48・大祭司の中庭

文字数 725文字

「ナザレの、イエス…あの男は、とうとう我々の我慢の限界を超えた」
「その通りだ。大勢の前で、我々を小ざかしい口先で愚弄しおって」
「赤っ恥をかかされたとは、この事だ」

「今すぐ、やつを叩き殺してでもやりたい所だが」
「そうなると、やつを信奉する民衆が騒ぎ立てるかも知れん…」
「やはり、ここは形だけでも裁判を通して罪を着せねばな」

「そこで一つ…やつの弟子の誰かに、裏切りを働かせるというのはどうだ?」
「弟子を裏切らせるだと?ナザレのイエスのか?」
「ああ。弟子から裏切り者が出たとなれば、あいつの信頼もがた落ちだろう…」

「…なるほどな。して、誰に裏切らせる?いいあてでもあるのか?」
「一人、使えそうな奴がいる。噂では、普段から他の弟子達と争いが絶えんとか…」








「僕に、何か用?」
「おお、よく来てくれた」
「イスカリオテのユダ…と言ったな」
「少し、お主に話があってな。…この事は誰にも言ってないだろうな」

「うん、言ってないよ。それで話って?」
「それでいい。それでお主は、普段からナザレのイエスとその弟子達と仲が悪いとか」
「ふふ…まぁね」
「そこでだ。お主に頼みがある。お主の手引きでナザレのイエスを我々に引き渡して欲しい」

「あんたたちに引き渡すの?僕が?せんせーを?」
「そうだ。どうせ、やつはもう永くはない」
「ああ。我々を完全に敵に回したからな」
「今のうちに我々に味方しておいた方が、今後お主の為になる。イスカリオテのユダ」

「それに、何もただでとは言わん」
「え?お金払ってくれるの?」
「そうだ。銀貨30枚。ナザレのイエスを我々に引き渡したら」

「お主に、支払おう」
「ふーん…」





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