第34話夏子の復讐③

文字数 1,116文字

ショーケースが割れる音が、かなり大きい。
不審に感じた近隣の住民たちが、和菓子店の前少しずつ集まって来た。

「オラオラオラ!」
ヤンキーの野卑な声がしたと思ったら、灯油の匂いもする。

和菓子店の別の出口から望月昇とヤンキー三人組が大きなマスクをして、出て行った。
(麻友はしっかり動画を撮っている)

次の瞬間だった。
店の中から、大きな火の手があがった。

「火事だ!」
集まって来た住民が騒いだ。
「消防に!」
(住民の誰かが消防署に連絡を取っている)

警察官が駆け付けて来た。
(由紀が通報してから約10分後)
由紀が、警察官に叫んだ。
「中に人がいます!」

しかし、火の回りは凄まじく、とても中には入れない。

麻友が由紀に声をかけた。
「私たちがここにいても仕方ない」
「望月昇とヤンキーの動画は、しっかり撮った」
「一度、アパートでみんなで相談しよう」

由紀は悔しそうな顔。
「店のおじいさんとおばあさん・・・逃げていればいいけど」
しかし、自分たちでは、何もできない。
麻友と由紀は、松戸のアパートに帰ることにした。

一方、夏子と芳樹は、望月昇の自宅(浅草)をまず確認した。
(自宅⦅浅草⦆情報と実家⦅茨城県取手⦆情報は、清水亜里沙からのもの)

夏子
「なんてこともない普通のアパート、少し高めかな」
芳樹も同じ判断。
「ただ借りて住んでいるだけだろ」
「取手の実家を見よう」

茨城県取手にある、望月昇の実家は古い農家だった。
夏子はうなった。
「古い・・・けれど・・・汚い」
「庭は雑草だらけ」

芳樹は、清水亜里沙のレポートを読む。
「昇は次男で・・・長男の一夫は農協勤め、営農係だとさ」

古い実家には誰もいそうもないので、5分ほど歩いて望月家の畑を見に行った。

芳樹は顔をしかめた。
「うわ・・・酷いな・・・」
「何もやっていない・・・広いには広いが」
「耕作放棄地か?長男は農協の営農係なのに?」

夏子と芳樹が、しばらく眺めていると、肥料会社の軽四が通りかかった。

夏子は、一応確認した。
「この畑は、望月さんの?」
肥料会社の軽四から、若い男が答えた。
「はい、そうなんです、酷いでしょ?」
「近所から文句も出ているのに、一夫さんも、どうにもできないんです」
「親父さんとお袋さんの時には、きちんと出来ていたけどねえ・・・」

芳樹は小さな声で聞いた。
「そのご両親は?」
肥料会社の若い男も、声を低くした。
「何でも、親父さんは、次男の昇さんと喧嘩になって、腰の骨を折って入院」
「お袋さんは・・・ガンになって闘病中」
「一夫さんも、土日は病院かけもちで、とても畑まで手が回らない」

肥料会社の軽四が去ると、芳樹のスマホにメッセージが入った。
麻友からだった。
「相談したい、すぐに戻って」

芳樹と夏子は添付された動画に見入っている。
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