前世譚8 ❀  これでも読みたまえ

文字数 1,063文字

鳩が帰ってきたのは、夏の終わりのことだった。

おかえり。長旅だったね。

無事に帰ってこれて、良かった

(ただいま。アリエッタからテガミをあずかったよ)
アリエッタから! 本当に!?

手紙へのばした手が急に止まり、かすかにふるえた。

(よむのが、こわいのかい?)
(少し、ね。けれどすべて受け入れる。君が旅に出ている間に決意したんだ)
リカルドは、アリエッタからの手紙を開いた。

リカルド。あなたは生きているのですね。


私は、あなたが亡くなったと聞きました。


それからずっと悪い夢を見ていたような気がします。

僕が亡くなった!? 父は、なんて大嘘を……)

悲しみよりも、怒りが強い。

私はあなたが忘れられず、修道に身を置き、あなたの鎮魂を祈っておりました。

彼女からの手紙には、驚くことばかり書かれていた。

(アリエッタ、ないていたよ)
(僕が、つらい思いをさせてしまったのですね)
(ちがうよ。てがみ、うれしいって)
鳩は、くちばしで最後の行を示した。

次の手紙を楽しみにしています。


アリエッタより

リカルドは手紙を胸に寄せ、静かに泣いた。


唯々、嬉しかったのだ。

君は僕の希望です、アリエッタ

リカルドはすぐに返事をしたため、友に託した。

リカルドとアリエッタの、秘密の文通が始まった。


修道者には許されない「背徳」である。

(アリエッタは、今なにをしているのだろう。返事はまだかな)
図書室で本を選びながら、彼女を想っていると。
なーに、ニヤニヤしてんの、リカルドくん
え!? あっ、ミケーレ、いつからそこに!?

ミケーレは、この修道院でただ1人親しくしてくれる青年だ。

さっきから後ろにいたよ。

鼻の下がのびすぎて、お猿さんになりそうだよ

そんなに顔に出てました?

なにを妄想していたのかは知らないけど、まぁ、これでも読みたまえ。

それじゃ

ミケーレは、リカルドに一冊の本を渡すと、その場を去った。

(ミケーレは、またこんな本をどこから……。ま、まぁ、でも、せっかくですし)

人目につかない席で、ミケーレの渡した本を開く。

読んでるね。

君は好きだろうと思ったよ。

せ、せっかくですから。

こ、この背徳的な本は、一体どこに!?

近いうちに教えてあげるよ。

やっぱり恋物語は良いよねぇ。

ミケーレは約束通り教えてくれた。


「俗世の本」を手に入れられた理由。


彼は修道院の「秘密の抜け道」を知っていたのだ。

修道士ミケーレの登場するお話はこちら


インターポール・コンプレックス シリーズ第4作

 桂冠詩人の恋

お読みいただければ幸いです。




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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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