれなくなるワ。
注意点は2つ。
1つは命令したままだとその命令を守ることを優先するから最後は解除してあげること。「動くな!」って命令すると自分の意志で動かなくなってしまうわ。
もう1つは「噛み殺せ!」といったような危険な命令も実行してしまうノ。危険な命令はしないでネ。
そ、そんな怖い命令はしないよー。気をつけます!
動物の登録はオルタナボールで行うから今しちゃうわ。近所の大きくて白い犬って条件でサーチすればすぐ見つかるはず。
ユーザーはゆずちゃんに限定しておくわね。他人に悪用されるとまずいかラ。
えー。僕はー?
うーーーん?調子のって危ない命令しそうだから様子見で♡
ちぇっ。まあいいか。せっかくだし試してこようぜ!ゆず!
ありがとうございます!ミーラさん!試してきます!
最後に!笛はちゃんとゆずちゃんが持っててネ!有効範囲は55メートル位だから!
いってらっしゃーい!
 こうして僕たちはイッヌの元へ向かった。
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登場人物紹介

名前:佐藤 勇太
通称「ゆーた」。中学2年生。本編の主人公。
いわゆる中二病でなにごとも自分なりにカッコイイ呼び方で呼ぼうとする。考え方も中二病で偉大な正義や犠牲ある勝利に憧れているが、自分だけはズルをしても許されると考えている。
素直な気持ちを伝えることは恥ずかしくてできないが、家族のことは大好きである。

名前:佐藤 優澄(ゆずみ)
通称「ゆず」。小学5年生。
兄とは異なりしっかり者の女の子である。ゆーたが中二病ネーミングをすると「それは○○だよ、おにいちゃん!」と訂正してくれる。
まだ幼いため怖がりで人見知りな一面もある。

名前:ミーラ・シャーマリード・コットン・ゆるゆる
通称「ミーラ」。ふわふわ系宇宙人。羊のような角とふわふわな毛玉が特徴な宇宙人である。
ゆーたとゆずが出会った宇宙人の一人である。普段は優しく余裕を持ったおねーさんの立ち振舞をしているが、怒ると何をするかわからない。
宇宙宗教「リブレス」の信徒で神への祈りとして華麗な舞を舞うことができる。

名前:雲母(きらら)
通称「タコ」。タコ型宇宙人。まるで地球のタコのような見た目の宇宙人である。
ゆーたとゆずが出会った宇宙人の一人である。見た目に反して乙女でとっても優しい。
宇宙宗教「リブレス」の信徒でミーラの親友。

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