俺のガイアネミオ・グラウダがフロンティウスマンマースなわけがない

文字数 1,627文字

 先ほどから俺のカラダが地震のように揺れている。一体何事かと思うだろうが、これは俺の日常だ。俺は布団を頭から被って、この容赦のない地震に対抗する。
「もう!いつまで寝てるのだにゃん!」
「… ……」
「もう七時でござるのです!」
「… …うるせぇなぁ。まだ寝てるだろうがよう」
「もう。朝ごはんが冷めてしまうのでアルよ!」
 早朝にも関わらず部屋の中に響き渡る声。毎日毎日、本当に飽きもせずよく続くものだ。この俺こと、山本ファムファタールは花の十七歳。俺には五歳のときからお節介な幼馴染がいる。もう話の展開が読めてしまうだろうが、この声の主がそうなのである。俺の掛布団が、もの凄い力で強引に引っぺがされて、俺はベットの上で赤ん坊のように丸まった姿をお披露目してしまった。
「冷めたご飯は美味しくないんだから!」
 鳥目になっていた俺の目が、徐々に朝の明るさに慣れていくに従って、周囲の輪郭を明らかにしていく。俺の眼の前で両手を腰に当てて仁王立ちしたまま見下ろす人間がいた。
 鍛え抜かれた逆三角形のテカった黒々とした筋肉を惜しげもなく披露するかのように晒し、その色合いに対してクッキリとしたコントラストを作るように地肌に純白のエプロンを来た同い年の男。こいつの名は、アルパオ・ネパウダ。南アフリカ出身である。親の仕事の関係で五歳の頃に南アフリカ共和国からここ島国ヤポンに来た。つまりこいつは化け物のように

であり、ざけんなってくらいボンボンなのであった。だから金は腐るほど持っているのである。将来安泰であるのだ。
「るせぇなぁ。お前、なんで俺ん家に勝手に入ってるんだよ」
「そんなの、いつものことではございませんか。お母さまがわたしにお願いにあがるのでございます!ファムを起こしてくれんかと」
 そう言いながら、アルパオはくるっとカラダを一回転させる。形の好いケツがぷりっとしていた。
「ったく。余計なことするなよ、ほんと。で、(マム)は?」
「ギャマファリティアです」
「ギャマファリティアー?またかよ。息子をほおっておいて、自分だけギャマってんじゃねぇよ」
「仕方ありませんよ。ポリウス星からのコマーシャルも多いですしね。私のお友達なんか、五段階チューンナップをしてから、デトックス効果を高めるんですって。今では十万人規模ってニュースでも言ってました。」
「はぁ。ウーロンタイプ・バイナリーノイド極まれりってことだな…」
「自分のお母さまをそんな言い方するのは、如何なものかと思われます!」
 俺の言葉にアルパオが酷くぶちぎれたようだった。すぐさま急速に後ろの扉の方を向いて部屋から出始めた。ケツがぷりぷりしていた。
「お、おい」
「朝食!早く食べてくださいね!」
 俺はばたりとドアーが強く閉められた音を聞きながら、少しく失言しちまったかな、と思った。ヤポン独立国は既にクラウディア暦二億八千七百二年である。人類はこの間にこの上ないものすごい成熟をとげていた。成熟をとげていたのであり、半熟ではないのであった。
 しかし、にしても、アルパオは分かってない。サハラシステムが人類を虐殺しようとしたあの日。僕らの先祖様は誓ったはずなんだ。ミリオネアパビリオンが、きっとグーグルハピネスするということを。グーグルハピネスのそれが、きっとアメリカンチルドレンすることを。そうすることで、地軸が少しずれて気候変動がランダムアジェクションをピリピーうながす。うながし尽くすのである。
 そう考えながら、二階の自室から階段を下りて、リビングの扉を開けると、テーブルの上には目玉焼きとトースト、それからメカニカルタブーが置いてあった。後から、即刻メンテだ。その時、外から騒音が聞こえたのでふとリビングの窓の方に眼をやると、アルパオがソニックホースに跨って走り出しているのが見えた。俺をほおって先に登校していったのだ。にしても、限界以上の俊足を強いられる馬の顔は、必死で物凄い形相をしており、相変わらずいかつかった。
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