(9/13)ジョン・ケージ

文字数 2,943文字

○ジョン・ケージ

性別:男


アメリカから来日した前衛的作曲家。

次なるアイデアのインスピレーションを求めて日本を彷徨い歩いている。

自らの存在を他人に強制させる魔人の在り方に強い感銘を受け、

50歳という高齢にも拘らず妄想を爆発させる。結果として能力を得た。

日常的音楽への好奇心は時として彼を若者より若者らしくさせる。


能力名:啓示微笑(ケージ・スマイル)

ジョン・ケージが対象に微笑みかけることで発動する能力。

対象は彼の言うことに逆らえなくなり、演奏に協力させられる。

その内容は「ピアノの蓋を閉めて歌い続ける

4分33秒間沈黙を保つ」など様々。

観衆を巻き込み、ゲリラ演奏会の規模を拡大させることも出来る。

本人に悪意は無いが、とにかくハタ迷惑な能力である。



戦う動機:アイデアのために魔人と戦うこともある。

殺意というより好奇心で動いている部分が戦闘中の大半だ。





作者:如月真琴

◇ ◇ ◇
時刻は17時を回りました。皆様ごきげんよう。

今日はお日柄も良く、紅茶を嗜むには持って来いの気候でしたわ。

一日を振り返ってみて、どんなことがあった?

それともこれから活動の人も居るのかしら?

魔人どうでしょう? 今日も元気よくスタート致しますわ♪

最近のミルカちゃんはオープニングトークが熟れてきたねー。

相槌担当の蓮華だよ。今日も一日よろしくね♪

そうでしょう、そうでしょう。

私の午後は毎日のオープニングトークを

考えるためにあると言っても過言ではありませんの

もっと時間は有効に使おう?な?
馬鹿にしないでくださる!?

リスナーさんを楽しませるための努力を惜しまないだけですの!

…………コホン。

失礼、取り乱しましたわ。

それでは本日のゲストに登場していただきますわ。

アメリカからやってきた前衛的作曲家、ジョン・ケージさんです!

コンニチワ。アメリカ人のジョン・ケージと申しマス。

今日は、どうもよろしくお願いシマス。

こちらこそ、お会い出来て光栄です♪

俺、ケージ先生の大ファンなんですよ!

そういえば、蓮華は音楽も好きだったわね。

ジョン・ケージ先生は「沈黙」や「日常性」をテーマにした

風変わりな楽曲を多く手がけ、大ヒットを記録した天才作曲家よ。

いえいえ、とてもそんな……。

僕はただ、あるがままを音楽にシたい、それだけデス。

最近リリースされた『18の春を迎えた陽気な未亡人』、

とても良かったです!ケージ先生の世界観にぐいぐい引き込まれました!

ははは、あリがとう。

この楽曲のレコーディングには僕以外の協力者が不可欠デシた。

「ピアノの椅子に座ってもらい、

 蓋を閉めたまま自由に歌ってもらう」

僕が提示した楽譜にはそうとしか書いていまセん。

それだけで完璧な音を作り出してくれる女性が必要だったのデス。

何言ってるんだろうこの人……。
いやいや、ケージ先生の発想と実行力には尊敬しますよ!

そんなケージ先生も実は魔人だったとか。

一体どんな能力なんですか?

魔人だった……というより、つい最近魔人になったのデスよ。

どんな能力なのかは僕にもはっきり分かってイないのだが、

僕が50歳にして魔人能力に目覚めた話をシテもいいかい?

ご、50歳ですって……!?

普通魔人能力が発症するのは20歳までのはず。

現実を知るにつれて魔人になる可能性は減っていくもの。

一体どんな心変わりがあったのかしら……?

ぜひ聞かせてください!
HAHA、君のような麗しい女性に興味を持ってもらえて

僕はとてもうれしいヨ

あ、一応彼は男です。ケージ先生。
Oh...失礼。

それじゃあ話をはじめルよ。

僕が新たなアイデアを求めて日本を彷徨っていたある日。

ステーションの前に人だかりが出来てイた。それが気になったんだ。

路上ライブでもあったのかな? それとも事件発生?
人だかりの中心には、一人の青年だけが立ってイた。

彼は色とりどりの軽いペットボトルを持っていたよ。

中には綺麗なインクが入っていたんだ。

全て空のペットボトルだっタ。

けれど彼は全てのインクを一つのペットボトルに集めると

その場に虹のアーチをかけて見せた。誰も目が離せなかっタ。

不可思議な話ねー。

もしかしてその人、魔人能力者だったのかしら?

