第1話
文字数 545文字
「モヤモヤする」
夕闇に埋もれてしまった薄暗い部屋。そこに俺の声が染みのようにぽとりと落ちて、やけに響いたからどきりとした。腕時計を見ると十八時過ぎ。もうここを出ないと間に合わない。ため息をひとつつく。隣で寝ていた優香が回してきた腕を邪険にならない程度に振りほどいて、灯りをつける。たいした光でもないのに、眩しさが刺してくるように感じて思わず目を細めた。
「もう帰るの? 親はまだ帰ってこないからもう少し一緒にいてよ」
優香が寝ぼけた声で甘えてくるけれど、俺はにっこり笑って答えた。
「悪い。今日七時から家庭教師 なんだ」
ベッドの下に放り投げた白いシャツを拾って着る。しわだらけでくちゃくちゃだけど、袖を通してしまえばとりあえず肌に馴染む。
「タカヒロ、カテキョなんてやってんだ」
「成績が悪いから、親にやらされてんの」
キャミソールとショーツだけという、男からみたら最強の挑発姿。それを惜しげもなく晒して優香が寝ぼけた顔のまま、ふふんと笑う。優香は高校のひとつ先輩で、先月呼び出され告白された。丁度彼女もいなかったし、顔も結構好み。なによりこうしてヤラせてくれるから断る理由もなくてつきあっている。
そこまで考えてなぜか
夕闇に埋もれてしまった薄暗い部屋。そこに俺の声が染みのようにぽとりと落ちて、やけに響いたからどきりとした。腕時計を見ると十八時過ぎ。もうここを出ないと間に合わない。ため息をひとつつく。隣で寝ていた優香が回してきた腕を邪険にならない程度に振りほどいて、灯りをつける。たいした光でもないのに、眩しさが刺してくるように感じて思わず目を細めた。
「もう帰るの? 親はまだ帰ってこないからもう少し一緒にいてよ」
優香が寝ぼけた声で甘えてくるけれど、俺はにっこり笑って答えた。
「悪い。今日七時から
ベッドの下に放り投げた白いシャツを拾って着る。しわだらけでくちゃくちゃだけど、袖を通してしまえばとりあえず肌に馴染む。
「タカヒロ、カテキョなんてやってんだ」
「成績が悪いから、親にやらされてんの」
キャミソールとショーツだけという、男からみたら最強の挑発姿。それを惜しげもなく晒して優香が寝ぼけた顔のまま、ふふんと笑う。優香は高校のひとつ先輩で、先月呼び出され告白された。丁度彼女もいなかったし、顔も結構好み。なによりこうしてヤラせてくれるから断る理由もなくてつきあっている。
そこまで考えてなぜか
あの人
の顔が急に頭に浮かんだ。首を軽く振って慌ててそのイメージを振り払った。