第10話 里帰り

文字数 418文字

 昔話の中で英雄扱いされる桃太郎だが、彼ほど残虐なやつはどの話にも出てこない。
 一寸法師も金太郎も街のいたずら者を懲らしめるだけ。それを、相手の家にまで押しかけて、仲間を使って大暴れ。完膚なきまでに相手を打ちのめし、挙句にはたんまり賠償の品を持ち去っている。
 今なら間違いなく強盗だ。

 そんな奴だから、産まれた時から、ろくなやつじゃない。山の上にある桃農家の生家では、持て余した彼を母親は実家に押し付ける計画を立てた。手ごろな桃の箱に太郎を閉じ込めると川に流した。
 そうとは知らないおばあさんは大きな桃の箱を持って帰った。さあ食べようとお爺さんが箱をあけると、怒りに狂った桃太郎が飛び出す。
 あまりのことに、お爺さんは失禁。
 「も、漏ったろう。」

 しかし実の孫となもなれば、どんなわがままでも可愛い。こうして、気のいい老人二人暮らしの家を占拠した彼は、成人しても働くことなく家にいた。今でいえば、引きこもりのニート。
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