第14話  触手おそるべし

文字数 1,164文字

光一郎は触手の群れをくぐり抜け、ディザイアの左脇腹に手の甲を打ち付けた。

殴り飛ばされたディザイアは触手をバネにし、ビルの壁を蹴り、飛行機のプロペラの様に全身を回転させて突進した。


コンクリートの地面が(えぐ)れ、瓦礫(がれき》と土の砂嵐ができあがった。


光一郎はケーサツの男を抱えて表通りに出て、砂嵐を見て逃げる中年男性に

「このおじさんを頼むよ!」

、と押し付けてまた路地裏へと戻った。


光一郎は粗々(あらあら)しい光のバリアを見にまとって砂嵐に突っ込んだ。



「覚悟しろディザイア!」


不意に砂嵐の中に影が写りこんだ。
光一郎がそれに気付いた瞬間彼は影の正体、太い触手になぎ飛ばされる。


「…………!! バ、バリアを張っているのにこんなにも痛いだなんて!」


光一郎は何とか受け身をとって立ち上がり、ディザイアの方を見た。


表通りに出たディザイアは、両腕を交差させ、そのまま一気に広げた。

砂嵐は四散し、野次馬達の目や腕や脚の表面を切り裂いた。



「やめろ!関係ない人を巻き込むな!!」

ディザイアは触手を伸ばしながら答えた。


「関係なくはない。俺の目に付いたものは全て俺のものなんだ。
俺が欲しい!と思った時、既に欲しいものは俺のものなんだ。」

「この触手によってな!!!」


逃げ遅れた周囲数百メートルの中にいる人々は触手に手繰り寄せられて、ディザイアに吸収されていった。




どうすればいい?僕もわざと吸収されてあいつの体内から攻撃するか?
だめだ、そんなの成功するか分からないしできたとして脱出する方法も分からない。

あいつが触手を伸ばしている今がチャンスだ。
ディザイア本体はおそらく今までの妖魔とそう変わらないはず……




光一郎は両手から自分の腕と同じぐらいの長さの光の刃を出し、触手の根元を3本切った。


次の攻撃を避けるために後ろに跳び、着地した。


が、足下がグニャリと歪み、光一郎は尻もちをついてしまった。


「この地面どうなってるの?!」


「よく見なよ光一郎く〜ん。君はずーっと俺の触手の上を走って跳んでいたんだよ。」


粉末状になったコンクリートと砂埃(すなぼこり)でカモフラージュした触手から枝分かれした触手が、数百の槍となって代わる代わる猛スピードで光一郎を突いた。



「早くそのバリアを解けよ光一郎君。そしたら俺が吸収してやるぜ。
俺と1つになれよ。この体最高だぜ。」


ニヤニヤと笑うディザイアの後頭部を何かが襲った。


「なんだちくしょう!」


ディザイアが振り返ると、白い太陽から無数の光の群れが空をかけてくる。


「見よう見まねだけど、ネイビーの技ができた。絶対に僕1人でお前に勝ってやるぞ!」
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登場人物紹介

南郷光一郎

本作の主人公。11才。臆病だが正義感があり、困っている人がいれば敵わない相手にも立ち向かうことがある。

左側一世

見た目は中年の紳士だが、その正体は神代の国の神である。白の三宝珠を取り戻すべく地上に降り立った

右側一世

見た目は少年だが、その正体は神代の国の悪魔である。魔神から地上を元に戻す為に派遣された

妖魔帝王ミルベウス

地上に跋扈する夕闇族のボスであり、地下世界の帝王。地上を征服し、天界を支配することを目論む

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