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エピソード文字数 615文字

 ――1575年(天正3年)

「光秀殿は“正親町天皇より惟任(これとう)の賜姓と従五位下日向守に任官”されたそうございますよ」

 斎藤家より仕える侍女の多恵は情報通で、色々なことをあたしや帰蝶に話した。

「坂本城主となられ、数々の功績を残されたそうにございます」

(そうか。多恵は物知りであるな)

「光秀殿は帰蝶様の従兄弟であらせられます。斎藤道三殿にお仕えしていた頃より存じ上げておりますゆえ、城主となられ嬉しゅうてなりませぬ。これも御殿様のお陰でござりますな」

(そうであるな)

 帰蝶は嬉しそうに笑みを浮かべながら、多恵の話を聞いていた。

 光秀や秀吉、徳川の勢力が徐々に増し、あたしは一抹の不安を感じていた。

「御殿様は“権大納言に任じられ、右近衛大将を権任”することとなったそうですよ。将軍就任式の儀礼挙行されたのちには、いよいよ『上様』となられるのですね。ほんに、喜ばしい」

 多恵の自慢げなお喋りは留まることなく延々と続いた。

 ――その後、信長は“信忠に織田家の家督ならびに、美濃、尾張などの領国を譲った。”

 これで信長が戦いの場から退いてくれる。

 あたしはホッと胸を撫で下ろす。

 だが“信長は家督を譲ったあとも、織田政権の政治に関わり、全軍を総括する立場に変わりは無く、天正4年には琵琶湖湖岸に安土城の築城を開始した。”

 ――戦国の世は、まだ終わりを告げることはなかった。
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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