あぁ、その通りサ。

人だかりは彼の作った作品に対して淀みない拍手を送った。

けれど、聴衆の誰かが「魔人だ」とつぶやいたのデス――。

次の瞬間、とある女性が彼に小石を投げつけた。

それを合図に、彼は投石の嵐に耐えなければならなくなったのデス。

…………。
彼は純粋な気持ちで観衆を楽しませようとした。

その気持ちは、歪んで伝わってしまったのね。

彼が魔人能力者だったから……。

彼は逃げるようにその場を去っていきマシた。

けれど、最後まで僕は彼が間違っているとは思いませんデシたよ。

僕も作品を発表するときは如何なる非難も覚悟シています。

多くの石を投げられても、作品を見てもらえただけで僕の勝ちデス。

さっすがケージ先生!そのロックな生き方尊敬します!
はいはい、石だけにロック――ね。
ちょっと言ってる意味が分からないな。
あなたが振ったネタでしょう!?
…………話を続けてもいいかな?

僕はその日、「魔人」というものをネットで調べた。

そして、彼らが日常的に虐げられていることや、

アーティスト気質であることを知ったのデス。

失礼ですが、ケージ先生は50年生きてきて魔人をご存知なかったのですか?
あぁ。つい最近までアメリカに篭っていたからね。

どうやら魔人は日本でのみメジャーとなっている社会現象のようだ。

確かに、外国の魔人なんて聞いたことがありませんわ。
僕は魔人というものが気に入った。

心の底から魔人になりたいと思ったサ。

久しぶりにアイデアの濁流がやってきて、

子供の頃に戻ったような気がシた。

――程なくして魔人能力を手に入れたのデス。

きっと、先生はその時とても輝いていたんですね。
とても貴重な体験談だわ。こんなパターンもあるのね……。
僕は自分の音楽に理解を示してくれる人が欲しかった。

だから、きっと能力もそういったものデしょう。

――あぁ、ここで全てを吐き出したら、

無性に音楽を演奏シたくなってきた。

わぁ、ケージ先生の生演奏が間近で見れるチャンス!
――お言葉ですが、ケージ先生。

ここには楽器がございません。

それでも可能な楽曲でしたら、喜んで協力させてもらいますわ

あぁ、問題ないよ。

でもこの楽曲は三人の息が合わなければ完成シない。

それでも協力してくれるかい?

もちろんです!

ミルカちゃんは?

構いません。どんなことだってやりますわ。

でも、その前に――。

音楽を構成する最も大きな要素は、

その場の雰囲気だと考えますわ

これは――かなり広い会場だね!

今からここで演奏するのかー。盛り上がってきた!

Oh...素晴らしい!Ms.ミルカ、あなたにとても感謝シます。


新しいアイデアがムクムクと湧いてくる……

よし。今からここは、我々のコンサートホールだ!

◇ ◇ ◇
本日の演奏会、皆様楽しんでいただけたでしょうか。

魔人どうでしょう? そろそろお別れの時間となってしまいました。

いや~、満足満足。

憧れのケージ先生と一緒に演奏が出来るなんて、最高の日だよ!

今日の蓮華はいつにも増して笑顔がまぶしかったわね
言っておくけど、ケージ先生はあげないよ

何女の子に目覚めちゃってるのよ!!気持ち悪い!!

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登場人物紹介

MC1:ミルカ・シュガーポット


有名アナウンサーを両親に持つ新人美少女ナビゲーター。

S区中央大学放送学部卒業後、

5年という長い下積み期間を経てエフエムダンゲロスに入社する。

趣味は休日に紅茶を飲むことと読書すること。

MC2:篠原 蓮華(しのばら れんげ)


大学のミスコンで優勝した実績を持つ美人ナビゲーター。

局内のムードメーカーとも言える明るく優しい性格も魅力的。

趣味はアニメ鑑賞とフィギュア集め。

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