破壊の咆哮
文字数 1,230文字
「うぁぁぁぁあ……ッ!! なんで!? 何してんだよ!!」
悲情に満ち満ちた様な荒々しい声が、この世界には珍しい怪しく生い茂った森で響き渡る。
一人、膝を湿気った地に付け絶望したような瞳で写し、叫び抱き抱えているのは鼻・口・耳から血を流し、虫の息であろう一匹の蒼い狼。
その美しい毛並みを指と指の間から出しながら、力強く男性は掴む。それはまるで、遠のいているであろう意識を手繰り寄せるかのように。
「キル……なぁ……ッ! キルルッ!! 俺を見ろ!!」
「……」
必死に呼びかける黒い瞳を、今にも閉じてしまいそうな虚ろで弱々しい蒼い瞳が宥めるように優しく見つめる。
「ちょっと!! そんな場所に座っていたら、殺して下さいって言っているものじゃない!! 早く、その子を抱えて隅によりなさいよ。あんたは役立たずなんだから!!」
剣先を月明かりで光らせながら、今の状況を危惧してだろう。一人と一匹の前に出ると背を向けたまま女性は一喝する。
それに続けと、
「だな、後は俺達が何とかすっからよ? 陸『りく』はちっとばかし待ってな」
筋骨隆々とした男性が拳を構え、この状況を楽しむかのように余裕があるような笑を浮かべながら後ろにいる陸と呼ばれる男性に“ウィンク”を投げつけた。
「啓太『けいた』、あんた余裕ぶってんのはイイけど、構え握った拳が震えてるわよ。せめてそれぐらい隠せるようになってから、兄貴ヅラしなさいよ」
「う、うるせぇな!! 千那『ちな』、お前こそいつものキレがねぇだろ? 余裕がねぇのな?」
“ギュッ”と音を鳴らしながら柄を強く握り直し、月明かりで汗を光らせながら、
「私は、貴方とは違うから正直に認めるわよ。……当たり前でしょ? 目の前に居る存在に畏怖しない人なんかいる訳ないわ……ッ!!」
「ま、まぁ確かにそうだな……“双頭の獄龍『メトゥス』”相手。──だが、逃げる訳にも、置いていく訳にもいかねぇ……せめてアイツらが来るまでは何とかしなくちゃな」
そう口走ると、真正面を見つめる。
四つの瞳に写り込むのは、倍はあるであろう黒い巨体。夜の為に黒く見える訳ではなく、ただ単にドス黒い。その為に、四つの光る赤い瞳が薄気味悪さを引き立ててゆく。
足を置いている地は重さでめり込み、鋭い歯を剥き出しながら二つの口で吐き出す息は恐ろしく荒々しい。
「──グルォルァァァァア……ッ!!」
木々も揺れ。竦然しかねない咆哮が響く中、歪に屈折した四本の角を“ガチガチ”と当て擦り鳴らし始める。
「な、なぁ……これは流石にまずくないか?? このアクションって」
「そうね、ラハルが言っていた注意すべき一撃“一方的な破壊『インプルスス』”私の牆壁で持ち堪えられるかどうか……来るわ……!! 備えて」
「くっそ……ッ!!」
「グゥラァルァ……ァア!!」
──次の瞬間、地響きと共に燦然足るものが辺りを包み込んだ。
悲情に満ち満ちた様な荒々しい声が、この世界には珍しい怪しく生い茂った森で響き渡る。
一人、膝を湿気った地に付け絶望したような瞳で写し、叫び抱き抱えているのは鼻・口・耳から血を流し、虫の息であろう一匹の蒼い狼。
その美しい毛並みを指と指の間から出しながら、力強く男性は掴む。それはまるで、遠のいているであろう意識を手繰り寄せるかのように。
「キル……なぁ……ッ! キルルッ!! 俺を見ろ!!」
「……」
必死に呼びかける黒い瞳を、今にも閉じてしまいそうな虚ろで弱々しい蒼い瞳が宥めるように優しく見つめる。
「ちょっと!! そんな場所に座っていたら、殺して下さいって言っているものじゃない!! 早く、その子を抱えて隅によりなさいよ。あんたは役立たずなんだから!!」
剣先を月明かりで光らせながら、今の状況を危惧してだろう。一人と一匹の前に出ると背を向けたまま女性は一喝する。
それに続けと、
「だな、後は俺達が何とかすっからよ? 陸『りく』はちっとばかし待ってな」
筋骨隆々とした男性が拳を構え、この状況を楽しむかのように余裕があるような笑を浮かべながら後ろにいる陸と呼ばれる男性に“ウィンク”を投げつけた。
「啓太『けいた』、あんた余裕ぶってんのはイイけど、構え握った拳が震えてるわよ。せめてそれぐらい隠せるようになってから、兄貴ヅラしなさいよ」
「う、うるせぇな!! 千那『ちな』、お前こそいつものキレがねぇだろ? 余裕がねぇのな?」
“ギュッ”と音を鳴らしながら柄を強く握り直し、月明かりで汗を光らせながら、
「私は、貴方とは違うから正直に認めるわよ。……当たり前でしょ? 目の前に居る存在に畏怖しない人なんかいる訳ないわ……ッ!!」
「ま、まぁ確かにそうだな……“双頭の獄龍『メトゥス』”相手。──だが、逃げる訳にも、置いていく訳にもいかねぇ……せめてアイツらが来るまでは何とかしなくちゃな」
そう口走ると、真正面を見つめる。
四つの瞳に写り込むのは、倍はあるであろう黒い巨体。夜の為に黒く見える訳ではなく、ただ単にドス黒い。その為に、四つの光る赤い瞳が薄気味悪さを引き立ててゆく。
足を置いている地は重さでめり込み、鋭い歯を剥き出しながら二つの口で吐き出す息は恐ろしく荒々しい。
「──グルォルァァァァア……ッ!!」
木々も揺れ。竦然しかねない咆哮が響く中、歪に屈折した四本の角を“ガチガチ”と当て擦り鳴らし始める。
「な、なぁ……これは流石にまずくないか?? このアクションって」
「そうね、ラハルが言っていた注意すべき一撃“一方的な破壊『インプルスス』”私の牆壁で持ち堪えられるかどうか……来るわ……!! 備えて」
「くっそ……ッ!!」
「グゥラァルァ……ァア!!」
──次の瞬間、地響きと共に燦然足るものが辺りを包み込んだ。